ネットいじめ “見えにくい子どもの悩み” アプリでサポート

夏休み明けの時期は子どもの悩みが増える傾向にあります。

なかでも多いのが「ネット上のいじめ」で2021年度は1万8870件に上り、5年で倍増しています。周囲の大人たちから見えにくい悩みを抱えた子どもを支えようと、アプリを使った対策が広がりをみせています。

「2万語」通じて子どものSNS見守る

SNSの利用状況などを可視化するアプリ

東京都内にあるIT企業「エースチャイルド」が開発したのは、親子向けのアプリです。子どもがどのようなSNSを何時間利用しているかなどを可視化することができます。親子でネットの使い方のルールを一緒に考えてほしいとつくられました。

機能の1つが、子どもどうしのやり取りの中に「ムカついた」「うざい」などの悪口や、ひぼう中傷する言葉があると、その言葉だけを抽出して、保護者にアラートを伝える仕組みです。

会話の中身すべてを伝えないことで、子どものプライバシーを守りながらリスクを把握しようというもので、保護者も子どもも十分に納得したうえで始めるそうです。

この機能で検出する単語は約2万語。「市価としようよ」など大人には分かりにくい隠語や略語などの言葉もあります。

例えば「米白」という単語は、「粕(かす)」という漢字を分解したもので相手を侮辱する意味で使われることがあるそうです。

保護者に心配をかけたくないとネットいじめを隠す子どももいて、気づくのに遅れるといった事態を減らしたいということです。

またこのアプリは、いじめにつながる言葉だけでなく、援助交際の相手を待つことを意味する「神待ち」といった犯罪に巻き込まれる危険のある言葉も検出し、閉ざされた環境になりがちなネット上のやりとりを可視化します。

開発した企業は、可視化されたデータなどを親子で共有し、身を守るために何が必要か話し合ってほしいとしています。

アプリを開発したIT企業 西谷雅史 代表取締役
「保護者が(SNSに)詳しくないので、何をしているか聞いてもよく分からない。子どもたち任せになるのではなく大人の見守りが必要になってくる」

匿名でSOS受信 悩みを早期にキャッチ

匿名性を高めることで、子どもたちみずからSOSを発信してもらおうというアプリもあります。

このアプリは教育委員会や学校単位で導入。児童や生徒にもアプリを使ってもらい、いじめの被害や目撃情報などを匿名で報告してもらうことができます。現在、1000校を超える学校が導入しています。

アプリを開発した会社「スタンドバイ」 谷山大三郎 代表取締役
「子供の悩みをとにかく早く受け止めたい。いちばんは相談のしやすさだと思う」

このアプリを導入した千葉県柏市の教育委員会では、アプリを通じていじめの報告を受けています。子どもの名前は分からないものの、学校名と学年は分かる仕組みになっていて、報告が来ると学校と連携して解決に動きます。

2021年度にこのアプリで受けた相談は101件で、電話での相談の約3倍に上りました。

アプリを導入した柏市教育委員会

当初はいじめ対策として取り入れましたが、この数年は両親の不仲や、親からの暴言といった家庭の悩みも増えているということです。コロナ禍で家にこもりがちになったことが要因ではないかとみています。

家庭の悩みも寄せられている

柏市教育委員会 児童生徒課 石井剛範さん
「直接声に出して伝えなければいけないというハードルの高さ(に比べると)チャット機能のやり取りは、特に今の子どもたちには有効な手だての一つではないか」

いま学校ではタブレット端末など教育のツールとしてハードの整備が進んでいますが、その分ネット上の危険に子どもがさらされる可能性も高まっています。ハード面の整備だけではなく、子どもをこうしたリスクからどう守るのかなど、ケアに力を入れていく必要があると思います。
(経済番組 ディレクター 籾木佑介)
【2022年9月14日放送】