2022年9月7日
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各国の国葬ってどうなっているの? 気になって調べてみました

9月27日に東京の日本武道館で行われる、安倍元総理大臣の「国葬」。

岸田総理大臣は、8月31日の記者会見で「その時の政府が総合的に判断し、決定するのがあるべき姿だ」と述べました。賛否が分かれる今回の「国葬」。
では、各国の「国葬」はどうなっているのか。
アメリカ・イギリス・オーストラリア・韓国・中国・南アフリカの6か国について調べてみました。

各国ではどう規定されているの?

「国家葬」として明確に法律で規定されているのは韓国です。

南アフリカは「マニュアル」で、アメリカやイギリス、オーストラリアは「慣習」で、それぞれ「国葬」の対象や形態が決まっています。

一方、中国は「国葬」自体の法律はありませんが、国家元首などが死去した場合は、「半旗を掲げて追悼する」ことが法律で定められています。

アメリカ国旗 アメリカ:慣習で実施、大統領が布告

「国葬」を規定する法律はありませんが、慣習として行われています。

まず現職の大統領が「国葬」を行う布告を出して、軍がとりしきることになっています。対象となるのは現職の大統領や経験者、次期大統領、それに大統領が指名する人たちです。

アメリカ軍によりますと、2018年に第41代のブッシュ元大統領、2006年から2007年にかけて第38代のフォード元大統領、2004年に第40代のレーガン元大統領の葬儀を含む一連の国葬行事などが行われています。

「国葬」は首都ワシントンで大々的に行われるのが慣例となっています。

ひつぎが連邦議会議事堂に安置され、国民に弔問の機会が設けられるほか、最近では「ワシントン大聖堂」で葬儀が執り行われています。

1963年にテキサス州ダラスで狙撃され、死亡したケネディ元大統領の一連の「国葬」は、事件翌日から3日間にわたって首都ワシントンや近郊で行われました。

ケネディ元大統領の国葬(1963年)

ケネディ元大統領に関係する資料を集めた図書館によりますと、およそ25万人の市民が追悼のために訪れたということです。

日本からは当時の池田勇人総理大臣のほか、イギリスのエリザベス女王の夫のフィリップ殿下など、92の国から首脳などが参列しました。

一方、「国葬」の規模や行う場所などは遺族の希望が優先されるとしています。

例えば、いわゆる「ウォーターゲート事件」を受けて、アメリカの大統領として初めて任期中に辞職したニクソン元大統領は、家族の意向で地元カリフォルニア州で葬儀が行われています。

イギリス国旗 イギリス:「国葬」と「儀礼葬」の2種類

「国葬」は、王室や特別な功労者を対象に行われ、議会の承認が必要です。

それとは別に、女王の同意だけが要件とされている、「儀礼葬」と呼ばれる国葬に準じる葬儀があります。

「国葬」は歴代の国王や女王のほか、万有引力の法則を発見した科学者のニュートンや、「トラファルガーの海戦」でフランスのナポレオンの艦隊をやぶったネルソン提督が死去した際にも行われました。最後に「国葬」が行われたのは、1965年のチャーチル元首相の時でした。

チャーチル元首相の死去から50年を迎え 再現された国葬の様子(2015年)

一方、近年は比較的規模を抑えた「儀礼葬」が増えています。 ダイアナ元皇太子妃やサッチャー元首相、それに王室でもエリザベス女王の夫で、去年亡くなったフィリップ殿下は「儀礼葬」でした。

オーストラリア国旗 オーストラリア:幅広い分野の功績が対象

対象となるのは、連邦総督や首相の経験者、それに長年、連邦議会議員を務めた人物などです。さらに文化芸術やスポーツの分野で功績を残した著名人も国葬の対象となっています。

最近では葬儀の様子がインターネットで生配信されるなど、国民が著名人の功績を振り返る機会として定着しています。

ことし3月に連邦政府と州政府の共催で開かれたクリケットの元選手の「国葬」では、国内最大のスポーツ競技場を会場に、関係者のスピーチや有名ミュージシャンによる生演奏が2時間以上にわたって続き、にぎやかな雰囲気で送り出しました。

クリケット元選手の国葬(2022年3月・オーストラリア メルボルン)

また、州政府の権限が強いオーストラリアでは、州政府が主催して地元にゆかりのある著名人を対象に葬儀を開くことも一般的です。

最大都市シドニーがあるニューサウスウェールズ州は去年1年間で、政治家やファッションデザイナーなど、あわせて6人の葬儀を執り行いました。

最近では8月にアメリカで亡くなったオーストラリア育ちの歌手、オリビア・ニュートンジョンさんについて、幼少期を過ごし、自身でがん研究センターも設立した南東部ビクトリア州で、地元州政府が葬儀を行う方針を発表しています。

韓国国旗 韓国:国家葬に統一 大統領が判断

ノ・テウ(盧泰愚)元大統領の「国家葬」(2021年・ソウル)

1967年に「国葬・国民葬に関する法律」が制定され、「国葬」の費用は国が全額負担し、「国民葬」は一部を負担するなどと定められました。

大統領経験者では、▽パク・チョンヒ(朴正煕)氏とキム・デジュン(金大中)氏が死去した際には「国葬」が、▽チェ・ギュハ(崔圭夏)氏とノ・ムヒョン(盧武鉉)氏は「国民葬」が、それぞれ執り行われました。

ただ、法律では「国葬」にするか「国民葬」にするかの具体的な基準が示されておらず、あいまいな部分が多いという指摘があり、2011年には、これらを「国家葬」に統合し、費用は原則、国が全額負担することを盛り込んだ法律が制定されました。

「国家葬」を行うかどうかは、現職の大統領が判断することになっていて、この法律をもとに、元大統領のキム・ヨンサム(金泳三)氏とノ・テウ(盧泰愚)氏の葬儀は、「国家葬」として行われました。

中国国旗 中国:法規定なし 過去の指導者には“追悼大会”

「国葬」について法律上、明確な規定はありません。

ただ、国家主席などが死去した場合は、「国旗法」という法律で「半旗を掲げて追悼する」ことが定められていて、半旗を掲げる日時や場所は、中央政府にあたる国務院などが決めるとされています。

2019年7月に李鵬元首相が死去した際は、北京の天安門広場などに半旗が掲げられ、習近平国家主席らいまの最高指導部のメンバーが、そろって告別式に出席したことが国営メディアで伝えられています。

李鵬元首相の死去後 半旗が掲げられた天安門広場(北京・2019年)

また、「建国の父」とされる毛沢東や改革開放を進めたとう小平が死去した際には、その死を悼むため大規模な「追悼大会」が行われ、共産党の幹部らをはじめ多くの国民が参列しました。

南アフリカ国旗 南アフリカ:マニュアルで細かく規定

政府が、「国葬」をめぐるマニュアルを定め、該当者や葬儀の手順などが細かく決まっています。

それによりますと、「国葬」の該当者は2つのカテゴリーに分けられ、▽カテゴリー1には現職の大統領、次期大統領、それに元大統領が、▽カテゴリー2には現職の副大統領などが該当し、それぞれで半旗を掲げる政府機関の範囲や関連行事の会場などが異なります。

1994年に黒人で初めての大統領となったマンデラ氏が2013年に亡くなった際には、規定通りに「国葬」が行われました。

故郷の村へ運ばれるマンデラ元大統領のひつぎ(2013年・南アフリカ)

一方で、この規定によらないことも起きています。

去年11月、デクラーク元大統領が亡くなった際には、「国葬」は行われず、私的な葬儀が営まれました。

デクラーク氏が、かつて少数の白人が大多数の黒人を支配したアパルトヘイト=人種隔離政策の下で、最後の大統領だったことから、黒人を中心に「国葬」を営むことに反発する声があがり、遺族が、議論の高まりや混乱を避けるために、私的な形で営んだのではないかと受け止められています。

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