
諦めたくても諦められない そういう存在がワールドカップ
サッカーJ1、川崎フロンターレのディフェンダー、谷口彰悟。
11月1日、ワールドカップカタール大会の日本代表入りを果たした。

代表を目指すきっかけの1つとなったのが、川崎フロンターレの先輩で元日本代表、中村憲剛のことばだった。2014年、ワールドカップブラジル大会のメンバー入りを逃した直後の中村から声をかけられた。
「代表は目指すべき場所だよ。世界は変わっていくし、目指していかないといけない」
チャンスが訪れたのはプロ2年目の2015年。初めて日本代表に招集された。
ところが「野心や欲を出せず、お客さんみたいな感じで消化不良に終わった」と、思うような結果を残せなかった。その後、2017年にも1度選ばれたのを最後に代表に呼ばれることはなくなった。あっさりつかんだはずの憧れの場所は以後、遠くなっていく。
「何であそこで日本代表にしがみついてでも、この場所にいるとか、もっとステップアップしてやるという野心を出さなかったんだろうと 自分自身に対する怒りや後悔が すごく大きくて、充実感はなかなか得られない時間を過ごしていた」

その怒りと後悔が成長の起爆剤になった。
愚直に練習を重ね、気づけばフロンターレの守備の要となり、キャプテンとしてチーム全体を引っ張る立場になっていた。J1のリーグ2連覇にも大きく貢献するなど、キャリアを積み上げてきた。
待望の代表復帰を果たしたのは去年6月。実に4年ぶりのことだった。

ことし2月のアジア最終予選のサウジアラビア戦では、ケガの主力に代わって先発出場しチームを完封勝ちに導くなど日本のワールドカップ出場に貢献。そこには自信を取り戻した谷口の姿があった。
「いろんな国と対戦してきたけど手応えは感じているし、あとは相手フォワードとの 駆け引き、バトルの部分も、もちろんもっとやっていかないとと思うが、全く歯が立たないというのではなく、そこはある程度、手応えをつかんだ」
本大会のメンバー発表会見はクラブハウスでマッサージを受けながら聞いた。自分の名前が読み上げられたのは7番目。表情はほとんど変わらなかったが、翌日、話を聞くと秘めてきた思いを明かしてくれた。

「憧れのワールドカップの舞台に立ちたいと、その思いだけかなと思う。諦めたくても諦められない。そういう存在がワールドカップだと思っているので、そこに関われるのであれば、何が何でも、どんなことをしても、つかみ取っていきたいという思いで、その一心でここまでやってきている」
そして、もう1つ。代表のメンバーの多くはヨーロッパのリーグで活躍する選手が多い。今回選ばれたメンバー、26人のうちJリーガーは6人にとどまった。

「自分で勝手に」と断った上で、谷口は新たな覚悟を口にした。
「Jリーグの中でも 必死に頑張ってプレーし続ければ、日本代表、ワールドカップが 遠い存在じゃないんだよというのは本当に証明していきたかった。JリーグにはJリーグのよさがあり、そのプライドもある。僕らも負けないよ、負けていないよということを示したい」
