2022年10月3日
中国共産党大会 中国

習近平氏の続投が決まる? そもそも中国共産党大会って何?

中国では10月、5年に1度の重要会議「共産党大会」が開かれます。
そもそも共産党大会とは何なのか?なぜ世界が注目しているのか?
わかりやすく、解説します。

中国共産党大会って何?

前回の中国共産党大会(2017年)

中国共産党における最も重要な会議です。正式名称は「中国共産党全国代表大会」。
1921年に第1回の党大会が開かれ、1980年代以降は5年に1度、秋に開催されています。
政策方針や幹部人事など、党の重要事項を決定します。

名前の通り「党」のイベントではありますが、中国は中国共産党の一党支配が続く国です。
つまり、党大会での決定は、すなわち「国」そのものの方向性を決めるものになるわけです。
それが、共産党大会が中国の将来を決める重要な会議だと、国際社会から注目を集める理由です。

いつ、どこで、誰が集まるの?

ことしは10月16日から始まります。過去の事例では、会期は1週間ほど。
中国の首都・北京中心部の人民大会堂で行われます。

人民大会堂

中国共産党は創立から100年あまりたっていて、ことしの党大会は20回目になります。

共産党大会に出席するのは、党員の代表およそ2300人。ずいぶん多くの人が集まる会議だと感じる人もいるかもしれません。
でも、世界最大の政党でもある中国共産党の党員数は、2021年末の時点でおよそ9670万人。1億人近くいます。
党大会に出席できる党員はごく一部に限られているのです。

共産党が国よりも偉いの?

中国の憲法では「共産党の“領導”」のもとで国家が運営されることが記されています。
中国語の“領導”という言葉は、日本語では指導するという意味ですが、指揮・命令するニュアンスが加わるといいます。
つまり、中国共産党が中国という国を指揮する、そういう関係にあるわけです。

当然、党にも、中国政府にもリーダーがいます。
党のトップは「総書記」。国のトップは「国家主席」という肩書きです。
どちらも耳にしたことがある人も多いと思いますが、現在、習近平氏は「総書記」と「国家主席」を兼ねています。

一般的にニュースでは「国家主席」の肩書きを使っていることが多いですが、中国内政においては党の「総書記」の立場の方が、影響力があるポストです。

なお、習氏は、「中央軍事委員会主席」という軍のトップとしての立場もあり、共産党、軍、国家の3つの組織のトップについています。

共産党大会では具体的に何をするの?

主に、3つあります。

①政策の大方針を定めること。

大会の初日には、党のトップの総書記(習近平氏)が「政治報告」というものを行うのが慣例です。
壇上に立ち、演説のように文書を読みあげます。

「政治報告」では、これまでの5年間の功績を振り返ったうえで、今後の政治や経済といったさまざまな分野の政策方針が打ち出されます。

前回5年前の政治報告を習氏が読み上げるのにかかった時間は、実に3時間半。長文、長大な報告ですが、政治報告には中国の将来の方向性がうかがえるヒントが多く盛り込まれます。

②最高指導部選出へとつながる人事。

大会期間中には、党のトップおよそ200人の「中央委員」とそれに次ぐおよそ160人の「中央候補委員」と呼ばれる人たちが選ばれます。
人口14億を率いる幹部です。これまでの慣例だと、党大会が閉幕した翌日にこの中央委員が集まり、党のトップを始めとした新たな最高指導部のメンバーを選出します。

トップ25人が「政治局委員」、トップ7人が「政治局常務委員」というのが現在の体制です。この7人は中国語で“常委”と呼ばれ、習近平総書記をはじめとする、最高指導部のメンバーのことです。

2017年の中国共産党新指導部発表

党大会の閉幕の翌日、選ばれた政治局常務委員が新たな指導部として、内外の記者の前にずらりと姿を表すのが慣例になっています。 

③“党の掟”とも言える「党規約」の改正。

党規約は共産党の最高規則です。規則とは言うものの、国を率いる上で大切にすべき「指導思想」といったものが盛り込まれています。
毛沢東など過去の指導者の名前に加え、5年前の党大会では、習近平氏の名前のついた指導思想も加わっています。

党規約にどのような表現が盛り込まれるかは、時の指導者の権力や求心力を推し量るバロメーターにもなっています。

今回の党大会で何が注目されているの?

中央軍事委員会、北京駐屯部隊元幹部の慰問公演 2020年

最大の注目点は、習近平氏がトップを続投するか、続投するのであればどのようなメンバーを率いるのかです。

党トップの習近平氏は、従来の慣例を破って“異例”の3期目に突入すると内外で受け止められています。
習近平氏は、2012年に党トップの総書記となりました。これまで2期10年を務め、現在は69歳です。

正式な決まりではありませんが、中国共産党の最高指導部は「68歳以上であれば引退する」というのが慣例でした。
67歳以下は続投、68歳以上は引退という意味で中国語では「七上八下」と表現されます。

▼共産党、▼軍、▼国家の3つの長のうち、「国家主席」だけが明確な任期があったのですが、習近平指導部のもとでこの任期もすでに撤廃されています。
習氏が党のトップとして異例の3期目に入り、権力の集中をさらに進めるのかが注目されています。

このほか、メンバーのうち誰が引退するのか、習氏に近い人物や後継者候補となりえる人物が最高指導部入りするかどうかも、注目です。

人事以外では何が焦点なの?

①習近平氏の権威を高めるような「党規約の改正」が行われるかどうか。

中国共産党は今回の党大会で党規約を改正し「重大な戦略思想」を盛り込むとしています。
5年前の党大会では、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」という習氏の名前のついた指導思想が盛り込まれました。この思想の名称を、習氏の権威を一段と強化するため、簡潔に「習近平思想」にするという見方を伝えるメディアもあります。

名称を短くするだけではありますが、実は党規約の指導思想に関して、個人の名前の直後に「思想」がついているのは毛沢東だけです。今回、「習近平思想」という言葉が誕生すれば、習氏の権威が毛沢東に並ぶことになる、と受け止められています。

②「党主席」制度が復活するかどうか。

上述した通り、中国には、党のトップとして「総書記」、国のトップとして「国家主席」のポストがあります。ただ、「党主席」というポストは現在ありません。このポストは、かつて毛沢東が務めていたポストです。1982年に廃止され、その後、中国は「総書記」をトップとする集団指導体制をとってきました。

「党主席」のポストは、文化大革命の混乱などを教訓に、1人に権限が集中しすぎるのを防ぐために、廃止されたと指摘されています。
党主席制度が復活し、習氏が毛沢東のかつての肩書きを名乗ることになるのか、集団指導体制に変化が起きるのかにも注目です。

③台湾をめぐる政策や表現は?

台湾情勢をめぐっては、このところ、アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が大規模な軍事演習を行うなど、緊張が高まっています。

習近平指導部は、「平和統一」を目指す方針を堅持するとしながらも、武力行使は放棄しないとしています。
一方、アメリカのバイデン大統領は、中国が武力で台湾統一をはかろうとした場合、アメリカ軍が台湾を防衛する可能性に言及しています。

中国が台湾に対して今後どのような態度で臨むのかは、国際的な関心事です。初日に行われる政治報告などで、どのような表現になるのかを見る必要がありそうです。

このほか、中国は課題が山積しています。

政治報告のなかで、
▼対立を深めるアメリカとの関係、
▼感染拡大を徹底的に抑え込む新型コロナウイルス対策、
▼新型コロナの流行拡大を受けて減速する経済などをめぐり、どのような方針が打ち出されるのかも焦点です。     

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