三菱電機 不正の根源を断ち切れるか

三菱電機では2021年夏以降、製品の出荷前の検査などで不正が47件も見つかりました。病院などの非常用発電設備に設計ミスがあるにもかかわらず出荷したという、安全をないがしろにした例もありました。

会社では過去に不正がないか繰り返し点検が行われていましたが、問題を見つけることができませんでした。

第三者の調査委員会が不正の根源の1つとして指摘したのは「閉鎖的な組織風土」でした。その組織の改革にあたるのが、不正があった事業の本部長も一時務め、21年7月トップに就いた漆間啓社長です。改革は進んでいるのか、問いました。

相次ぐ不正発覚で「危急存亡のとき」

22年3月7日に開かれた経営幹部による会議。不正のあと新たにつくられました。この日は「品質改革推進本部」からの報告が議題で、担当する本部長が漆間社長らに「課題を吸い上げて品質サポート部隊による支援を開始している」と話しました。

会社では週に2度、改革の進ちょく状況を確認し、問題の本質を洗い出しています。

漆間啓社長

「(グループ全体で)点検したにもかかわらず残念ながら今回の事案が発生してしまった。自分たちの風土の問題として本当に捉えて変えようとしてきたか。当社は危急存亡のときだと認識しているので、ここでやっぱり変わらないといけない」

「大ごとになる」として報告せず “ものが言えない”組織風土

品質に関する検査不正などは6つの工場で発覚し、中には30年以上続いていた事例もありました。

不正があった工場では品質管理部門の担当者が「大ごとになる」と管理職に報告しませんでした。さらに管理職が不正を把握しながらも本社に報告しなかったケースも発覚。こうした例が各地の工場で明るみに出ました。

不正の根源にあると調査委員会が指摘したのが“ものが言えない”組織風土です。不正があった一部の職場への聞き取り調査では「怖くてものが言いにくい」「『口を挟むな』などと、どなられる」などと、上司に委縮する部下の姿が浮き彫りになりました。

漆間社長

「縦割りというか、双方向の意思疎通に欠けたところがあった。コミュニケーションが不足していたことがキーだと思うので、本当に変えないといけない。直属の部下の課題や疑問をしっかり受け止めようと。受け止めることによって一緒に解決していく方向にしていこう」

社員の意見で組織の風土改革を

どうすれば組織風土を変えられるのか。取り組みの1つが、全国から社員を公募して21年10月に立ち上げた社長直轄のプロジェクトです。上司と部下の信頼関係など、二度と不正を生まないための具体的な仕組みづくりを任されています。

取材した日、社員の1人は「『できない』と言えない風土とか、失敗を恐れてしまうというか」と発言。ほかの社員は「頑張った結果が何につながっていて、どうなっているのか分からない。『よかったよ』『悪かったよ』と言ってあげて、次につなげる」と意見を述べていました。

漆間社長は、社員の意見で組織を変えることが根本的な風土改革につながるのではないかと考えています。

漆間社長

「やはりいちばんのエンジンは従業員ですから、改革案をそれぞれみんなで実行し、やっていくことで大きな輪が出来て、その輪で変えていくことがいちばんの近道ではないか。本当にこの改革を着実に実行することが私に課せられた責務だと思っている」

企業による不正はほかにも、日野自動車でエンジンの排出ガスなどについて不正なデータを国に提出していた問題が22年3月に明らかになりました。三菱電機と同様、課題のひとつに組織風土の問題があげられており、組織は“風通し”などの基本を常に見つめ直すことが求められています。

(経済部 記者 早川沙希)

【2022年3月8日放送】