饗宴の儀

天皇陛下が皇后さまとともに祝宴に臨んで即位を披露し祝福を受けられる儀式、「饗宴(きょうえん)の儀」が22日、皇居 宮殿で行われました。

「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀」のあと、いったんお住まいの赤坂御所に戻っていた天皇皇后両陛下は「饗宴の儀」に臨むため、午後7時前に再びお住まいを出て、半蔵門から皇居に入られました。

天皇陛下はえんび服を着用し、「大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)」という最高位の勲章などを身につけられています。

また皇后さまはローブデコルテというロングドレスを着用し、上皇后さまから受け継いだティアラや勲章を身につけられています。

そして午後7時20分すぎ、宮殿の「竹の間」に入られ、「饗宴の儀」が始まりました。

「饗宴の儀」は、国事行為として行われる「即位の礼」の儀式の1つで、合わせて4回行われることになっています。

1回目の22日は255人が参列、国内の参列者は7人、外国の参列者は164の国や機関などの代表者ら248人でした。

「竹の間」では、両陛下がおよそ1時間にわたって出席者から順番にあいさつを受けられました。

あいさつを終えた出席者は「春秋(しゅんじゅう)の間」に移動し、食前の飲み物を手に秋篠宮ご夫妻など皇族方と和やかな雰囲気で歓談を行いました。

ここでは上皇さまの即位を祝う前回の「饗宴の儀」でも演じられた「太平楽(たいへいらく)」という「舞楽(ぶがく)」の演目が宮内庁「楽部(がくぶ)」の職員によって披露されました。

また「即位礼正殿の儀」が行われた「松の間」では儀式で使われた「高御座(たかみくら)」と「御帳台(みちょうだい)」を出席者たちが見学する機会も設けられました。出席者たちは説明役の外務省の職員の話に耳を傾け、興味深そうにのぞき込んだり、「高御座」の前で記念撮影したりしていました。

このあと出席者は皇族方とともに食事会場の「豊明殿(ほうめいでん)」に移り、午後9時すぎ、両陛下が部屋の奥にあるメインテーブルの中央に着席されて食事が始まりました。

食事は上皇さまの即位を祝った前回をほぼ踏襲した和食で、まつたけやくりなど秋の味覚も取り入れた合わせて9品が出されました。

食事のあとは「春秋の間」に場所を移し、食後酒やコーヒーなどが出される中、和やかに歓談が行われました。

このあと両陛下は出席者との別れのあいさつを交わされ、「饗宴の儀」は午後11時20分ごろ終了しました。

両陛下は午後11時44分ごろ、車で皇居を出発してお住まいの赤坂御所に戻り、22日の全ての日程を終えられました。

各国の元首や王族 到着の様子

「饗宴の儀」が行われている皇居 宮殿の南車寄には午後7時20分ごろから、えんび服やロングドレス、それに色鮮やかな民族衣装などに身を包んだ各国の元首や王族らが相次いで到着しました。

このうち、イギリスのチャールズ皇太子はえんび服に勲章を身につけていて車を降りたあとゆったりと歩いて宮殿に入っていきました。

スペインのフェリペ国王は、ピンク色のロングドレスを着てティアラを身につけたレティシア王妃とともに報道陣の前で笑顔で立ち止まったあと宮殿に入っていきました。

また、アメリカのチャオ運輸長官は紫色のロングドレス姿で、報道陣の方を向いて笑顔でうなずきながら宮殿に入っていきました。

「饗宴の儀」の席順は

食事会場となっている宮殿の「豊明殿」には、10のテーブルが配置され、およそ370の席が用意されます。

各国の元首らが座るメインテーブルは一番奥に設けられ、中央に天皇皇后両陛下が並んで座られます。

メインテーブルは56席ありますが、ほかのテーブルの出席者からも両陛下の姿が見やすいようお二人の正面には座席を設けないことになっています。

外国からの賓客の席順は、在位期間や在任期間の長さなどを考慮して決められていて、天皇陛下の右隣にはブルネイのボルキア国王が、皇后さまの左隣にはスウェーデンのグスタフ国王が座ります。

ほかの9つのテーブルには秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方が、安倍総理大臣など三権の長やその配偶者とともに座り、ホスト役として外国からの出席者をもてなされます。

食事メニューは前回をほぼ踏襲

22日夜行われた1回目の「饗宴の儀」の食事は上皇さまの即位を祝った前回をほぼ踏襲する形で和食が選ばれました。供されるのは9品です。

▽「前菜」はかすごたいの姿焼きや蒸したあわび、それにゆり根やくりなどが扇の形をした木の器に盛りつけられます。
▽「酢の物」はスモークサーモン、
▽「焼物」はアスパラガスの牛肉巻き、
▽「温物」はふかひれやまいたけが入った茶わん蒸し、
▽「揚物」はかに、きす、若鶏の三色揚げ
▽「加薬飯」はたけのこやしいたけが入ったたいのそぼろごはん、
▽「吸物」には伊勢えびのくず打ちやまつたけが入っています。
▽「果物」としてイチゴやマスクメロン、パパイヤ、
▽「菓子」として和菓子も出されます。

世界各国からさまざまな文化的な背景を持つ賓客が訪れることに配慮して、このほかにイスラム教徒向けに戒律に沿って処理された食材を使ったメニューや、菜食主義の人向けに肉や魚に代えて高野豆腐や湯葉などを使ったメニューが用意されています。

担当したホテル「日本料理の伝統を感じてほしい」

「饗宴の儀」で供される食事の調理を担当した大手ホテルグループでは、何度も試作を重ねてきたということです。

日本料理の伝統や盛りつけの美しさを楽しんでもらえるよう、食材の大きさをミリ単位でそろえるなどの工夫が凝らされているということです。

ホテルの高橋慶太総料理長は「このような歴史的な瞬間に関われたことは本当に名誉なことだと思っています。さまざまな方に満足いただけるよう味付けに創意工夫を重ねたほか、ひと目見てお祝いの料理だとわかる色鮮やかな盛りつけになっています。世界各国の賓客に日本料理の伝統を感じていただきたい」と話していました。

記念品は「ボンボニエール」

1回目の「饗宴の儀」に出席する外国の元首や王族などには天皇皇后両陛下から記念品として純銀製の「ボンボニエール」が贈られます。

「ボンボニエール」は、金平糖などの菓子を入れるふた付きの容器で、皇室では明治時代以降、皇族の結婚式といった慶事の祝宴などの出席者に贈る習わしがあります。

上皇さまの即位を祝う前回の「饗宴の儀」でもボンボニエールが贈られました。

宮内庁によりますと、今回の「ボンボニエール」は丸みを帯びた形で、直径6センチで高さは3センチ余り。表面には前回と同じように菊の御紋と「鳳凰(ほうおう)」の模様があしらわれています。中には色とりどりの金平糖が入っているということです。

前回のものと対になるようなデザインに

「ボンボニエール」の製作を担当した東京 銀座の会社では宮内庁から示されたデザインの案をもとに何度もやりとりをして最終的なデザインを決めたということです。

表面には前回の「即位の礼」で作られたものと同じく鳳凰(ほうおう)の模様があしらわれていますが、前回と今回の2つのボンボニエールを並べると対になるようにデザインされているということです。

製作にあたっては模様を型押しする際に裏面にできた凹凸を1つ1つ手作業で削ったり、わずかでも傷が付いたものははじいたりと細かな点にも気を配ったということです。

製作を担当した宮本商行の上野浩司さんは「歴史的な仕事をさせていただきました。ボンボニエールは小さな芸術品です。箱をあけた時に日本の技術力を感じて頂きたい」と話していました。

  • 大嘗祭

  • 即位の儀式の歴史

  • 即位の礼をめぐる裁判

  • 黄櫨染御袍とは