小さく始める 農業ビジネス

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いま小さな規模で農業ビジネスに参入しようという動きが出てきています。

農業に従事する人の数は2012年からの9年間で約26.8%減少し(農林水産省)、食糧自給率の低下や耕作放棄地の増加などが懸念されていますが、こうした課題を解決する一助となるでしょうか。

野菜工場をまるごと販売 街なかの小規模スペース活用

京都市南区にある自動車整備工場です。

工場の中を奥へ進むと…
「この建屋が新しく整備した工場です」

中へ入ると、そこは野菜工場でした。自動車整備工場の中に野菜工場があるのです。

20坪ほどの敷地では、リーフレタスやベビーリーフなど6種類の葉物野菜が作られています。

この野菜工場の設備をまるごと販売している会社があります。担当者は設備のメンテナンスや栽培のアドバイスも行います。また収穫された野菜を買い取って、販路開拓の支援まで行います

設備を販売している会社はこれまでも、整骨院やコインランドリーだった場所など市街地の空き店舗や、地下駐車場だった場所など、小規模なスペースに野菜工場をつくってきました。

市街地に野菜工場をつくれば、野菜を新鮮なまま店に届けることができて輸送コストも抑えることができます。生産者と利用者の双方にメリットがありそうです。

街なかの工場でとれた野菜を新鮮なまま店に

野菜工場から野菜を購入しているレストラン 木澤 敦 料理長
香りなども非常に高い。すごく使いやすい野菜になっている

取材した京都市の自動車整備工場が野菜工場を導入したきっかけは、人手不足で事業規模の縮小を余儀なくされたことだったといいます。

自動車整備工場 藤田周士 会長
工場としては半分余裕のスペースが出てきていたので、ちょうどいいマッチングができた

野菜工場を販売している会社 須貝 翼 社長
街なかにある居抜き物件など(活用して)設備投資額が抑えられる。しかも街なかに(野菜工場を)つくるので、野菜の販路が目の前にある。街なか農業というのをムーブメントとして起こしたい

いちご栽培を「簡単なシステムで」 収益力アップ図る

高い収益が見込めるいちごを栽培する新たな仕組みも開発されています。

従来の栽培方法は、培養液を与えて育てる方法では多額の設備投資が必要になり、畑で育てる方法では腰をかがめての作業がかなりの重労働になります。

こうした課題を解消しようと、肥料会社が新たな仕組みを開発しました。まず土の周りに網を張ることで水はけをよくして、管理の手間を省きます。

土の周りに網を張って水はけをよくする

また、いちごの苗を高い位置に置くことで立ったまま作業ができるようにします。

腰をかがめず立ったまま作業

大がかりな設備が必要ないので、コストを抑えることもできるといいます。

この仕組みを取り入れた富山県の農事組合法人は、これまでコメを中心に作ってきましたが、2年前からイチゴ栽培に参入しました。収益力が高まることを期待しています。

農事組合法人 長谷川一男 組合長
簡単なシステムでこれだけのものができるというのが、やはり一つの魅力だと思う

いちご栽培システムを開発した肥料会社 小松一志 部長
楽に収益性の上がるシステムを組み立てていける。一つのモデルになるのではないかと思う

小規模で始めることができて、空きスペースの活用につながるということならば、農業に興味を持つ人が増えるかもしれません。こうした動きが農業の課題解決の一助となるでしょうか。
【2024年5月20日放送】