アスリート×ことば

こんなにも大きな目標を追いかけていたことを、僕はどうして忘れていたんだろう

こんなにも大きな目標を追いかけていたことを、僕はどうして忘れていたんだろう

宇野昌磨 フィギュアスケート

2020年12月、フィギュアスケートの全日本選手権のあと、宇野昌磨は羽生結弦の存在について、改めてみずからの思いを語った。羽生に大差をつけられての2位。想像以上の差があることを痛感した。

「あの演技が羽生選手にとって、“どちらかというと”うまくいった演技だったら、僕は、すごいな、で終わっていたと思う。そうではなく羽生選手にとって“いつも通りやった”演技があの演技だったと僕は思った。1歩ではなく2歩、離れているなと実感した」

その一方で忘れていたある感情を思い出していた。

「羽生選手の本来の実力を目の当たりにしたとき、すごくうれしかった。羽生選手という大きな目標を僕は追いかけていたんだ。こんなにも大きな目標を追いかけていたのに、どうして忘れていたんだろう」

羽生結弦という大きな目標、その壁を超えるというみずからを支えてきたこの気持ちを、銀メダルを獲得した2018年のピョンチャンオリンピック以来、忘れていたという。

「オリンピックが終わってから、本来の羽生選手を見ることがなかなかなかったり、僕がそもそも同じ立場に立てていなかった。さらにコロナで大会がなくなる中、自分にとって何が目標なのか、何をモチベーションに練習をするのかとか何回も自分に迷った」

自分すら見失いかけたが、羽生への思いが再び気持ちを奮い立たせている。

「大会を終えて、どうして僕はこの気持ちを忘れていたのだろうと。目標が同じ日本にいたのに。自分の練習を怠ってきたつもりはないけれど、もっともっと上の自分を目指して練習しなければ、絶対に届かない力の差があった。それを痛感できて改めて良かった」

先の見通しがつかない不透明な状況は続くが、“羽生選手がいる舞台で勝つ”。宇野にとっては、それが何よりも大きな活力になる。

「羽生選手と一緒に出て、いい戦いをして、3回戦って1回は僕が上に行けるぐらいの、実力をつけたい。世界大会で優勝できれば、もちろんうれしいとは思うけど、やはりそこには、羽生選手がいて欲しい」