レアメタルを取り出せ!国内で進むリサイクル技術の開発

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をきっかけに、ロシアが主な産地となっている「ニッケル」や「パラジウム」などの希少な金属「レアメタル」の価格が高騰しています。そこで今、レアメタルのリサイクル技術の開発が活発になっています。

洗浄水のわずかなニッケルを濃縮

長野県駒ヶ根市にある、めっき加工の会社「塚田理研工業」は、自動車の部品などに使われるプラスチックに金属のめっき加工を行っています。

使用量が最も多いのが、レアメタルの一つニッケルです。ニッケルを溶かした緑色の液体にプラスチックをひたして、めっきをつけます。

しかし、ニッケルの価格がこのところ急上昇し、会社の調達コストは2021年より約20%上がっています。

めっき加工会社 下島聡社長
「世界情勢の不安定さが増していく今の状況の中では、長期的に見てもニッケル価格はまだまだ上がっていく可能性がある」

会社はこれまでもニッケルを溶かした液体を再利用してきましたが、さらに新しいリサイクルを始めました。めっき加工をした後に製品を洗う洗浄水の活用です。

この洗浄水の中にはわずかなニッケルが含まれています。これを濃縮することで、めっき加工のラインに戻せるぐらいの濃度にするということです。

会社では、洗浄水を約10倍に濃縮する独自のシステムを開発。洗浄水を再びめっき加工ができる液体にしました。

このリサイクルで、年間3500万円ほどのコスト削減を見込んでいるといいます。

下島社長
「金属価格の高騰が長期化している中で効率のいいリサイクルというものが求められている。同じ生産量、同じ売上高を、少ない資源で実現できるような研究開発を継続してやっていく」

使用済み電池からリチウムだけを回収

一方、秋田県大館市でリサイクル事業を手がける「DOWAエコシステム」は今、リチウムに注目しています。リチウムは身近なスマホやパソコン、電気自動車の電池などに含まれています。

会社はこれまで、使用済みとなった車用の電池などを高熱で処理して粉砕し、鉄や銅などを取り出してほかのメーカーに供給していました。

ただ、電池の主原料のリチウムはほかのレアメタルと混ざり合った状態のため取り出すのが難しく、リサイクルが進んでいませんでした。

会社では長年かけて独自の技術を開発し、リチウムだけを回収できるようになりました。

電池メーカーと連携して、使用済み電池から再び電池を作るという新たなリサイクルの実現を目指しています。

リサイクル会社 田中規之課長
「将来的には今使われている電池が大量に廃棄される時代が来ると考えている。限りある資源を再資源化して、持続可能な産業をつくるという面でも非常に重要になる」

「必要は発明の母」と言われますが、価格が高騰しているからこそ、新しいリサイクルの“芽”が生まれつつあります。資源の少ない日本で行われるさまざまな工夫が、世界をリードするリサイクル技術につながっていくことが期待されます。
(経済部 記者 早川沙希)
【2022年5月24日放送】