やりたいことは何でもできる

ベアトリーチェ マリア・ビオ

車いすフェンシング

東京パラリンピックで2連覇を果たした彼女はマスクを脱いで雄たけびを上げ、そして泣き崩れた。

「ハッピーだけど、それよりもほっとしている」

車いすフェンシングのイタリア代表、ベアトリーチェ マリア・ビオ。SNSなどで世界的な人気を誇るインフルエンサーとして知られ、“ベベ”の愛称で親しまれている。

“ベベ”は11歳のとき、感染症が原因で両腕のひじから先と両足のひざから下を切断した。それでも、5歳から始め大好きだったフェンシングを諦めなかった。義足や義手をつけて競技を続け、やがて世界で唯一の“両手足がないフェンサー”と呼ばれるようになった。どんな困難にも前向きに挑戦する姿勢が共感や憧れを呼び、SNSのフォロワーは110万人を超える。

長年、パラリンピックを取材しているイタリアのスポーツ紙記者は母国でも国民的な人気の“ベベ”の魅力をこう語る。
「不死鳥のようでイタリアスポーツ界にとって貴重な存在だ。彼女の行動のひとつひとつに情熱があって、人生の困難にどう対処し、どう乗り越えればよいか、模範を示してくれる。彼女はいつも目標に向かって集中している」(コリエレ・デロ・スポルト/アルベルト・ドルフィン記者)

“ベベ”の歩みは競技だけにとどまらない。父親らとともに障害者の支援団体を立ち上げ、子どもたちなどに装具を寄付したり、スポーツに取り組む機会を与えたりしてきた。

そして将来の夢。イタリアのオリンピックとパラリンピックの委員会を統合して会長に就き、スポーツ界の垣根をなくすという大きな目標を掲げている。
「“ベベ”の名が知られるようになったのには社会的な活動が背景にある。競技で結果を出すことは重要だが、彼女はメッセージも発することができる。それは金メダルよりも大きなことだ」(父親のルッジェロ・ビオさん)

東京パラリンピックで2連覇を果たした“ベベ”。インタビューで新型コロナで苦しむ世界に向けて伝えたいことを聞くと前を向いて答えた。

「よい仲間の支えがあれば、すばらしいことが起きる。自分を信じてハードワークをすれば何事も実現は可能でつまり、やりたいことは何でもできる」

“挑戦すれば困難は必ず克服できる”。
みずからの姿をとおしてこれからも力強いメッセージを発信し続けていく。

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