高知発 “まるごとデータ化”で農業維新!?

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農業にデジタル技術を活用する「スマート農業」が進んでいます。野菜などのハウス栽培が盛んな高知県では、農家や大学などが収集したデータを活用して新しい農業に挑戦しています。

“最適な栽培環境”を 農家も大学もデータ収集

高知県安芸市で特産のナスを栽培しているハウスでは、農家が設置した4つのセンサーで温度や二酸化炭素の濃度、日射量などを計測しています。

データは農家がスマートフォンで確認し栽培管理に役立てています。ナス農家の1人は「五感で『(ハウス内が)冷えているな』と分かっていたのが、温度が何度まで下がっているかというのがいち早く分かる」と話します。

高知大学でも、農業に関するデータの収集が進められています。

特殊な測定器を使い、湿度や日射量などによって光合成の速度がどう変化するかを調査。光合成に最適な環境をAIで分析し、農作業の手間を減らしながら収穫を増やそうとしています。

県内のハウス栽培データを一元化

高知県は、県内各地で収集されたハウス栽培のデータを一元化して蓄積する独自のシステムを2021年4月に整備しました。集めた情報を地域の農家どうしで共有できるようにする計画です。

県農業振興部 岡林俊宏さん

「高知は農家がもともとレベルが高い県で、優良なデータが県の中にいっぱいある。それぞれの農家の手元に(データが)眠っているので、それを県で集約させ、より最適な管理をみんなで目指す」

共有データを「産地の強み」に

県は22年1月、取り組みに賛同した農家を対象にデータの共有を始めました。

ナスを栽培している農家のグループでは、ベテランから若手まで11人が栽培データを比較し意見を交わしました。

例えば、午前中のハウス内の温度を比較すると、若手農家のハウスでは温度が急に上がっていたのに対し、ベテラン農家のハウスは温度の上昇がなだらかになっていました。

若手農家の1人は「いきなり日が照った瞬間(温度が)ばんと上がってしまった」といい、ベテラン農家に「じわじわ上げるために何か変えましたか?」と質問。ベテラン農家は、ナスに負荷をかけないよう温度管理に工夫をしていることが分かりました。

グループでは今後も勉強会を重ねて、全体の栽培技術を底上げしたいと考えています。

ナス農家 宮崎武士さん

「(データを)比較的できたのはおもしろかった。産地全体でデータを共有して収量が上がれば自分たちの所得というところにすぐ反映できるので、議論ができる土台というのは、この産地の強み」

農家への取り組み浸透が課題

高知県はこの取り組みの参加農家を22年度に今の3倍の4000軒に増やしたいとしています。ただ、栽培データを共有することに後ろ向きな農家も少なくないということで、産地の活性化につながる意義をどう理解してもらうかが課題だということです。

(高知局 記者 林知宏)

【2022年2月24日放送】