至誠一貫。自信を持っている

正代

大相撲

大関昇進の伝達式の直後、正代が口にした。

「自信を持っている」

令和2年9月の秋場所で念願の初優勝を果たした正代。そこにかつて“ネガティブ力士”と呼ばれた面影は見られなかった。

熊本県宇土市出身の正代は、学生相撲で活躍したあと平成26年に前相撲で初土俵を踏んだ。着々と番付を上げ、新入幕と新関脇の昇進は年6場所制となって以降、前相撲でデビューした力士としては、3本の指に入るスピード出世だった。相手の力を受け流す天性の上半身の柔らかさで土俵際の強さを見せるなど、かねてから将来を期待されていた。それでも、新十両昇進の際には…。

「なるべくみんなと当たりたくない」

なんとも気弱な発言。さらに新入幕を果たした際には…

「自分は精神面で強くない」

そんな正代だったが、令和2年に入ってからは優勝争いを何度も経験。精神的に鍛えられたことに加え、筋力トレーニングを重点的に行った成果でいっそうの馬力が身につき、少しずつ自信をつけていった。秋場所では、その馬力をいかした前に出る圧力で白星を重ねた。

「人生で一番、緊張したかもしれない」

こう振り返った千秋楽の大一番を制し13勝2敗の好成績で初優勝。大関昇進を果たした。

「至誠一貫」

伝達式の口上では、“誠実さを貫き通す”という意味の四字熟語を盛り込み、これまでのイメージと異なる力強い決意を示した。伝達式の後の会見でも次々に前向きなことばが飛び出した。

「目標を口にすると自分にもプレッシャーがかかるから遠慮していたが、少しずつ口にしていこう」

新大関として迎える11月場所の目標については「まず勝ち越し」と話した正代。ここはいつもどおりに謙虚で控えめだったが、続けて発したことばに覚悟が見えた。

「新大関として存在感が伝わるように。責任がある地位なので何とか全うしたい」
「自信を持っている。たくさんの人にあこがれてもらえる力士になりたい」

みずからの背中を追いかけて欲しいとも取れる前向きなことばに、「みんなと当たりたくない」と耳を疑うようなことばを発し、“ネガティブ力士”と呼ばれたかつての姿は見られなかった。

これからは、看板力士として角界を背負い相撲界の発展にも力を尽くしていかなければならない正代。11月場所では、ことばどおりの“自信と風格”を漂わせながら白星を重ね、新大関としての責任を果たしてくれると期待している。

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