退位の意向にじんだお気持ち

上皇さまは、平成28年(2016)の8月8日、10分余りに及ぶビデオメッセージで、退位の意向が強くにじんだお気持ちを表明されました。

この中で、上皇さまは、はじめに天皇の立場上、今の皇室制度に具体的に触れることは控えるとしたうえで、「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、個人として、これまでに考えて来たことを話したい」と述べられました。

大阪 道頓堀の大型モニター

そして、高齢による体力の低下を感じるようになったと話し、「次第に進む身体(しんたい)の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と胸の内を語られました。

続いて、天皇としてのこれまでの歩みを「天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」と振り返られました。

このあと、上皇さまは、天皇の高齢化に伴う対応について言及し、公務を限りなく減らしていくことには無理があるという考えを示されました。また、天皇の行為を代行する摂政(せっしょう)を置いた場合、天皇が求められる務めを十分に果たせぬまま、生涯、天皇であり続けることになるとして否定的な考えをあらわされました。

東京 新宿で街頭モニターを見る人たち

上皇さまが表明されたお気持ちは、退位の意向が強くにじむもので、最後に、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じる」として国民に理解を求められました。

宮内庁は、お気持ち表明の直後に、上皇さまのおことばについて「憲法上の立場を踏まえ個人としての心情を述べられた」と説明しました。その後、「内容については、天皇陛下の憲法上の立場を踏まえたご発言とする必要があるので、内閣官房と協議をした」と説明し、お気持ちの表明という天皇陛下の行為については、「公的な行為という位置づけで、最終的には内閣が責任を持つ性格のもの」という認識を示しています。

また、上皇さまも、平成28年(2016)12月の記者会見で、「天皇としての自らの歩みを振り返り、この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました」と述べられています。

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