平成時代に願われたこと

退位された上皇さまは世界の平和や国民の幸せを願う気持ちを繰り返しあらわされてきました。

平和への思い

一貫して戦争の歴史と向き合われてきた上皇さま。天皇に即位されて以来、毎年8月15日の終戦の日に全国戦没者追悼式に出席し、戦争が再び繰り返されないことを願うおことばを述べられてきました。平成18年(2006)、73歳の誕生日を前にした記者会見では戦後生まれの人が年々多くなってくる中で、戦没者を追悼することは世界や日本の過去の歴史を顧みる一つの機会となるとして、「過去のような戦争の惨禍が二度と起こらないよう、戦争や戦没者のことが、戦争を直接知らない世代の人々に正しく伝えられていくことを心から願っています」と話されました。

皇居宮殿 石橋の間 平成18年(2006)12月20日

そして、天皇として最後となる平成30年(2018)の誕生日を前にした記者会見では、「先の大戦で多くの人命が失われ、また、我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました。平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」と述べられました。

皇居宮殿 平成30年(2018)12月20日

上皇さまは、先の大戦で激しい地上戦が行われた沖縄に心を寄せ続け、上皇后さまとともに11回の訪問を重ねられました。平成24年の誕生日を前にした記者会見では「地上戦であれだけ大勢の人々が亡くなったことはほかの地域ではないわけです。そのことなども、だんだん時がたつと忘れられていくということが心配されます」と述べ、沖縄の人々が払った犠牲を日本人全体で分かち合うことが大切だという考えを示されました。

弱い立場の人々への思い

上皇さまは、困難な状況にある被災者や障害者など社会の中で弱い立場にある人々への思いもあらわされてきました。

東日本大震災から5年の追悼式 平成28年(2016)3月11日

東日本大震災の発生から5年となった平成28年(2016)の追悼式では、「被災地で、また避難先で、今日(こんにち)もなお多くの人が苦難の生活を続けています。困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく、1日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います」と述べられました。

また平成30年(2018)の誕生日を前にした記者会見では、平成に起きた数多くの災害を挙げ、「多くの人命が失われ、数知れぬ人々が被害を受けたことに言葉に尽くせぬ悲しみを覚えます。ただ、その中で、人々の間にボランティア活動を始め様々な助け合いの気持ちが育まれ、防災に対する意識と対応が高まってきたことには勇気付けられます」と話されました。

障害者スポーツへの思い

ターゲットバードゴルフを視察される 平成20年(2008)12月2日

そして皇太子時代から関心を持ち続けた障害者スポーツについて、「障害者自身がスポーツを楽しみ、さらに、それを見る人も楽しむスポーツとなることを私どもは願ってきました。パラリンピックを始め、国内で毎年行われる全国障害者スポーツ大会を、皆が楽しんでいることを感慨深く思います」と述べられました。

  • 皇位継承者に託される思い

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