養豚の課題 AIで解決

国内の豚肉の消費量は、長期的には右肩上がりで増えています。一方、養豚に携わる人の高齢化や人手不足が課題になっていて、長時間で厳しい労働になりがちなことが要因とされています。

こうした労働条件をAI=人工知能の力で改善しようという取り組みが始まっています。

重労働の体重測定 AIで負担軽減

5000頭ほどのブタを飼育する神奈川県厚木市の養豚場「臼井農産」では、スマホを使ったブタの体重測定が日課になっています。

スマホで豚の大きさを計測すると…
15秒ほどで体重を表示。精度は98%

ブタは生まれてから半年ほどで出荷されます。出荷する時の体重の目安は決まっていて、重すぎても軽すぎても価格が下がることがあるそうです。

通常の方法では、毎日のように、体重100キロほどに育ったブタを1頭1頭体重計に乗せます。しかしブタは神経質な動物で、嫌がったり暴れたりして重労働だといいます。

そこでこの養豚場は、熊本県のメーカー「コーンテック」が開発した体重測定のシステムを試験的に導入しました。まずスマホのカメラをブタに向け、スマホが出す光を使って大きさを計測します。このデータはインターネット上のクラウドに送られます。

するとクラウドに蓄積された数多くのブタのデータから、AIが似た体型のブタのデータを探し体重を割り出します。

1頭当たり約15秒で計測できて、精度は約98%だということです。

厚木市の養豚場 臼井欽一 社長
「(体重測定は)非常に負担になっている。なるべくその手間をかけない、かからない状態でやっていければそれがいちばんいい」

システムを開発した熊本県のメーカー 吉角裕一朗 CEO
「畜産全体を持続可能な形に変えたいというのが、われわれのビジョン」

AIが発情を検知 繁殖効率アップ

大手食品会社の日本ハムも、養豚でAIを活用したシステムを開発しています。母ブタの発情を検知するシステムです。

通常、ブタの繁殖のためには、母ブタが発情しているかどうかを熟練の作業員が長時間観察して見極めます。

開発されたシステムでは、作業員の代わりにカメラが24時間、母ブタを撮影します。ブタが立ったり座ったり姿勢を変える行動をとると、発情期特有の動きになります。

立ったり座ったり姿勢を変えると、発情期特有の動きになる

こうした母ブタの動きをAIが解析し、赤は「すぐに交配可能」、青は「発情なし」、黄色は「人の目で確認が必要」といった具合に表示します。

昼夜を問わず観察できるうえ、人による判断のぶれもないため、繁殖の効率が上がったそうです。実証実験では人が観察する時間を8割減らせたといいます。

大手食品会社 中央研究所 リーダー 助川慎さん
「豚肉の生産を向上させていったり、産業の振興にもつながると考えている」

最近ではほかに、ブタの出す声で病気を検知するシステムなどもあるそうです。養豚を巡る技術開発には、国も自給率の向上や食料安全保障の観点から、一部の研究に対して費用を支援するなど後押ししています。
【2023年2月27日放送】

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