盆栽の匠が切り開く新時代 海外で評価高まるBONSAI

アジアやヨーロッパの富裕層を中心に、日本の盆栽の人気が世界で高まっています。2021年の輸出額は3億7000万円を突破。これを追い風に盆栽の魅力をさらに広めようとしている第一人者の挑戦に迫りました。

コロナ禍 盆栽に“癒やし”求める

長野県で盆栽作家として活動する鈴木伸二さん(59)は、高校卒業後に盆栽の世界に入り、33歳の若さで内閣総理大臣賞を受賞。盆栽界の第一人者として知られています。

世界各地に顧客を抱え、作品は数十万円から中には億単位で売り買いされるものもあると言います。

鈴木伸二さん

「最近はアジア、中国、ヨーロッパ、アメリカ、南米でも買っていただいている」

盆栽を求める外国人は、コロナ禍を機に一段と増えているそうです。感染拡大で自宅にいる時間が増えたため、人々が盆栽に癒やしを求めているというのです。

取材した日、鈴木さんはイタリア人のバイヤーとオンラインで商談していました。

イタリア人バイヤー

「コロナは本当に悪いことだったが、盆栽の人気は世界中で上がった。世界中の人々が、彼ら(盆栽作家)を映画スターのように扱っている」

ブランドとコラボ 若い世代へもアピール

鈴木さんは、盆栽の需要を拡大するための取り組みにも力を入れています。イタリアの宝飾ブランド「ブルガリ」が運営するレストランなどとコラボして、若い世代にも盆栽に触れる機会を持ってもらおうとしています。

鈴木さん

「盆栽を初めて見る方もいたが感動してくれた。魅力があるから、それを若い人に伝えたい」

数百年の「命のリレー」 世界へ発信

鈴木さんは、22年2月の作品展に向けて新たな盆栽作りに取りかかっています。扱うのは、樹齢600年という「真柏(しんぱく)」です。

悠久の時を超えてみなぎる樹木の生命力。コロナ禍の今だからこそ伝えたいメッセージがあると鈴木さんは話します。

鈴木さん

「盆栽は1日水をかけなければ言葉なくして枯れてしまうものなので、400年から500年、水をかけてくれた人がいる。その命のリレーによって今がある。そういうことを、盆栽を通して世界中に伝わればいいなと思って頑張ってやっている」

鈴木さんのアトリエでは、フランス人と韓国人の2人の弟子が修行しています。これまでにおよそ20人の外国人の弟子が独立して母国で活躍しているそうです。日本伝統の盆栽に海外の人たちの感性も加わって新たな作品が生まれ、市場のさらなる拡大につながっていくかもしれません。

(経済番組 ディレクター 有賀菜央)

【2022年1月14日放送】