『取りたい』じゃなくて『取る』。『出たい』じゃなくて『出る』

細田あい

陸上 #自分を奮い立たせたいとき

「3位という結果は素直に喜べない」

10月に開催されたパリオリンピックのマラソン代表選考レース、MGC=マラソングランドチャンピオンシップ。上位2人にオリンピックの切符が与えられるレースで細田あいは雨の中、最後まで諦めない走りを見せた。

しかし、結果は3位。代表内定には届かず、悔しさをかみしめた。

実は直前まで十分な練習が積めていなかった。
大会前は明かしていなかったが7月に左足を痛みが出たあと、別の箇所を痛め、満足に走り始めたのは大会の1か月前だった。

「けがして走って、けがして走ってというのがずっと続いてしまっていた。なかなか継続して走ることができなくて、レースのスタート地点に立てるかどうかが分からなかった。不安に駆られる気持ちと、しんどい気持ちといろいろあった」

MGCのレース中盤、2大会連続のオリンピック出場を目指す一山麻緒が先頭集団から飛び出した。

細田の足の状態からすれば、ほかの選手の出方を伺うという選択肢もあったが、ランナーとしての勘を信じてただ1人、一山についていった。

「やっぱり2番以内に入らなきゃいけないというのがあったし、1位を逃してしまったらあと1枠の争いになってしまう。出るからにはやっぱり優勝することが一番だと思ったし、ついていこうというのはとっさに判断した」

一時はトップに立ったものの終盤の33キロ付近で徐々に一山に離され、36キロすぎでは後ろから追い上げてきた鈴木優花にも抜かれた。

ただ細田は諦めなかった。
残り2キロで前を走る一山におよそ15秒離されたが、苦しい最終盤で追い上げを見せた。徐々に差を詰め、トラックでも一山の姿を捉えていたが、わずか7秒届かなかった。それでも攻めの姿勢を貫いた判断に悔いはない。

「前に出たことは後悔していないし、世界で戦っていくためにも誰かが動いた時に冷静な判断をするより、前のほうでレースを進めることが大事だと思っている。自分の中で前に出たことは後悔してないし、出て分かったこともある」

パリオリンピックの代表選考は残り2つの大会の結果次第だ。
設定記録の2時間21分41秒より速いタイムの選手がいなければ、MGCで3位だった細田がオリンピック出場権を手にすることができる。それでも細田は攻めの姿勢を崩すつもりはない。

「待つという選択肢はない。MGCでの悔しい気持ちがあるから頑張れる。まずは最後の1枠を勝ち取らなきゃいけない。『取りたい』じゃなくて『取る』。『出たい』じゃなくて『出る』」

夢だったオリンピックの切符は自らの手でつかみ取る覚悟だ。

陸上 #自分を奮い立たせたいとき