“縮小移転”地方百貨店の生き残り

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全国の百貨店の数はピーク時の1999年には311店でしたが、2022年には185店に減りました。特に苦戦しているのが地方の百貨店で、最近でも北海道や青森県などで閉店が相次いでいます。

そうした中、180年続く山梨県唯一の百貨店「岡島」は、店舗を縮小し移転して残す戦略に打ってでました。

自社ビルからテナントに 売り場は4分の1に縮小

百貨店「岡島」は2023年3月、甲府市街地のシンボルだった自社ビルから、近くの商業ビルの3つのフロアにテナントとして移転。新しい店舗でオープンしました。売り場は4分の1に縮小しました。

訪れた買い物客は「山梨を代表するデパートだなと思った」、「誰にあげても喜ばれるものを買いに来られたらいい」などと話しました。

にぎわう新店舗の店内
以前の自社ビル

「のれんを継続」 新時代の百貨店を模索

縮小移転を決めた雨宮潔社長は、大手百貨店で働いた手腕を買われ、5年前に社長に就任しました。

郊外の大型店やネット通販との競合といった厳しい状況の中、縮小移転は、まちに百貨店という存在を残していくための選択でした。

雨宮潔社長

百貨店 雨宮潔 社長
「のれんを継続して、甲府のまちの“ともし火”を絶対に消さない。必要最小限の面積であれば、新しい時代の百貨店像がつくれる」

新店舗は売り場面積をコンパクトにしたことで、光熱費などの固定費を削減。百貨店ならではの「何でもそろう」店から、売れ筋に絞る商品展開に変え、売り上げは以前の店舗の6割程度を目指すとしています。

週替わりの売り場も 「行けば発見がある店に」

また新店舗は、小さくなった売り場を有効に使うため、商品の種類を自由に変えられるエリアを各フロアに用意しました。

このエリアでは、県内の有名店の商品なども含めテーマを変えたフェアを週替わりで行って、新鮮さを保っていきたいとしています。

このエリアで最初に行うフェアの呼び物が、山梨県西桂町で150年以上続く傘づくりの老舗がつくった傘です。

新店舗の開店2週間前、雨宮社長はこの老舗を訪れました。県産のシルクを使った生地や、持ち手に印伝(鹿の革に漆で模様をつけた地元の伝統的工芸品)を使った傘を見て、「絶対(百貨店の来店客に)喜んでもらえる」と話しました。

地元の傘づくりの老舗を訪れ、品を吟味する雨宮社長

百貨店 雨宮社長
「旬のブランドや、あるいは地元の方と作り上げた新しい商品を提案することで、“行けば何か新しい発見がある”。十分、百貨店の存在意義につながると思う」

この百貨店はまだ黒字経営ですが、黒字を出せる今だからこそ縮小移転を決めたそうです。特に地方では、百貨店はまちのシンボルになっていて、形を変えても残ることは地元にとっても大きな決断と見られます。

水族館や劇場、市役所も…各地で模索

全国250の百貨店を回ったという「デパート愛好家」で、デパートに関連した著書もある、放送作家の寺坂直毅さんによると、最近は水族館や大衆演劇の劇場、さらに市役所と併設する百貨店もあるなど、各地で生き残りをかけた模索が続いているということです。
(甲府局 飯田章彦)
【2023年3月29日放送】
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