退位のお気持ち表明後のおことば

平成28(2016)年8月に退位の意向が強くにじむお気持ちを表明して以来、上皇さまは、象徴としての務めや自らの歩みについてたびたび述べられてきました。

お気持ちを表明したビデオメッセージでは、「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」と述べ、象徴の務めを果たすうえで、一貫して大切にしてきた考えをあらわされました。

そして、天皇として最後となった平成30年(2018)12月の誕生日の記者会見では、こうした考えのもとに実践してきた務めを1つずつ振り返られました。このうち、先の大戦で激しい地上戦が行われた沖縄については、皇太子時代から上皇后さまとともに11回の訪問を重ねたことを振り返ったうえで、「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません」と話されました。

85歳の誕生日に先立ち記者会見される 平成30年(2018)12月20日

また、「慰霊の旅」に臨むなど、一貫して戦争の歴史に向き合われてきたことについては、「先の大戦で多くの人命が失われ、また、我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました。平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」と時折、声を震わせながら述べられました。

そして、ひときわ声を震わせながら、「天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の一人であった皇后が、私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民の双方への献身を、真心を持って果たしてきたことを、心から労いたく思います」と述べられました。記者会見は上皇さまの思いがこれまでにないほど強くあらわれたものとなりました。

在位30年記念式典であいさつされる

上皇さまは、平成31年(2019)2月24日に開かれた在位30年を記念する政府主催の式典で「私がこれまで果たすべき務めを果たしてこられたのは、その統合の象徴であることに、誇りと喜びを持つことのできるこの国の人々の存在と、過去から今に至る長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした」と述べ、あらためて国民への感謝の思いをあらわされました。

そして「憲法で定められた象徴としての天皇像を模索する道は果てしなく遠く、これから先、私を継いでいく人たちが、次の時代、更に次の時代と象徴のあるべき姿を求め、先立つこの時代の象徴像を補い続けていってくれることを願っています」と述べられました。

  • 皇位継承者に託される思い

  • 退位後のお立場

  • 退位のお気持ち表明後のご活動

  • 退位の意向にじんだお気持ち