中古車価格 新車より高値も!?

半導体不足などで自動車メーカーの減産が相次ぐ中、中古車市場で想定しなかった事態が起きています。いったい何が?

取り引き価格1.5倍の人気車種も

山梨県で2つの中古車販売店「エムライン」を経営する村松功州喬(むらまつ・こうすけ)さんは今、これまでに経験したことのない事態に直面しています。中古車を仕入れる際、人気車種の価格が急上昇しているのです。

村松さんが仕入れに利用しているのは、全国の中古車の販売業者が登録するオークションサイトです。

例えば、新車の価格が約430万円の人気車種は、これまでは約1~2割安い360万円程度で仕入れができたといいます。それが今では約430~460万円と、新車の価格を上回るケースも出ています。

中には取り引き価格が約1.5倍に上昇した車もあり、仕入れが難しくなっています。

中古車販売店 村松功州喬社長
「人気がある車が新車価格に近い、下手をすると新車価格を超えているような状況。仕入れ自体でも。こういうことは過去にない」

新車減産で中古に需要 供給は足りず

背景にあるのが、需給バランスの急激な変化です。半導体不足の影響で新車が減産され、中には注文してから2年半納期を待たなければならない車もあります。新車がなかなか買えないことから、中古車を求める人が増えているのです。

一方、新車の買い換えが進まなければ中古車の供給量は増えていきません。

2022年1月の中古車の登録台数は24万5000台余りと、2000年以降で最も少なくなっています。中古車の需要が増えているのに供給が足りていないのです。

「都市部に競り負ける」 地方店が苦悩

特に、人気の車種は資金力がある都市部の店が高値で競り落としてしまうため、山梨県にある村松さんの店では仕入れができず、経営が厳しくなっているといいます。

村松社長
「地方と東京のような大都会では全然お客様の数が違うので、オークションで競り負けてしまったり。本当に地方は厳しい状況が続いている」

無理をして高値で仕入れても買い手がつかないと悩んだ村松さんは、創業当時の原点に立ち返り、付き合いのある企業や個人から直接買い取ることに力を入れています。

そして、自分の工場で整備しコストを抑えて販売。購入してくれた客には今後の車検の費用を割り引くなどのサービスも取り入れています。

村松社長
「今、非常に厳しい状況にいるが、販売した車に関しても生涯お付き合いができるように頑張っている。この難局を何とか乗り越えたいと思う」

ロシアへの輸出は滞るも…

中古車を巡るこうした動きは全国的な広がりを見せていて、地域の販売店への打撃は小さくありません。

一方、ウクライナ情勢の影響で、中古車の主な輸出先だったロシアへの輸出は滞っています。しかし専門家は、価格への影響は限定的だと見ています。

東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「ロシアへの輸出の影響は限定的。それ以上に新車の減産の影響は続くとみられ、今年は高値の傾向が続くのでは」と話しています。

(甲府局 記者 飯田章彦)
【2022年4月15日放送】