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軽くて丈夫なアルミニウムはジュースの缶から建築資材まで幅広く活用されていますが、日本では100%を輸入に頼っています。
これまでもリサイクルが進められてきましたが、より高い精度・強度が求められる製品に加工するために、新たなリサイクル技術の開発が進んでいます。
アルミ製品のリサイクル進めるメーカー
富山県では約60年前からアルミ製品の製造が基幹産業になっていて、高岡市の老舗金属メーカーでは一般家庭向けの鍋やフライパンを鋳造して生産しています。特にフライパンは国内シェアの約9割を占めています。
このメーカーでは、製品をつくる過程で出た「アルミくず」を材料にしています。また数年前からは、使用済みの製品を回収してリサイクルしています。
ロシアのウクライナ侵攻で価格高騰
メーカーがリサイクルを進める背景には、100%を輸入に頼っているアルミの価格が高騰していることがあります。
地金の国際取引価格は、主要な輸出国だったロシアがウクライナに侵攻して以降、上昇し、1トン当たりの平均額は10年で2割以上値上がりしました。
課題は不純物
ただ、アルミのリサイクル率をさらに高めるには、まだまだ課題があります。その1つがシリコンなどの不純物です。シリコンはフライパンを鋳造する時などに耐熱性能を高めるためアルミに加えられます。
シリコンが混入したアルミを再び鋳造してリサイクルすることもできますが、いまアルミの活用先として注目されているEV(電気自動車)の部品には高い精度や強度が求められます。そのまま「型に押し出す加工」をすると、ひび割れなどの原因になってしまいます。
富山大が取り組む新技術とは
この課題解決に取り組んでいるのが、富山大学の小野英樹教授の研究チームです。アルミとシリコンが溶け始める温度差を利用して分離することを目指しています。
実験では、溶かしたスズの中にアルミとシリコンの合金を入れます。スズの中で、アルミは約600度で溶けますが、シリコンは約1200度にならないと溶けません。
このため600度では、アルミが液体になる一方、シリコンはほとんど溶けず比重が軽いため表面に浮いてきます。
スズを溶媒にしたシリコンの分離技術は現在、特許を出願中です。今後はシリコンの含有量を調整できるよう研究を進めていく予定です。
富山大学 都市デザイン学部 小野英樹 教授
「不純物を除去したリサイクルアルミを世界に先駆けてつくり、それがアルミサッシや自動車部品などのさまざまな用途に使用できることを実証していきたい」
富山県では10年後までに廃棄されるアルミをすべてリサイクルする技術開発や環境づくりを進める目標を掲げていて、技術の確立が期待されています。
(富山局 小林佑輔)
【2024年4月16日放送】