原油高 発想の転換で乗りきれ

さまざまな分野に押し寄せる物価高騰の波。石油が原料のプラスチック用品を作るメーカーは、逆境を発想の転換で乗りきろうと模索しています。

原料価格 1年で1.5倍

三重県松阪市に工場を持つプラスチック用品メーカー「岩崎工業」は、食品の保存容器やごみ箱など主に暮らしに密着した製品を作っています。

しかし原油の高騰に直面し、原料の価格はこの1年で1.5倍に上昇しました。利益が3割減り、取引先に納入価格の引き上げを打診していますが交渉は簡単には進んでいません。

岩﨑能久社長
「昨今の原材料の状況を見ると、今般の値上げを無しに切り抜けていくのは大変厳しい」

利益の高い製品に力 「今までにない」注射器を開発中

原油高を乗りきるために、この会社がいま力を入れているのが、高い利益が見込める製品の開発です。

そのひとつが針を使わない注射器。ガスを使って薬を高圧で発射することで薬を体内に投与できます。痛みを感じなくて済むため、子ども用などにニーズがあると見込んでいます。

プラスチックの高い成型技術を生かして大学と共同開発しています。

岩﨑社長
「ものづくりのあり方、もしくは斬新さ、新たな目線でお客様に提案していける。今までにないものを技術を駆使して提案していきたい」

値上げ受け入れられやすい? 海外販売を強化

さらに会社は、利益を確保するため販売戦略も見直そうとしています。

アメリカの小売店に卸している「洗濯かご」は、4月以降に納入する分について価格の改定を打診しました。厳しい状況を説明し、4.8ドルから7ドルへ46%もの引き上げを受け入れてもらいました。

日本よりはるかに物価上昇が激しい海外では値上げが受け入れられやすいとみて、現在10%ほどの海外販売の比率を高めていきたいと考えています。

岩﨑社長
「もっと抵抗があるのかなと思ったが、予想外に(原料高などの)事情をくんでくれた。いずれにしてもちょっと難しい状況だが、輸出は積極的にいきたい」

原材料の高騰はどの企業にとっても痛手ですが、この会社は「ほかにはない製品をどうつくるか」「どこで売るか」、いわば原点に立ち返ったということだと思います。物価高騰を乗り越える1つのカギになるのかもしれません。
【2022年4月6日放送】