
「ハマスにガザを統治させてはならない。また、イスラエルにガザ地区を再び占領させてはならない」
G7=主要7か国の外相会合に出席するために日本を訪れたアメリカのブリンケン国務長官は8日、NHKの単独インタビューに応じ、ガザ地区の将来についてこう述べました。
事態の鎮静化に向けてアメリカはどう対応するのか。各国が求める人道目的での戦闘の休止は実現するのか。インタビューの全文です。
(ワシントン支局記者 岡野杏有子)
民間人の犠牲続くガザ地区 どう考えている?
G7各国を含む多くの国々は10月7日に起きたことが二度と起きないよう、イスラエルには自衛する権利があることを支持している。

しかし、それは国際人道法にのっとってだ。そして民間人の犠牲や苦しみを最小限に抑えるため、イスラエルが取ることができ、また取るべきだと私たちが考える追加の措置がある。
ハマスは意図的に民間人の中に紛れ込むため難しいことではある。指揮官や司令部、武器や弾薬を民家や学校、モスクや病院の地下に隠している。しかしそれでも、イスラエルはテロリストと民間人を区別する義務がある。

そのため、ネタニヤフ首相と私の会談の一部は、民間人の犠牲を最小限に抑えるために講じるべきだと私たちが考える追加の措置に関するものだった。私たちは皆、それを実行したいと思っている。
同時にわれわれは、ガザ地区への人道的な支援の量を飛躍的に増やし、人々が日々を生きるために必要な食料、水、薬、その他のものを手に入れられるように取り組んでいる。
民間人の犠牲 最小限にするために必要なことは?
私たちは民間人の犠牲を最小限に抑えるためにできる、またはすべき追加の措置があると思っている。それが今週私が行った会話の大部分だった。
ハマスの掃討は可能なのか?
イスラエルでは10月7日に、男性、女性、子ども、赤ちゃん、老人、ホロコーストの生存者までもが虐殺された。いかなる国も、こうしたことを容認することはできないと思うだろう。どの国も受け入れることはできない。
このような事態に直面した国は、防衛するだけでなく、2度と同じようなことが起きないようにするだろう。

ハマスはイスラエルに向けてロケット弾を撃ちつづけており、10月7日以来、その数は7000発を超えている。
だから、主な目標はイスラエルの能力を最大限に発揮してこのような事態が2度と起こらないようにすることだ。
ハマスをせん滅しても憎悪はますます高まるのでは?
そのとおりだ。究極的には、テロリストに対処できるし、殺害することだってできる。10月7日のようなことが2度と起こらないよう取り得る対応はとれる。
ハマスはパレスチナの人たちを代表しているわけではない。パレスチナ人の望みを代表しているわけでもない。
しかし、ハマスが考え方を乗っ取っているかぎり、恒久的な平和や安全を確保する唯一の方法は、よりよい考え、より強力なアイデアしかない。
そしてそれは、アメリカや多くの国にとって、パレスチナの国家につながるものでなければならない。究極的にはパレスチナ人もイスラエル人も機会、安全、尊厳が等しく保障されたみずからの国家に住む権利がある。
われわれは現在の危機に対応するかたわら、どうしたらそのような道を歩むことができるかを考えなければならない。それこそが恒久的な平和と安全を確保する方法だ。
ガザの将来についての展望は?

2つの論点がある。ガザ地区そのものに直結する紛争直後の未来があり、基本的な考え方や原則を明確にする必要があると考えている。
ハマスにガザを統治させてはならない。単に10月7日の行いを繰り返すからだ。
また、イスラエルにガザ地区を再び占領させてはならない。ガザ地区をテロ攻撃の温床とさせてはならないのだ。パレスチナ人をガザ地区から追い出すようなことはあってはならない。

究極的には、ヨルダン川西岸とガザ地区を統合する統治が必要だ。われわれはパレスチナ国家を信じている。しかしそこに到達するために、そこに到達するまでの要素は何かは、まさにわれわれやほかの国も考えているところだ。
いま目の前のことに取り組んでいるとしても、その後のことも考えていかなければならない。
戦闘休止はなぜ実現できていないのか?
われわれは多くの目的のためには人道的な戦闘休止が非常に有益だと考えている。より多くの人道支援をガザ地区に届けることができ、ガザ地区にいまも残されている外国の人々を手助けするのにも有益だ。
イスラエルやアメリカ、そして多くの国にとって決定的に重要であることにも役立つ。それはハマスによって捕らえられている200人以上の人質の解放を確実にするということだ。
戦闘休止はこうした目的のために非常に役立つと考えている。
その件についてはイスラエル政府と重要な話し合いを行い、われわれは、戦闘休止がどのように機能するかや、実際にこうした目標を前進させるのにどう役立つかといったイスラエル側の疑問に答えるために協力すると合意した。

今、そのプロセスに取り組み続けているところだ。G7のすべての国が、人道的な戦闘の休止を支持することはすでに示された通りだ。
イスラエルが戦闘休止に合意していない どう考える?
これはまだ進行中で、われわれは、戦闘休止がどう機能するかについてイスラエル側があげたいくつかの疑問に取り組んでいるところだ。

決定的に重要なのは、人質の解放を進めることだ。これはイスラエルにとって重要だが、われわれにとってもそうだ。
ガザ地区には10人のアメリカ人が人質になっているとわれわれは考えている。さらに10月7日の虐殺によって、30人以上のアメリカ人が犠牲になったのだ。
バイデン大統領が3日間の戦闘休止要請と報じられているが?
わたしは外交上の会話を明かすつもりはない。
ただ、バイデン大統領とネタニヤフ首相は、大統領のイスラエル訪問を含めて多くの対話を行い、われわれのチームは定期的に連絡を取り合っている。

アメリカとイスラエルは互いの見解や経験、過去から学んだ教訓を共有している。懸念や期待も共有している。
これは現在イスラエルと行っている対話の一部であり、もちろんバイデン大統領みずから深く関与している。
来週は米中首脳会談予定 ウクライナ情勢含め3つの問題を一度に対応できる?
対応できるし、対応している。私はこれから韓国に向かい、その後、インドに向かう。われわれはインド太平洋地域に大きな焦点をあてている。

つい1週間ほど前、中国の王毅外相はワシントンに滞在していて、私とサリバン大統領補佐官(安全保障政策担当)、バイデン大統領と広範な議論を行った。
そして来週、APECで両首脳が会談するだろう。私たちは今、それに向けて取り組んでいる。アメリカと中国やそのほかの国々が協力できる分野と、われわれの間にある違いに責任を持ってどう対応できるかを検討するために、首脳同士が協議し、対話することは非常に重要だ。
我々はインド太平洋地域に全面的に関わっている。来週、バイデン大統領や大半の国家安全保障チームは、ほぼ1週間にわたってAPEC諸国と時間を過ごすことになる。
中東に軍などを戻すことはしない?
われわれは最も重要な核心的な利益の1つであるインド太平洋地域に効果的に関与できるようにするとともに、喫緊の課題である中東の危機にも対処できるし、いまもそうしている。
太平洋地域の国々同様、アメリカの国民の日常生活に影響をもたらすという点で、この地域はまさに未来である。
政権が長く、注目し続けてきた分野だ。G7外相会談に限らず、日本政府とインド太平洋地域でともに取り組んでいる多くのことについて協議することも私が来日した重要な理由だ。
日本とのパートナーシップは、私の記憶ではこれまでで最も強固になっていて、心強い。というのも、アメリカと日本は多くの課題に取り組んできた。アメリカだけではない。日本や、次に訪問する韓国を含む最も緊密な同盟国やパートナーとともに取り組んできた。そして、インドとの関係を深め、強化することも重要だ。
中東情勢の鎮静化に向けて日本に期待する役割は?

日本はすでに重要な役割を果たしている。
まず、日本が10月7日の残虐行為を断固として非難し、国際人道法に従って自衛するイスラエルの権利を強く支持したこと、さらに必要としているパレスチナ人に7500万ドルの人道支援を提供したことに深く感謝している。
もちろん、上川外務大臣自身も重要な訪問を行い、われわれは広範な議論を行った。日本は、この危機のさまざまな局面に対応するための重要なパートナーである。日本とは非常に良い対話を行った。
今回、中東の危機への対応やアメリカと日本がともに取り組んできたほかの多くの課題について話すため、岸田総理大臣が時間をとってくれたことに深く感謝している。
(2023年11月8日 ニュースウォッチ9などで放送)