より多くシュートを打って、より多く得点をとって、アピールする

信太弘樹

ハンドボール

2021年に延期された東京オリンピックに、1988年のソウル大会以来、33年ぶりに出場する予定のハンドボール男子代表「彗星ジャパン」。前キャプテンの信太弘樹は、2020年、31歳になった。東京大会を自分のハンドボール人生の集大成にしたいと意気込んできただけに、大会延期を聞いたときの落胆は相当なものだった。

「30歳を超えての大会。激しいスポーツでケガがつきものでもあることを考えると、1年の延期は僕にはきつかった」

心の内を率直にこう言葉にした信太。モチベーションを維持するため大胆な行動に出た。所属していた国内トップクラスの強豪チームを去り、創設3年目で今シーズンからトップリーグに参入したクラブにあえて移籍したのだ。新たな1年を自身の成長につなげるためには、大きな挑戦に打って出ることが必要だと考えての決断だった。

「自分が点を取らないといけないし、(移籍したチームでは)得点のチャンスというかシュートの本数が劇的に増えると思います。自分が得点する喜びを感じ、チームを勝たせるようなプレーをしたいんです」

プレースタイルをめぐって信太はこの3年間、自問自答の日々を送ってきた。きっかけは若手の台頭。代表チームで、これまでの“点取り屋”の役割よりも、仲間にパスをだす“司令塔”としての役割を求められることが増えてきていた。

頭で分かっていても、体は“点取り屋”の感覚を捨てきれなかった信太。プレーに迷いが生まれたことで、次第に先発から外れることが多くなり、去年はついに代表キャプテンの座も奪われてしまった。「このままで自分はいいのか」と自身に問い続け、行き着いた答えがチームの移籍だった。

「1年大会が延期になったことで、もっと成長できるんじゃないかという気持ちがものすごく出てきました。違うチームに行くことで、自分に変化が起きるのかなと」

8月に開幕した国内のトップリーグ。信太は新しいチームで若いメンバーとともに再スタートを切り、フル出場に近い時間をコートの中で走り続け貪欲にシュートを打ち続けた。全盛期を思わせるエネルギーに満ちあふれたプレー。表情からは一時期の迷いは消えていた。

「より多くシュートを打って、より多く得点をとって、アピールする。東京オリンピックではスタートから試合に出れるようにがんばりたい」

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