中国 新型インフラで経済低迷の打開なるか

中国では、新型コロナウイルスの感染拡大で上海で外出制限が続くなど、「ゼロコロナ政策」の影響で生産や消費が大幅に落ち込んでいます。こうした中で、中国政府は従来の大規模な建設事業とは違う「新型インフラ」への投資で景気回復を目指しています。

テーマパーク? 実は新型インフラ

中国内陸部・貴州省の山あいに、突如現れたヨーロッパ風の街並み。敷地面積は100万平方メートル。チェコのプラハをイメージしたという建物が並び、テーマパークのようです。

実はここ、大量のデータを保管する「データセンター」で、建物の内部には無数のサーバーが並んでいます。通信機器大手のファーフェイが整備を進める一大プロジェクトで、2021年に一部がオープンしました。内部を案内した担当者は「ファーウェイのデータセンターとしては世界最大で、100万台のサーバーが設置可能」と話します。

ここでは約900人の雇用を生み出しているといいます。ヨーロッパ風の街並みは、ここで働く人たちの環境をよくするためだと会社は説明しています。サーバーを冷却するには大量の水が必要で、敷地内には大きな“滝”もあります。

政府が大規模投資

こうしたデータセンターは中国政府が投資する「新型インフラ」の一つです。政府の後押しを受けて、経済発展が遅れてきた西部や内陸部で建設が進んでいます。

政府は2022年、新型インフラへの投資と従来型のインフラへの投資を合わせ日本円で最大70兆円規模を使うことを目指しています。

中でも、高速大容量の「5G」や「AI」なども含め、新型インフラにはデジタルという新たな成長の呼び水の役割が期待されています。

ファーウェイ クラウドマーケティング部 董理斌 部長
「データセンターへの投資はさまざまな産業を進化させる。すぐには変化が分からないかもしれないが、数年後には巨大な変化をもたらすはずだ」

次世代型の公共投資に力点

中国ではこれまで、工業団地の開発や道路や地下鉄の整備など、大規模な土木工事や建設事業に力が注がれてきました。

その一つ、2013年に取材した甘粛省蘭州市では、丘陵地を削った広さ170平方キロメートルの土地に100万人が生活する巨大な市街地が建設され、現場では土ぼこりが上がっていました。

しかし大規模な事業を行っても、社会のニーズに対してつくりすぎてしまったり、投資に対して経済効果が見合わない事例も目立つようになったりしてきました。

そこで今では、データセンターや5G、EV=電気自動車の充電施設など、次世代型の公共投資に力を注ぐようになってきています。

効率的な投資かどうかは今後も問われますが、新たなタイプの景気対策で経済を押し上げることができるか注目されます。
(中国総局 記者 伊賀亮人、解説委員 神子田章博)
【2022年5月12日放送】