卵の殻を使ってガラスづくりに取り組むメーカーが愛知県にあります。ねらいは、製造過程で出る二酸化炭素(CO2)の削減。卵の加工会社から殻を調達することでコスト削減にもつながっているといいます。
CO2排出量半減へ 環境に優しい原料は?
愛知県岩倉市で瓶や食器を製造する老舗ガラスメーカー。ガラスの製造過程では多くの二酸化炭素が発生するため、このメーカーは2030年度までに排出量を半減させることを目標に掲げています。
環境に優しいガラスづくりをしようと、社員の両角秀勝さんは原料の見直しに乗り出しました。
ガラスは通常、「けい砂」「ソーダ灰」「石灰石」などを混ぜてつくられます。両角さんは、このうちの石灰石に目をつけました。
石灰石は山を削って輸送し、ガラスを製造するまでに二酸化炭素が多く排出されるからです。
ガラスメーカー イノベーション推進部 両角秀勝さん
「(石灰石は)CO2の環境負荷がある。それ以外の、もっと環境に優しい原料があるのではないかという思いがあった」
ホタテやカキの貝殻は実現せず
両角さんがまず目をつけたのは、ホタテやカキの貝殻です。主成分が石灰石と同じ炭酸カルシウムだからです。
しかし、産地からの輸送コストや不純物の多さがネックとなり実現しませんでした。
卵の殻に行きつく
こうした課題をクリアできるものを探して行きついたのは、卵の殻でした。卵の殻の主成分は石灰石とほぼ同じです。不純物も少ないうえ、近場で安く調達することができました。
調達先は卵の加工会社
このガラスメーカーが卵の殻を買いたいと依頼した先は、マヨネーズや洋菓子を作るための「液卵」を製造している愛知県小牧市の会社です。
この会社では1日に10トンもの殻が出ます。肥料やニワトリの餌などに活用してきましたが、一部は廃棄せざるをえない状況でした。
卵の加工会社 岩月顕司 社長
「(すべてが)産業廃棄物になると、年間数千万単位で廃棄料がかかってくる。ガラスメーカーさんからお声がけいただくのは、まさに目からうろこの印象」
原料調達コストも削減
このガラスメーカーでは、原料に卵の殻を使うことで、石灰石で排出される二酸化炭素の9割を削減できるということです。しかも、価格も卵の殻のほうが安くコスト削減につながります。
ガラスメーカー 両角さん
「環境にいいものを使っているのだから(商品の)値段を上げるとか、そういうことは全然考えていない。より自然なかたちで、より環境にいい素材を使っていきたい」
課題は、卵の殻を使うとガラスが青みがかってしまうことだそうです。このガラスメーカーは今後も技術開発を進めたいとしています。
(名古屋局 石井智也)
【2023年12月5日放送】
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