“難民人材”の採用に前向きな企業

いま、企業の間では日本で難民申請などをしている人を人材ととらえ、採用につなげようという動きが活発になっています。

難民申請中の人などと交流 コンビニなど40社が参加

東京・千代田区でNPO法人「WELgee(ウェルジー)」が主催した、企業と難民申請中の人々などをつなぐ交流会が6月開かれました。参加したのは、コンビニ大手や大手海運会社など40社です。

ねらいは人手不足の解消や多様性の確保などだといいます。参加企業の一つ「セブン-イレブン・ジャパンの取締役執行役員は「母国でつらい状況にある中で、日本に期待して日本を選んでくれた方々。日本で安心して活躍できる環境(働く場)をどのように整備するか」と述べました。

取材した日は、アフガニスタンやウクライナなど7か国から来た20人が交流会に集まりました。難民申請をしながら就労の許可を得た人たちで、中には母国で獣医師や土木技術者として経験を積んだ人もいるといいます。

参加企業の一つ、大手コンサルティング会社「アクセンチュア」は優秀な人材の獲得を目指し、2022年に初めて環境や土木のエンジニアとして高い技術を持つシリア人を採用しました。

大手コンサルティング会社 マネジング・ディレクター
「疑似就労体験みたいなことをやってみたら、とても優秀な方が多くて驚いた。ことし、もう1人2人採用して増やしていきたい」

NPO法人 エンゲージメント推進部 林将平 統括
「企業が難民を支援する、かわいそうだから支援する、というよりも、彼らが課題を一緒に解決する側だと。そういった価値創造、支援じゃなくて価値創造の文脈をつくっていきたい」

人手不足解消プラス「組織面で成長見込める」

東京都内で中古トラックを売買するサイトを運営する企業「ネントリーズ」では、海外事業に力を入れるため難民申請している人を採用したところ、思いがけない効果につながったといいます。

この企業は2021年、アフリカのある国から逃れてきた男性を採用しました。男性はITエンジニアのスキルがあり、ゆくゆくはアフリカの現地法人との懸け橋になることを期待されています。

アフリカ出身の男性
「アフリカのマーケットも紹介したい」

課題は日本語の習得でしたが、男性は業務終了後に勉強を欠かさず、同僚と積極的にコミュニケーションを図って、1年足らずで仕事に支障がなく日本語を話せるようになりました。

こうした男性の努力を同僚たちが目の当たりにすることで、職場全体の活性化につながっているといいます。同僚の一人は「彼が努力している様子を横で見ることで『自分も成長しないといけない』といい刺激になっている」と話します。

中古トラックを売買するサイトを運営する企業 宮田誠紀 取締役
「こういう多様性の受け入れ方もあるんだと組織全体で学ぶことができるので、人材不足の課題を解決する、プラス、組織面での成長は結構見込めるんじゃないか」

難民申請をしている人たちなどを企業の採用につなげている、このNPO法人の代表は、副島萌生キャスターが23年1月に取材した時、海外からの難民人材が「企業がイノベーションを生む起爆剤になる」と話していました。

このNPOはこれまでに400人近くを支援し、23人が採用につながりました。就労のチャンスをより多くの人に広げていきたいとしています。
【2023年7月4日放送】