資生堂 魚谷雅彦社長に聞く コロナ禍を乗り切る“原点回帰”戦略

化粧品大手の資生堂は2022年、創業150年を迎えました。外国人観光客の間でも人気のブランドの一つですが、新型コロナの影響で20年度は100億円を超える赤字となりました。そこでいま「原点」に立ち返って回復を急いでいます。

スキンケア商品に特化

東京・銀座にある資生堂の旗艦店。主力は「高価格帯のスキンケア商品」で、化粧水や乳液など1本1万円を超えるものがずらりと並びます。

肌そのものを美しくしたいという、いつの時代も変わらないニーズを取り込むことに集中して、業績回復につなげるねらいです。

22年5月には福岡県久留米市に専用の新工場も建設。経営計画には「スキンケア商品で世界一を目指す」と掲げています。

こうした戦略を主導しているのが、8年前に就任した魚谷雅彦社長です。

魚谷雅彦社長
「われわれの原点って何だろう、言い方を変えれば強みって何だろう、何を本当に強みとしたら生き残っていけるのか、真剣に考えた」

「アフターコロナに成長するためのステップ」

明治5年に創業した会社にとって、高級スキンケア商品は化粧品メーカーとしての原点でした。

一方で昭和30年代に入ると、シャンプーなど手ごろな価格の日用品事業にも参入。身近なブランドというイメージも浸透させてきました。

しかし新型コロナで事業環境が一変。

業績が悪化する中、21年に多額の広告費がかかる日用品事業を売却。スキンケア商品に特化したブランドへ転換を図ろうとしています。

魚谷社長
「すごく付加価値の高い高級・中級化粧品、これがもともと化粧品のスタート。ここをしっかりと守り今まで以上に強くすることが、アフターコロナになった時に成長していくためのステップだと」

原点回帰のカギを握るのは「社員たちの力」

ブランドの原点回帰を成功させるために魚谷社長がカギになると考えているのが「社員たちの力」です。みずから現場を回って社員と交流し、意欲を高めてもらおうとしています。

さらに経営層には権限を委譲し、スキンケア商品に特化する戦略を世界各地で展開させようとしています。

魚谷社長
「今から10年20年30年、次の150年がたった時に、世界の市場で存在感のある会社にしっかりとする。その基礎をつくるのが、いまの私のCEOとしての使命だと」

日用品事業の売却は思い切った判断ですが、コロナ後も見据えて、世界でたたかうために事業の絞り込みが必要だったと言えます。それをやりきるために、社員との双方向のコミュニケーションで会社が目指す方向性を共有することが大事だと魚谷社長は強調していました。リーダーが現場に出て行って距離感を縮めなければならない、それがリーダーの役目だと話していたことが印象的でした。

(経済部 デスク 布施谷博人、記者 茂木里美)
【2022年6月21日放送】