金メダルも財産 足が壊れるまで走れたことも財産

野口みずき

陸上

2020年3月13日、先頭でゴールテープを切ったあの日以来、16年ぶりの訪問だった。
アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずきは、ギリシャで行われた
東京オリンピック聖火リレーで日本人第1号の走者を務めたその翌日、アテネオリンピックのマラソン会場、パナシナイコスタジアムに立ち寄った。

「あの歓声を自分のものにした瞬間に、何とも言えない気持ちになった。
その瞬間を、次の、またその次のオリンピックでも味わうために諦めずに
挑戦したいと思った」

地中海を思わせる青空の下、歴史の刻まれた真っ白な大理石のスタンドから
16年前に駆け抜けたトラックを眺めると、オリンピックに魅せられた競技人生がよみがえる。

連覇を狙った北京オリンピックは、日本代表に選ばれながら大会直前の太ももの肉離れで無念の欠場。
その後もけがに泣かされたが、挑戦を諦めなかった。
ロンドンオリンピックとリオデジャネイロオリンピックは代表選考会で落選。
結局、再びあのスタートラインに立つことはなかった。
それでも、断言できる。

「全然後悔はしていない。
オリンピックでメダルを取ったことも財産だが、
その後、本当に足が壊れるまで走り続けられたことも
私の大きな財産になっている」

思い出の地でオリンピックから得たものを再認識したこの時、およそ4か月後に開幕が迫っていた
東京オリンピックには新型コロナウイルスの影響が色濃く及んでいた。
世界中でウイルスの感染拡大が収まらない中、大会は開催されるのか…。

その2週間後、大会の延期が決まった。
不可抗力の事態とはいえ、目標を見失いかねない現役のアスリートたちにとって、栄光と挫折を知る
オリンピアンのことばは、きっと頼もしく響くはずだ。

「挑戦し続け、向上心を持ち、努力し続けることに、終わりはない。
オリンピックに向け挑戦することが、アスリートにとってはすごく大切なことだと思う」

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