2023年3月31日
韓国 朝鮮半島 注目の人物

K-POPダンス 世界的カリスマ師匠に聞く!

若者を中心に日本でも浸透してきている韓国発の音楽。中でもK-POPの音源の海外への輸出額は去年2億3000万ドルを超え、広がり続けています。
K-POPの最大の特徴といえばダンス。あの振り付けはいったいどうやって作っているのか、韓国の音楽界で人気の振り付け師、リア・キムさんに聞きました。

(ソウル支局長・青木良行)

世界中の若者を引きつける韓国発のダンス

韓国・ソウルの東部、おしゃれなカフェが集まり若者でにぎわうソンスドン(聖水洞)。ここに、ダンスを習おうと世界中の若者たちが集まる「ワン・ミリオン・ダンススタジオ」があります。2022年12月、スタジオを訪ねました。アジアやアメリカからの留学生のほか、レッスンを受けるためにわざわざソウルに旅行したという人もいました。受講のきっかけを聞くと、K-POPのダンスに魅了されたという答えが多く聞かれました。

レッスンを受ける外国人の生徒たち

アメリカ人女性
K-POPのダンスは激しくて、繊細で、動きが速いところが好きです!
誰でも一緒に踊ってみたいと思える振り付けが特徴ですよね。

この日、講師を務めたのは、スタジオの共同代表で振り付け師のリア・キムさん。韓国で最も注目されている振り付け師の1人です。定員100人のリアさんのクラスはホームページで予約を受け付けると毎回数分で締め切りになるそうです。

「TT」生みの親

リアさんはこれまで多くのアーティストへの振り付けやデビュー前のグループのダンス指導を行ってきました。中でも注目を集めたのは、2022年の紅白歌合戦にも出場したTWICEが日本で2017年にリリースした「TT」の踊り。泣き顔を表す顔文字を指で表現したポーズは若者や芸能人の間で流行しました。このダンスを編み出したのが、リアさんでした。

ブームとなった「TTポーズ」

韓国のアーティストが見せるダンスの特徴として、ワンポイント印象的なポーズを取り入れるのが大事だと言われています。リアさんの「TTポーズ」はまさにこの“ポイントダンス”を考える中で作られたと話していました。

リア・キムさん
アーティストがカメラでアップになる時、どうしたらかわいく映るかずっと考えてきました。「TT」では涙を表すためにいろいろ考えてみて、これならかわいいなと思って決めました。思っていたよりも好評でした。曲が発表されてからずいぶんたちましたけど、今でもお友達どうしなどでポーズを使ってくれていて、とてもうれしいです。

リア・キムさん

「見る音楽」の時代

学生時代、マイケル・ジャクソンのライブの映像に衝撃を受けてダンスに目覚めたというリアさん。地元のダンス教室で特訓し、高校卒業後はソウルで本格的にダンサーとして活動を始めます。その後、2007年と2008年に、ヒップホップダンスの世界大会で優勝しました。

リアさんが心がけているのは、「見る音楽」だといいます。

リア・キムさん
「聞く音楽」の時代をこえて、今は「見る音楽」の時代です。パフォーマンスが占める部分が非常に重要になっています。振り付け師が担う役割はとても大きく、韓国の独特なスタイルができあがっていると思います。

「見る音楽」はどのように生まれるのか、リアさんのスタジオでは、所属するダンサーや振り付け師たちが考案した振り付けをスタジオの動画投稿サイトで公開しています。それぞれ好きな曲の一部にあわせた振り付けを考案し、自身が受け持つクラスで生徒に指導し、80分間のレッスンの最後に全員で踊る様子を撮影します。所属ダンサーの1人、ヘウォンさんは3、4時間ほどかけて振り付けを考えてからレッスンに臨むそうです。

ヘウォンさん
レッスンの最初は皆さん感覚がつかめないんですが、ところどころ説明して進めていくと、ちゃんとついてきてくれるんです。最後は皆さん本当に楽しそうで、それを見ていて私もとても楽しいです。

ヘウォンさん

毎日のように新しく公開されるダンスの数々。これまでに公開された動画は1万本以上だということです。こうした積極的な発信は世界中に浸透し、チャンネル登録者数はおよそ2600万人にまで拡大しました。地元メディアによりますと、韓国では人気男性グループのBTSなどに次ぐ規模だということです。公開の場で振り付けを競い合わせることで刺激を生み出すことができると、リアさんは話しています。

リア・キムさん
すべての振り付け師たちに出られる機会を与えたいんです。みんな自分の新しい振り付けを披露したいんですよ。以前は限られたメンバーだけが新たな振り付けを作っていましたが、今ではメンバーみんなが自らやってくれるようになったんです。

こうして生み出された振り付けについて、リアさんは今後、振り付け師の名前と一緒に後世に残せるような仕組みが作れないか検討したいとしています。

ダンスは「誰でも踊りたい」

100万人がダンスを楽しんでほしいという願いを込めて名付けられた「ワン・ミリオン・ダンススタジオ」。しかしその影響力は今や100万人どころではありません。将来は「ドライブスルーでダンスを学べる場所を作りたい」とも語るリアさん。ダンスは決して一部の人だけのものではないと話しています。

リア・キムさん
踊ることをみんな恥ずかしがりますが、心の中では「私も踊れるようになりたい」と思っています。自分が楽しいと思えるダンスが、いいダンスです。それを多くの人に知ってもらいたいです。

レッスンするリア・キムさん

取材を終えて

私が好きなグループのダンス指導や振り付けを担当してきた伝説の振り付け師、リア・キムさん。「どんなに忙しくてもレッスンだけはずっと続けたい」と、ダンスの楽しさを広めることへのこだわりを語っていました。一緒に取材したスタッフは「横で見ていて、私も少し踊りたくなりました」。韓国発ダンスは今後も注目を集めそうです。

リアさんと記者

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