自分が今できることを1日1日最大限に積み重ねていく

一ノ瀬メイ

パラ競泳

パラ競泳の一ノ瀬メイ(23)は生まれた時から右腕のひじから先がない障害がある。
運動機能障害、S9と呼ばれるクラスで7つの日本記録を持ち、東京パラリンピックでのメダル獲得を目指している。東京大会の1年延期を受けて、現在、一ノ瀬はオーストラリアの自宅で、黙々とトレーニングに励んでいる。

「東京パラリンピックの開催日が変わっても目標は変わらない。
自分が今できることを1日1日最大限に積み重ねていくだけ」

2年前、オーストラリア東部の地域、サンシャインコーストに拠点を移した一ノ瀬。現地の大学のプールで、パラリンピックのメダリストなど世界のトップ選手たちと練習に打ち込んできた。

しかし、オーストラリアでも3月中旬から新型コロナウイルスの感染が拡大。一ノ瀬が住むクイーンズランド州では、他の州への移動を禁止する封鎖措置がとられた。スポーツ施設は営業禁止となり、3月24日には一ノ瀬の拠点のプールも閉鎖。パラリンピックの代表選考会など予定されていた大会は軒並み中止され、先を見通せない状況が続く。

「いままで積み重ねてきたものを発揮する試合がないままシーズンが終わってしまった。
水泳は水中で行う競技なので、プールが閉まって毎日水の中でトレーニングができないという意味では、陸上で行う競技に比べて感覚を保つことがすごく難しい」

プールが閉鎖される中、一ノ瀬が向かったのは“海”。
外出制限もあるため週2回に限定して、慣れない環境で泳いでいる。2日間空くと影響が出るという泳ぎの感覚を失わないためだという。

「できる範囲で、今までやってきたものを保っていきたい。
私は海がすごく怖くて…。サメが全くいないと言えないじゃないですか(笑)。
いまは本当に泳げる水があるだけでありがたい状況なので、水があることに感謝して練習しています」

厳しい状況でも、今できることに集中する。
困難を乗り越えた先にかつてない大きな喜びが待っていると信じている。

「1つ1つできることを確実にやって乗り越えたいと思います。
今までのオリンピック・パラリンピックとは違う、スポーツの祭典以上に、
意味のあるオリンピック・パラリンピックになればいいなと思います」

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