電力需給ひっ迫を乗り切るために 小売事業者の知恵

厳しい暑さの夏が近づいていますが、この夏も電力需給のひっ迫が予想されています。そこで家庭に節電を促し、電力を使う時間をピークからずらしてもらおうと、電力の小売り会社が知恵を絞っています。

ポイントサービスで節電にモチベーションを

関東地方を中心に約300万世帯に電力を販売している大手ガス会社「東京ガス」は、7月から「節電チャンスタイム」というサービスを本格的に導入します。

チャンスタイムは電力需給のひっ迫が予想される日に設定されます。利用者は節電をして、チャンスタイムの時間帯の電力使用量を直前数日間の平均より減らせば、その分ポイントをもらえるという仕組みです。

1ポイント1円相当の価値をつけて積極的に節電をしてもらうねらいです。

大手ガス会社 リビング戦略部 大内捷さん
「節電はやっても成功したのかどうか分からない、実感が湧かないというところを、1人でも多くのお客様にポジティブに参加いただけるよう工夫を凝らしていきたい」

時間帯のシフトで電気料金を安く

利用者に電力を使う時間帯を変えてもらうことで、ひっ迫を避けようというサービスもあります。

福岡市に住む薗田徹弥さん、啓子さん夫妻のスマートフォンには、契約している地元の電力の小売り会社からその日の電気の「価格表」が届きます。料金は30分ごとに変わり、取材した日は昼ごろの時間帯が安く設定されていました。

薗田さんの家では安い時間に電気を使うよう生活スタイルが変わったといいます。啓子さんは「昼のこの時間に電気代がすごく安くなるので夕食の準備をしたいと思う」と話し、準備を始めました。

徹弥さんは「数字で把握することができるので、非常に便利」と話します。

このサービスを提供している会社「アークエルテクノロジーズ」は、時間帯による発電量の変化に目を付けました。 

太陽光発電は天気のよい日中に多く発電します。そして需給に余裕がある時には、会社は安く電力を調達できます。

こうした時間帯の電気料金を安くすることで、家庭で電気を使うタイミングを電力がひっ迫する時間帯からシフトしてもらおうと考えています。

電力小売り会社 宮脇良二CEO
「全体としては再生可能エネルギーは足りないけれど、出力の傾向によっては余らせてしまうことがある。これをうまく使う方法として(人の)動き方を変えていかなければいけない」

電力需給がひっ迫する時間帯は、小売事業者が買い付ける電力の調達価格も上がり、採算をとるのが難しくなります。太陽光がたくさん発電して需給にゆとりのある時間帯にシフトしてもらうことは、経営面にプラスになることに加え、火力発電の負荷が下がって二酸化炭素の排出削減にもつながっていく可能性もあります。
(経済部 記者 五十嵐圭祐、福岡局 ディレクター 中村宝子)
【2022年6月13日放送】