水問題への取り組み

大学時代、「水上交通」をテーマに水にまつわる研究を始められた天皇陛下。水をめぐる問題に長年取り組む中で、ご自身の視野や活動の幅を広げられてきました。

大きなきっかけとなったのが平成15年(2003)に京都で開かれた「世界水フォーラム」でした。大会の名誉総裁を務めた天皇陛下は「水上交通」について講演を行う一方、世界各国の専門家と交流する中で、水をめぐる問題が環境や衛生など多方面にわたることに驚き、問題への理解を深めて関わり続けたいと考えられるようになりました。

世界水フォーラム 京都の水運テーマに講演される 平成15年(2003)3月

根底にあったのは、社会で弱い立場にある人たちを思う気持ちでした。かつて、ネパールで目の当たりにした、水くみ場に列をなす女性や子どもたちの姿が強く印象に残られていた天皇陛下。「開発途上国では多くの女性が水を得るための家事労働から解放されずに地位向上を阻まれ、子どもが水くみに時間を取られて学校へ行けない現実がある」などと、水の問題が社会に与える影響を語られるようになりました。

ネパールの水くみ場 天皇陛下が撮影された写真 昭和62年(1987)

その後も国内外で水に関する施設の視察や研究を重ね、平成19年に国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任すると、水の問題は温暖化などとも関わる地球規模の課題だという認識を深め、「国際社会が一体となって取り組んでいかなければならない」と述べられるようになりました。

そうした中、平成23年に東日本大震災が発生し津波で多くの犠牲者が出ます。天皇陛下は日本の水災害の教訓を国際社会に伝えていくことにも力を入れられていきます。

陸に押し寄せ家屋をのみ込む大津波 平成23年(2011)3月11日 宮城 名取

平成25年には、皇族として初めて国連本部で講演を行い、歴史研究者としての視点から過去の災害に学び未来への備えとすることの重要性を訴えられました。

「水上交通」に始まり、「社会的弱者」や「地球環境」、そして「災害」へと視野を広げてきた天皇陛下は、平成29年(2017)の記者会見で、「国民の幸せや、世界各地の人々の生活向上を願っていくうえでの、一つの軸として、『水』問題への取組を大切にしていければと思っています」と話されました。

その後も国内外での視察や講演に臨み、平成30年(2018)3月には、ブラジルで開かれた「世界水フォーラム」で、あらためて国際社会の結束を呼びかけられました。

ブラジリア 平成30年(2018)3月19日

天皇陛下は平成31年(2019)2月の誕生日にあたっての記者会見で「『水』問題への取組で得られた知見も、これからの務めの中で国民生活の安定と発展を願い、また、防災・減災の重要性を考えていくうえで大切にいかしていきたいと思います」と話されました。

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