どう進める?中小建設業のデジタル化

災害が相次ぎ、インフラが老朽化しています。しかし建設業界では人手不足から、災害復旧やインフラを維持するために必要な工事が進まないという課題を抱えています。

こうした状況をデジタル技術の活用で打開しようと、静岡県で中小建設業が取り組み始めました。

人手不足で進まない災害復旧

静岡市を流れる藁科川は2022年の台風15号で護岸が崩れました。しかし応急処置がされたあとの本格的な復旧工事は行われていません。

住民の一人は「早く(工事を)やってほしいなと思う。不安しかない。雨が降った時は」と話します。

静岡県では2022年度、災害復旧などを含む建設工事の約11%で受注する業者が決まりませんでした。

後継者不足などから廃業する建設会社も相次ぎ、入札に参加できる会社の減少が続いています。

デジタル技術で工事現場を効率化

工事現場では、人手不足を補おうとデジタル技術の活用が進められています。浜松市の建設会社は2023年から「資材運搬ロボット」を導入しました。

荷台の下に取り付けたセンサーが作業員の足の動きをレーザーで認識し、1トンの資材を運びながら作業員のあとをついてきてくれます。

作業員のあとをついて資材を運ぶ

このロボットを導入したことで、これまで4人でやっていた作業を2人でできるようになったといいます。

建設会社 現場監督 鈴木肇さん
効率化されるので、早く工事を終わらせることができる。そして新たな次の工事に取りかかることができるようになる

「中小企業が1社単独でやる難しさ」も

新たな管理システムを導入する会社もあります。三島市の建設会社が2023年に導入したシステムは、設計の変更があると、すぐに必要な部材の量が割り出されるなど管理にかかる手間が大きく減ると期待されています。

しかしこのシステムは操作が難しく、社内で扱えるのはまだ3人ほどです。本格的な導入はまだ先になる見込みです。

建設会社 河田亮一 社長
やはり、日々大量の通常の業務を回していくなかで新しいやり方を探す、新しいやり方にチャレンジしていかなければいけないということがあるので、中小企業が1社単独でやることの難しさはそこにあると感じる

デジタル化を後押し 静岡県の「マイレージ制度」とは

静岡県はデジタル技術を活用する人材を育てていくため、全国でも珍しい「マイレージ制度」を始めました。

この制度は、デジタル化に先進的に取り組む建設会社に見学会などを開いてもらい、他社にノウハウを伝えてもらいますノウハウを教えた会社には「ポイント」が付与され、県が発注する工事の入札で有利になる仕組みです

静岡県建設政策課・未来まちづくり室 増田慎一郎 室長
最初にデジタルのよさを実感した業者が、(デジタル技術活用に)踏み切っていない業者に対していろんなノウハウを教授するような仕組み。この取り組みをどんどん進めていって、今ある建設業態を変えていきたい

中小の建設業が単独でデジタル化を進めるには限界もあると見られ、ほかの会社と協力できるこうした取り組みの広がりが期待されます。
(静岡局 中村みゆき)
【2024年3月8日放送】
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