試着を「アバター」で 服選び・服づくりを便利に

皆さんは服を選ぶ時に試着をしますか?試着せずにネット通販で買った結果、結局返品したという人もいるかもしれません。自分が試着するのではなくネット上の分身「アバター」を使うことで、服選びをもっと便利にできないかという取り組みが進んでいます。

似合っている? アバターで確認

スーツやパーカーなどさまざまな服を着てランウェイを歩く、布施谷キャスターのアバター。

このアバターを作ったのは、40台の小型カメラを備えた装置です。装置の中に人が入り全身を撮影すると、わずか20秒でアバターが完成します。

このサービスは大手広告代理店の博報堂とIT企業「VRC」が共同で開発しています。アパレル企業のネット通販サイトと連携することで、利用者が自分のアバターを使って試着できるようにします。

アバターは前後左右、見たい方向から確認できます。一度に6種類のコーディネートを見比べることもできます。

大手広告代理店 開発リーダー 尾崎徳行さん
「オンライン上でしっかりスタイリングが確認できればいいのでは。まず興味を持って試着をしてもらって、その先に購買につなげていける」


試作品2000着がゴミに・・・ デジタル化で課題解決を

アバターは服づくりの現場も変えようとしています。大手通信会社ソフトバンクと繊維専門商社の「MNインターファッション」は4月、あるアプリを発表しました。

アプリを開くと表示されるのは、マネキンのアバターです。身長のほか、肩幅や股下、ウエストなどの体型を細かく設定できます。服を着た時のサイズ感やイメージどおりの仕上がりになっているかどうかを、実際の試着さながらに確かめることができます。

デジタル化を進める背景には、アパレル業界が長年抱えてきた課題の解決につなげたいという思いがありました。

従来、新しい服ができるまでには、時間をかけて何度も試作品を作り、着心地やデザインをチェックする必要がありました。この繊維専門商社の場合、デザインのサンプルを年間2000着分作り、廃棄してきたといいます。

そこで試作品をデジタル化して廃棄を大幅に減らせば、環境に優しく服作りの効率アップにもつながると考えたのです。

繊維専門商社 企画開発部長 米﨑尊路さん
「かなり速いスピードでサンプルを作ることだったり商品の精度を上げることができたのはデジタルの強みだし、メリットがかなり大きくなる」

メタバースの世界で服データ販売も?

「アバター」の活用で、ネット通販の返品を減らすことや大量生産・大量廃棄の仕組みを見直すことが期待されます。

また将来的には、ネット上の仮想空間「メタバース」の中で、アバターが着る服のデジタルデータを販売するビジネスにつながるのではないかという可能性も見いだしているそうです。
(経済部 記者 佐野裕美江)
【2022年4月25日放送】