引き際を考えることはない

三浦知良

サッカー

“キングカズ”は、2022年、大きな決断を下した。
Jリーグを離れ、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズでのプレーを決意したのだ。最大の理由は“出場機会”。2021年シーズン、J1だった横浜FCでの出場時間はわずか1分だった。
ただ、移籍先のJFLはJ1からは3つ下のカテゴリー。葛藤はなかったのか。

「選手というのはトップレベルでやりたいという欲望、野心は持っていて当然だと思う。僕もJリーグの舞台でやれるのであれば、その選択もあるかもしれない。ただ今の自分の立場であまりカテゴリーというものにこだわっていてはいけないと思う。大事なのは、自分の持てる力をいちばん発揮できる場所で、情熱をぶつけられること。試合に出て活躍して、這い上がっていく方がいまの自分にとっては大事だと思った」

ことしで55歳、その年齢とも素直に向き合っていた。
衰えを受け入れながら、みずからの戦い方を模索していた。

「もちろん体力的に衰えたと感じる場面は多い。10代20代の時と比べものにならないぐらい走るスピードだったり体力は落ちている。でも、それがなくなったらサッカーができないかというと、そうではない。自分の衰えたものを判断のスピードだったりそういうもので克服していけばできるスポーツだと思っているし自分の経験が生かせる」

30歳まで続けるのも難しいと言われるプロサッカー界において、戦い続ける理由は何か。

「サッカーをやる情熱、サッカーで経験した悔しさ、こういうものが自分の中にあって、そういう気持ちが自分の支えになっている。特に、悔しさというものはすごく大きくて、プロ37年目になっても試合に絡めなかったり活躍できなかった時の悔しさは10代の時とほとんど変わらない」

身体能力に往年の勢いはなくてもサッカーへの熱い思いだけは微塵も衰えていなかった。そして、そこだけは今後も変わらないと力強く締めくくった。

「引き際を考えることはない。サッカー大好きで、そのサッカーが職業でもあり、仕事でもあり、ある意味ビジネスでもある。そして大好きなサッカーに今でも情熱がある。こうやって今でも自分を必要としてくれるクラブがある。そんな中で自分がやめるという選択肢はない。僕は僕なりに続けていける限り、ずっと頑張りたい。自分との戦いだと思っている」

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