安い!早い!徳島発・木材流通革命

世界的な木材の供給不足「ウッドショック」で国産材の需要が高まる中、地元の山の木を安く早く供給したいと、林業県・徳島で取り組みが始まっています。相場より最大で4割安く、その時々に必要な木材を10日ほどで届ける“流通革命”とは?

徳島県産材が最大4割安 地元商社が新たな仕組みづくり

徳島市内にことしオープンしたホームセンター。大工さんなどプロが買いに来るというこの店は、扱っている木材の多くが地元・徳島産です。

価格は相場よりも最大4割ほど安いということです。来店客の一人は「広告を見て安かったんで」と話し、別の客は「ほかのホームセンターと比べたらだいぶ安い」と話しました。

安さを実現する仕組みをつくったのは、徳島で69年続く木材商社の3代目、岡元修平さんです。輸入材の仕入れが困難になる中、豊富な地元の木に目をつけました。

岡元修平社長

木材商社 岡元修平 社長
「徳島って“林業県”じゃないですか。徳島で作ったものを発信するのが、いちばん効率がいい」

革命を起こした「オンデマンド」システムとは

これまで林業者は需要に関係なく、天候や人手などの条件がそろった時にまとめて木を伐採していました。その後、市場や問屋などを経て店に並ぶのが一般的でした。

時間やコストがかかるうえ、必ずしも店側のニーズを満たしていなかったといいます。

岡元さんが取り入れたのは、これまで木材業界にはなかった、いわば「オンデマンド」のシステムです。

まず流通の起点をニーズに応じた店からの注文に改めました。店が注文を出すと、岡元さんの商社は、すぐ製材所に伝えます。

製材所は林業者に注文を伝え、林業者は条件がそろえばその日のうちに必要な木を山から下ろします。

木が製材所まで届くと、国内に数台という大型の機械で乾燥します。乾燥期間はこれまで3か月かかっていましたが3日に短縮されたといいます。

3日で木を乾燥させる大型機械

伐採から最短でも100日はかかるとされた時間が大幅に短縮され、10日ほどで店頭に届きます。中間の業者などを介さないことでコストも抑えられました。

ホームセンター 西村久 社長
「品質のいいものが安くなり、職人さんにも喜ばれる」

関西・関東の大規模商圏を視野に

岡元さんは、長引く林業の不振で廃業の危機にあった製材所の事業を、地元の林業会社と共同で受け継ぎ、設備を一新しました。

2023年春には初めての新卒者を2人採用するなど、さらなる事業の拡大を目指しています。

来春に初の新卒採用となる2人

木材商社 岡元社長
「徳島県はどうしても農林水産(業)を頑張らないと、(県外の)“外貨”を稼ぐ方法がたくさんあるわけじゃない。最終的には、地場のお客様プラス、大規模商圏である関西、関東に向けて出荷できるような品質にまでもっていく」

日本の林業は長らく輸入材に押されるなどして不振が続いていました。岡元さんは徳島県産の木材の販路をさらに拡大していくことで、疲弊した地元の林業の再生につなげたいと話しています。
(徳島局 ディレクター 中村栄太)
【2022年12月16日放送】

あわせて読みたい