この日、取材に訪れたのはアリゾナ州の教会。野党・共和党の候補者を支持する保守派の集会を取材するためだ。
会場には家族連れから高齢者まで、地元に住む人たち150人ほどが集まっていた。

そんな中、目に留まったのは行列ができていたテーブル。販売されていたのは1枚15ドルの抽選券だ。
気になる景品は何だろうと見てみると…。
テーブルに置かれたチラシには「AR15」の文字が。アメリカで銃を持つ人の間で人気がある自動小銃だ。
「AR15」は殺傷能力が高く、アメリカで頻発する銃撃事件でたびたび使われ、多くの犠牲者を出してきた銃だ。
バイデン大統領は、「AR15」を含む自動小銃などの規制をしようとしているが、共和党などからの反対で実現のめどは立っていない。
銃規制をめぐる議論はアメリカの選挙ではいつもついて回るトピックで、11月8日に行われる今回の中間選挙も例外ではない。

チラシを手に取って見てみると、自動小銃のメーカー名、付属する弾倉の数(1つ)、銃身の長さ(16インチ=約40㎝)など、仕様が詳しく記載されていた。
抽選の当選者は、後日決まるという。
「1枚買うよ、あ、やっぱり2枚お願い」
目の前で、Tシャツに野球帽をかぶった姿の男性が、笑顔を見せながら抽選券を購入していた。

そして、抽選券は飛ぶように売れていく。
アメリカでは、憲法で保障された権利だとして自衛などのために銃を持つ人が少なくない。だからこそ、選挙集会で抽選の景品にもなるのだろう。
一方で、短時間に多くの人の命を奪うこともできてしまう自動小銃。目の前で起きていることを理解すべきなのか、驚くべきなのか、それとも、憤るべきなのか。
「銃社会アメリカ」と呼ばれる背景には、銃の存在が、こうした日常の隅々まで浸透していることがあるのかもしれない。