オリンピックは、私にとって本気になれる場所

高木美帆

スピードスケート

個人種目で自身初となる金メダルを獲得した翌日。
高木美帆はメダル授与式で、君が代が流れる中、かみしめるように国旗を見つめ、ほほえんでいた。

「個人種目で君が代を聞くことは夢に見ていたことで、感慨深いものがあった。スポーツの歴史の中でもすごく輝いたシーンで流れるイメージがあるので、その舞台に立てたんだと思っていた」

北京オリンピック、高木は短距離の500メートルから長距離の3000メートルまでの4つの個人種目と、団体パシュートの合わせて5種目に出場。
500メートルと1500メートル、それに団体パシュートで銀メダルを、そして1000メートルではオリンピック新記録で金メダルを獲得した。

「4つのメダルを獲得することができ、無事に最後まで走りきることができてよかった。最後の種目で金メダルを取ることは私だけの力では成し遂げることができなかったのでチームの力を証明できた」

高木は15歳の時に2010年バンクーバー大会に初出場。14年ソチ大会は出場を逃したが、2回目の出場となった前回ピョンチャン大会は1500メートルで銀メダル、1000メートルで銅メダルを獲得。女子団体パシュートでは金メダルを獲得した。

そして27歳で迎えた3回目のオリンピック。
短距離から長距離までこなすオールラウンダーとして、5種目に挑戦したうえで、個人種目で金メダルを目指すと臨んだ。

しかし序盤は納得する結果につながらなかった。
特に2種目め、世界記録を持つ1500メートルは金メダル最有力と期待されながら銀メダル。4年間、この種目の金メダルを念頭に置いていただけに「ひたすら悔しい」と唇をかみしめた。

それでも高木は挑戦をやめなかった。
500メートルに出場し自己ベストのタイムで銀メダル。
団体パシュートも銀メダルを獲得した。
そして最後の種目の1000メートル。
最後まで挑戦することをやめずに、5種目を滑りきったあとに手にしたのは願い続けたオリンピックの個人種目での金メダルだった。

「オリンピックの出だしはつらいことがあって、自分の調子も上げきれないときがあったが、最後に自分のすべてを出し切り、金メダルを取れなくても悔いはないと思えるようなレースができたのが本当にうれしい。そして、金メダルをとれたことは、形となって残ったと思う」

金メダルを授与された高木が大会を振り返った。

「今大会はいろいろな感情を味わうことができたオリンピックだった。オリンピックは、私にとって本気になれる場所なんだと強く感じた」

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