小麦や大豆など穀物価格が高騰 コメ産地・新潟にも変化

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響などで、世界的に穀物価格が高騰しています。日本のコメ産地では作り手にも買い手にも変化が起きています。

国産の飼料用米にニーズ

コメどころ・新潟で今、需要が高まっているのが「飼料用米」です。鶏や豚などを育てる新潟県の畜産会社では2021年から、餌として地元のコメ農家が転作で作っている飼料用米を使い始めました。

22年はさらに飼料用米の量を増やし、21年より2割ほど多い約1700トンを使おうと考えています。

背景にあるのは、餌に使う海外産の穀物の高騰です。この畜産会社では3年前に比べて1.8倍近くに値上がりし、今後もその傾向が続くとみています。

畜産会社 本間友生社長
「飼料というのは養豚養鶏に関しても(会社支出の)半数を占めるコストの部分なので、相場が上昇していく現実だけ受け止めて、ただ何もしないという状況にはできない」

飼料用米への転作はこれまで国や自治体などが農家に促してきました。しかし、地元の需要が少なく遠くに運ぶとコストがかかるため、生産をためらう農家も多かったといいます。

それが穀物の高騰で、地元の畜産業者からも飼料用米を求める動きが出てきました。地産地消につながっています。

コメ農家とパン販売店がタッグ 小麦の作付け拡大

転作作物には飼料用米のほかに大豆小麦もありますが、やはり外国産は値上がりしています。そこで栽培を増やす農家もいます。

新潟市のコメ農家、斎藤隆美さんは、コメの需要が減る中、22年に小麦への転作を20ヘクタール以上大幅に拡大します。

コメ農家 斎藤隆美さん
「2~3年で1俵(60キロ当たり)3000円は下落している。これからいろんなことに挑戦していかないと、農業経営そのものが厳しい」

転作の拡大を決断した背景には、地元のパン販売店とのタッグがありました。このパン販売店は新潟県産の小麦を使ったパンを店頭に並べています。海外産の小麦が高騰する中、地元産の小麦の割合を増やしていきたいと考えています。

パン販売店 山崎英治社長
「地元でしっかりとある程度製造できるような(小麦の)量を確保できればいいなと思っている」

「国内に穀物の供給基盤を」

専門家は、穀物価格の高騰で需要が変化するのに合わせて、コメの産地も対応していく必要があると指摘します。

新潟大学農学部 伊藤亮司 助教
「主食用米ではないコメ、あるいは麦・大豆に、少しでも転換していくのはとても大事。短期的にはウクライナ情勢とか、中長期的に見れば気候変動、国内にきちんとした供給基盤を持っておくというのは、国民の命と健康を守るためにも非常に大事な政策課題ではないか」

世界的な穀物価格の高騰をきっかけに、国産の食料に目を向けることも改めて大事だと感じます。
(新潟局 記者 米田亘)
【2022年6月1日放送】