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【詳細】トランプ氏党大会に姿見せる 挙党態勢で選挙戦へ

選挙演説中に銃撃されてけがをしたトランプ前大統領は、共和党の全国党大会で大統領候補に正式に指名され、事件後、初めて公の場で支持者の前に姿をみせました。ともに指名された39歳の副大統領候補とともに挙党態勢で今後の選挙戦に臨むものとみられます。

一方、バイデン大統領は野党・共和党の一部から自身がトランプ前大統領への攻撃を強めてきたことがトランプ氏の銃撃事件を引き起こしたと批判されていることについて「そうしたことばの使い方はしていない」などと述べて反論しました。

※トランプ氏などをめぐる日本時間の16日の動きについて、記事を随時更新してお伝えします。

《速報中》


トランプ氏 共和党 全国党大会の会場に姿見せる

11月のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・共和党は15日に開幕した全国党大会でトランプ前大統領を党の大統領候補に、バンス上院議員を副大統領候補に正式に指名しました。

指名を受けたトランプ氏は会場に姿をみせ、支持者から大きな歓声で迎えられました。

2日前の銃撃事件の後、公の場で支持者の前に姿を見せたのはこれが初めてです。

トランプ氏はけがをした右耳をガーゼのようなもので覆っていましたが、時折、笑顔をみせながら手を振って歓声にこたえていました。

トランプ氏の演説はありませんでしたが、およそ1時間にわたって会場で副大統領候補に指名されたバンス氏らと言葉を交わしたり関係者の演説を聴いたりしていました。

アメリカのメディアは、「トランプ氏はいつもと違い、控えめに見えた」などと、トランプ氏の態度に変化がみられたと伝えています。

銃撃事件のあとトランプ氏は、メディアのインタビューで党大会最終日の18日に予定している演説の内容を書き換えていると明らかにし、国民を団結させるものになるとしています。

また、当初の予定が変更され、16日にはトランプ氏と最後まで共和党の大統領候補の指名を争ったヘイリー元国連大使が演説を行うと伝えられています。

トランプ氏は、党大会を通じて暴力に屈しない強い指導者像をアピールするとともに、結束や団結を前面に出して挙党態勢で今後の選挙戦に臨むものとみられます。

会場にいた支持者の反応

銃撃事件後、初めて公のイベントで支持者の前に姿を見せたトランプ氏について、会場にいた支持者の女性は「とても興奮した。彼は殺されていたかもしれないのに、ここに強い姿でいる。涙が出そうになった」と話していました。

また別の女性は「トランプ氏がこの国をよくしてくれるはずだ。この国の未来に希望を持てる。またアメリカはよくなると思う」と話していました。

マスク氏 “トランプ氏支援団体に毎月約71億円献金か”

これはアメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルが15日に報じたものです。

それによりますと、関係者の話として実業家のイーロン・マスク氏がトランプ前大統領を支援する団体に毎月4500万ドル、日本円でおよそ71億円を献金する予定だということです。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、献金について全容を把握するのは難しいとしながらも、今回の大統領選挙をめぐってこれまでわかっている中でトランプ氏を支援する団体への最大の献金額は5000万ドルだとして、毎月4500万ドル献金するとしているマスク氏の献金額の多さを指摘しています。

マスク氏は、トランプ氏が13日、東部ペンシルベニア州での演説中に銃撃を受け、右の耳にけがをした際、旧ツイッターのXで「私はトランプ大統領を全面的に支持し、彼の1日も早い回復を願っている」と投稿し、続けて「アメリカにこれほどタフな候補者がいたのはセオドア・ルーズベルト元大統領が最後だった」と投稿していました。

マスク氏をめぐっては、ことし3月には「念のためはっきりさせておくが、私はアメリカ大統領のいずれの候補者にも献金を行わない」と投稿していましたが、今回、巨額の献金を報じられたマスク氏の大統領選挙への対応が注目されます。

共和党 下院議長「トランプ氏が大統領候補に選出]

共和党のジョンソン下院議長は、「トランプ氏が党大会における票の過半数を獲得し共和党の大統領候補に選出されたと発表します」と述べました。

党大会の参加者は

11月のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・共和党の全国党大会でトランプ前大統領が党の大統領候補に指名されたことについて会場を訪れていたテキサス州の19歳の女性は「とても幸せな気分でトランプ氏が偉大なことを成し遂げるのを見るのが待ちきれない。銃撃事件は胸が張り裂ける思いで、トランプ氏と彼の家族、そしてアメリカのすべての人のために暴力がなくなることを祈っている」と話していました。

ペンシルベニア州の代議員の男性は「この暴力行為がこの国の目を本当に開かせたと思う。トランプ氏は民主主義を脅かす存在ではない。彼が銃撃されたときに立ち上がって『ファイト、ファイト』と叫んだという事実は、この国の人々のために戦っているということであり、彼ほどこの国のリーダーにふさわしい人物はいない」と話していました。

また、アーカンソー州の女性は「トランプ氏が指名されてとても興奮しているし、私たちが待ち望んでいたことだ。彼は間違いなく選挙に勝つことができると思う。彼はとても思いやりのある人で、常に人々のことを気にかけている」と話していました。

共和党 政策綱領を採択

アメリカ大統領選挙に向け、野党・共和党は全国党大会の初日にあたる15日、事実上の公約となる政策綱領を採択しました。

綱領には「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の考えが色濃く反映され、移民対策の強化が盛り込まれたほか、通商政策では、外国から輸入される製品に一律で関税をかけるなどとしています。また、外交政策では、同盟国に防衛費を負担する責任を果たさせることなどで関係を強化すると明記しています。

共和党 政策綱領1《経済政策》

共和党は政策綱領で、経済政策についてインフレを抑え込み製造業の雇用を取り戻す方針を掲げています。

この中では、「産業、製造業、インフラ、労働者のための党という原点に立ち戻らなければならない」としています。

また、アメリカ第1主義のもと規制の撤廃や減税、技術革新を推進することで、すべてのアメリカ人に経済的な繁栄と機会を取り戻すとしています。

具体的には、トランプ氏が在任時に実施した法人税率の引き下げや所得税の最高税率の引き下げなど、減税策について期限を撤廃し、恒久的な制度にするとしています。

また、接客業に携わる何百万人もの人々が受け取っているチップへの課税を撤廃するなど、さらなる減税を目指すとしています。さらに住宅ローン金利を引き下げ、税制優遇措置などを通じて住宅の購入を促すとしています。

一方、高齢者に対しては、公的医療保険や社会保障は一切削減しないと明言しています。

このほか、成長産業への支援も打ち出しています。

AI=人工知能の安全性に関する新たな基準を設けることなどを盛り込んだバイデン氏の大統領令は技術革新の妨げになるとして廃止するほか、暗号資産などを国民が自らの手で管理し自由に取り引きできるようにするとしています。

共和党 政策綱領2《通商政策》

通商政策について「アメリカ第1主義のもと不公平な外国との競争からアメリカの労働者や農家、産業を守るための強固な計画を提示する」としています。

具体的にはサービスをのぞいたアメリカのモノの貿易赤字が年間1兆ドル以上に拡大していると指摘し、外国から輸入される製品に一律で関税をかけることで是正するとしています。

また「トランプ互恵通商法」とされる法案を成立させることも盛り込まれています。

この法案についてトランプ氏はこれまで貿易の相手国がアメリカの製品に高い関税を課している場合、その国からの輸入品については関税を同率に引き上げるものだと説明しています。

トランプ氏は外国の生産者への関税を引き上げればその分、アメリカの労働者や家庭、企業の税金を引き下げることが出来るとしています。また中国に対しては、貿易上の優遇措置などを講じる「最恵国待遇」を撤回し、重要な商品の輸入を段階的に縮小して依存度を引き下げるとしています。

さらに、中国によるアメリカの不動産や企業の買収を阻止すること、アメリカの自動車産業を守るため中国製の自動車の輸入を抑えることなど、強硬な姿勢を前面に打ち出しています。

共和党 政策綱領3《エネルギー・環境政策》

エネルギー政策について「物価を急速に引き下げて製造業大国としての地位を確立するためには、アメリカのエネルギーを解き放たなくてはならないことは明白だ」と主張しています。

トランプ氏が演説で頻繁に用いる「掘って掘りまくれ」という言葉を引用し、化石燃料の生産を拡大してエネルギー価格を大きく引き下げる方針を明確に打ち出しています。

また生産や採掘に関わる連邦政府の許認可の手続きを合理化し、石油・天然ガス・石炭への規制を撤廃するとしています。

このほか、気候変動を最重要課題と位置付けてきたバイデン政権の政策に終止符を打ち、EV=電気自動車の普及策を廃止することなどを通じてアメリカの自動車産業をよみがえらせると強調しています。

共和党 政策綱領4《外交・安全保障政策》

外交や安全保障をめぐって共和党は「バイデン政権の弱腰な外交政策によって、アメリカの安全性は低下し、世界中の物笑いの種になった」と厳しく批判しています。

そして「力によって平和を取り戻す」として、▽軍の再建や同盟関係の強化、▽中国との対抗、▽テロ対策などに取り組むと主張しています。またロシアによるウクライナへの侵攻を念頭に、「同盟国が共通の防衛に投資する義務を確実に果たすことや、ヨーロッパに平和を取り戻すことで、同盟関係を強化していく」としています。

中東をめぐっては、イスラエルを支持すると明言した上で和平を模索するとしています。インド太平洋地域については「強く、主権のある独立した国家を支持し、平和と通商を通じて繁栄する」と言及しています。

そして「世界で最も近代的で強力な軍事力を確保する」として対空防衛のミサイルシステム「アイアンドーム」の配備など最先端の研究や技術に投資するとともに、重要なインフラや産業基盤をサイバー攻撃から守ると強調しています。

こうしたアメリカの安全保障に関わる重要な装備や部品についてはアメリカ国内で生産することが不可欠だとして、防衛産業の復興を掲げています。

共和党 政策綱領5《社会・多様性》

共和党の政策綱領では、保守派とリベラル派の間で価値観が対立する「文化戦争」と呼ばれる問題についても踏み込んでいます。

人種やジェンダーなどについて、子供たちに不適切な内容を押しつけている学校があるとして、こうした学校については、連邦政府からの補助金を削減するとしています。

また、「ジェンダーをめぐる左派の愚かな行為を終わらせる」として、性転換手術を受けた男性を念頭に「男性を女性のスポーツから締め出す」ことや、性転換手術に対する公的な補助を禁止することなどを打ち出しています。

共和党 政策綱領6《人工妊娠中絶》

人工妊娠中絶について「妊娠後期の中絶に反対する」としています。

その上で「妊婦のケアや避妊手段の確保、不妊治療として体外受精を進める母親と、その政策を支援する」としています。

さらに中絶の規制は各州での判断に委ねられているとしています。2016年の政策綱領で共和党は「生まれてくる子どもには侵害されることのない生きる権利がある」として人工妊娠中絶に反対する立場を明記し、中絶を支援する団体に公的な資金援助を行うことに反対していました。

今回は中絶反対の強固な姿勢を転じて党内の穏健派に歩み寄りを見せる形になっています。

共和党 政策綱領7《移民政策》

共和党は政策綱領で移民政策について「国境を封鎖し、移民の侵入を阻止する」としてより厳しい措置をとることを柱のひとつに位置づけています。

このなかで、トランプ氏が大統領時代に建設を進めたメキシコ国境沿いの壁について「見事に機能している」と評価し「残りの壁もさほど費用をかけず、素早く、効果的に完成させることができる」と必要性に言及しています。

そして「移民の侵入を食い止めるために必要なあらゆる資源を投入する」として、国境の監視と安全管理のために最新の技術を導入することや、海外に駐留している兵士数千人を国境沿いに展開することなどを挙げています。

一方、すでにアメリカ国内にいる不法滞在者については「アメリカ史上最大となる国外追放計画を開始する」と打ち出しています。

民主党の政策によって「犯罪組織や不法滞在の外国人が国内をうろつきまわることを許してきた」と強く非難したうえで共和党は「不法滞在の外国人を帰国させ、法律に違反した者を排除することを約束する」として、違いを際立たせようとする姿勢がうかがえます。

その上で、受け入れについては「国の利益になる移民を優先させ、アメリカの社会と経済に積極的に貢献し、公共の資源をむだにしないようにする」と方針を示し、アメリカの労働者を第一に考えていくと強調しています。

トランプ氏 大統領に返り咲くと 日本にどんな影響

トランプ氏が大統領に返り咲いた場合、日本にはどんな影響があるのでしょうか。

まずは、共和党の政策綱領の1つの柱になっている追加関税です。

綱領ではサービスをのぞいたアメリカのモノの貿易赤字が年間1兆ドル以上に拡大していると指摘し、外国から輸入される製品に一律で関税をかけることで是正するとしています。

特に貿易赤字の額が大きい中国やメキシコなどに対して強硬な姿勢に出るとみられていますが、一律で追加関税が導入されれば日本も主力の自動車産業などを中心にアメリカへの輸出に影響が出ることになります。

副大統領候補に選ばれたJ・D・バンス氏もトランプ氏が掲げる「アメリカ第一主義」を強く訴えています。

バンス氏は自動車や鉄鋼産業などが盛んなオハイオ州選出で、製造業の労働者や中間層を保護する姿勢を打ち出しているだけに保護主義的な政策が強まる可能性もあります。エネルギー政策も大きく変化することが見込まれています。

トランプ氏は石油・天然ガス・石炭に関する規制を撤廃してエネルギー価格を引き下げる方針を明確に打ち出しています。

エネルギーを輸入に頼る日本にとって世界最大の生産国の1つで強固な同盟関係にあるアメリカの石油や天然ガスが増産されればエネルギーの安定調達やガソリン価格などの低下につながる可能性があります。

外国為替市場での円相場への影響も指摘されています。

共和党の政策綱領ではトランプ氏が在任時に実施した減税策の期限を撤廃し、恒久化することや、貿易の相手国に追加関税を導入することが盛り込まれています。

大規模な減税による財政の悪化や追加関税によるインフレ率の上昇はアメリカの長期金利を上昇させ日米の金利差の拡大を通じて円安ドル高要因になるという見方もあります。

一方でトランプ氏は、円安ドル高について“アメリカにとって大惨事”で国内の製造業が国際競争力を失い打撃を受けるなどとしていて、為替相場への影響は見通すことが難しいとも指摘されています。

元高官に聞く トランプ氏の外交政策は?

トランプ氏が大統領に返り咲いた場合の外交政策についてトランプ政権の元高官は軍事力を急速に増強する中国を念頭に、同盟国である日本が防衛力をさらに強化することに期待を示しました。

NHKがインタビューしたスティーブ・イェイツ氏は、トランプ政権の元高官で、現在はトランプ氏の側近らが集まる保守系シンクタンク、AFPI=アメリカ第一政策研究所で、対中国政策を担当し、トランプ氏が当選した場合、政権入りする可能性も指摘されている人物です。

イェイツ氏は、トランプ氏が掲げるアメリカ第一主義について「多くの人が孤立主義だと言うが大きな誤りだ。アメリカ第一主義は、グローバルな機関に過度に依存することに強く反対する」と述べた上で二国間関係や同盟関係、友好関係が国際的課題に対処していく上での舞台となると指摘しました。

また、中国が台湾に対する軍事的圧力を強めていることについて「もしも中国が平和的でない手段をとるのであれば、それは台湾の利益に対する攻撃であるだけでなく、アメリカや日本、フィリピンの利益に対する攻撃となる」と述べました。

そのうえで「現在、アメリカなど多くの国が、台湾で製造される最先端半導体に大きく依存している。トランプ氏が明確にしてきたのは、戦術的には曖昧さを残しつつ、戦略的には平和を望み、緊張を引き下げ、現状を維持することを望むということだ」と述べ、トランプ氏は台湾海峡の緊張緩和を望むだろうと指摘しました。

また、中国を念頭に置いた経済安全保障政策の方向性については「中国が軍やクレーゾーンの民間船舶を使ってフィリピンや台湾、日本を抑圧している限り、資本や技術、機会が中国に渡ることを許してはならない」とし「西半球において、アメリカと日本、そして友好国が資源の採掘や製造に目を向け、もっと協力し合えば、われわれはより信頼できる輸送手段を手に入れ、経済的により良い機会を得ることになるだろう」と述べ、サプライチェーンの構築で日米がさらに協力していくべきだという考えを示しました。

そのうえで、日米の同盟関係については「日本がより独立した能力を持てば持つほど、日米同盟は強固になり、そのことはインド太平洋地域における平和と繁栄に向けた道をより強固なものとし、中国共産党の悪質な影響力を封じ込めることを可能にする」と述べ、日本が防衛力をさらに強化することに期待を示しました。

元高官に聞く トランプ氏の通商政策は?

トランプ氏が大統領に返り咲いた場合のアメリカの通商政策について、トランプ政権の元高官は、国内の労働者を守る観点から再び関税に重きを置くようになるとともに、貿易赤字削減に向けて、日本を含む同盟国に対しても厳しい姿勢で臨むことになるという見方を示しました。

トランプ政権とバイデン政権の双方でUSTR=アメリカ通商代表部の交渉官を務めたデビッド・ボーリング氏がNHKのインタビューに応じました。

ボーリング氏はトランプ氏が大統領に返り咲いた場合の政策について「トランプ氏にとって通商政策が非常に重要で、最優先事項だ。1期目の時は外交よりも優先順位が高かった」と指摘しました。

そのうえで「トランプ氏の通商政策にはいくつか特徴がある。まず第一に関税だ。トランプ氏は関税が大好きで、関税はトランプ氏の遺伝子の一部のようなものだ。第二に貿易赤字だ。中国やドイツ、日本などとの貿易赤字が大嫌いで、そうした国々がアメリカを利用していることの証しだと考えている。第三にトランプ氏は労働者の保護を非常に重視しているということだ」と指摘しました。

そして「もしトランプ政権の2期目が実現すれば、関税が再び通商政策の中心に据えられるはずだ。バイデン政権は中国に厳しい姿勢で臨んだがトランプ政権はさらに厳しく臨み、中国に対する関税を引き上げるだろう。トランプ氏は真剣に、アメリカ経済を中国経済から切り離したいと考えている」と分析しました。

そして、通商面で日本がどのような影響を受けるかについてボーリング氏は「トランプ氏が最初にまず考えるのは、同盟国かどうかではなく、この国との貿易が赤字かどうかだ。バイデン政権は日本の鉄鋼に課していた関税を撤廃したが、トランプ政権は再び日本の鉄鋼に関税を課すかもしれない」と指摘したうえで、日本から輸入する自動車にも関税を課そうとする可能性があるという見方を示しました。

一方でボーリング氏は「日本はトランプ氏への対処をうまくやってきた。当時の安倍総理大臣はトランプ氏の日本に対する見方に良い影響を与えた。日本はアメリカへの最大の直接投資を行っている国で、トランプ氏はそれが気に入っている」と述べました。

岸田首相「民主主義に対する暴力の挑戦 決して許されない」

岸田総理大臣は自民党の役員会で「トランプ前大統領の暗殺未遂事件は、民主主義に対する暴力の挑戦であり決して許されない。トランプ氏へのお見舞いとともに、こうしたメッセージを事件後に速やかに発信した」と述べました。

林官房長官「大統領選の行方を引き続き注視」

林官房長官は午前の記者会見で「民主主義に挑戦する暴力はいかなる社会でも許容されず、きぜんと立ち向かわなければならない。この事件で亡くなられた方にお悔やみを申し上げるとともに負傷された方の一刻も早い回復をお祈りしている」と述べました。

その上で、警備体制の強化など政府の対応について問われ「今回の事件を受け、各都道府県警察に対し改めて、街頭演説場所の周辺の警戒や防弾資機材の活用などの徹底を指示した。警察と主催者が十分に連携を図り、国民の理解と協力を得ながら、安全の確保に向けた取り組みを進めていく」と述べました。

一方、トランプ前大統領が共和党の大統領候補に正式に指名されたことなどに関して「日米同盟はわが国の外交・安全保障政策の基軸であり、アメリカの内政動向については推移やありうべき影響も含め、常日頃から高い関心を持っている。大統領選の行方を引き続き注視していく」と述べました。

バイデン大統領 “銃撃事件を誘発”批判に反論

アメリカのバイデン大統領は野党・共和党の一部から自身がトランプ前大統領への攻撃を強めてきたことがトランプ氏の銃撃事件を引き起こしたと批判されていることについて「そうしたことばの使い方はしていない」などと述べて反論しました。

アメリカのバイデン大統領は15日、アメリカ・NBCニュースのレスター・ホルト氏のインタビューに応じました。バイデン氏は、野党・共和党の一部から自身がトランプ前大統領を脅威だと繰り返し発言してきたことがトランプ氏の銃撃事件を誘発したと批判されています。

これについてバイデン氏は「民主主義への脅威についてどのように語ればよいのか。誰かをあおりたてるかもしれないから何も言わないのか。私はそうしたことばの使い方はしていない」と反論しました。

また、バイデン大統領が先週、支持者に対しトランプ氏を「標的にするときだ」と述べたことについて問われると「標的ということばを使ったのは間違いだった。彼の政策や彼が討論会で数々のうそをついたことを焦点にすべきだという意図だった」と釈明しました。そのうえでトランプ氏こそが暴力的なことばを使っていると非難した上で、アメリカ国民のためになる議論をしていくべきだと訴えました。

バイデン政権 トランプ氏銃撃事件で近く第三者による調査へ

トランプ前大統領が13日に選挙集会で演説中に銃撃された事件では、これまでに容疑者の男が集会会場近くの建物の屋根の上から発砲したことがわかっています。このため、なぜ男がトランプ氏の姿が見通せるような場所に立ち入ることができたのか、警備態勢に批判の声が上がっています。

こうした中、国土安全保障省のマヨルカス長官は15日、バイデン大統領の命令でシークレット・サービスなどの当局の警備態勢について、近く第三者による独立した調査を始めると発表しました。

マヨルカス長官は「国の指導者たちを守るという失敗の許されない任務を、もっとも効果的に遂行するために緊急かつ長期的に必要な是正措置を見いだす」と説明していて、調査結果は国民に公表するとしています。

マヨルカス長官はまた、大統領選挙に無所属での立候補を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏と共和党の副大統領候補に指名された上院議員のJ・D・バンス氏が新たにシークレット・サービスの警護の対象となると明らかにしました。

容疑者宅の向かいに住む女性「少しおとなしそうだった」

アメリカ東部ペンシルベニア州のベセルパークにあるトーマス・クルックス容疑者の自宅の向かいに住む女性は、クルックス容疑者がヘッドホンをして散歩をする姿をよく見かけたということで「外のポーチに座っていると坂の上からおりてきてうちの前を通り過ぎるのを見た。少しおとなしそうだったがいい子そうで、ほほえんで手を振っていた」と話していました。

また、この女性の17歳の息子は、以前、クルックス容疑者が高校生だった時、通学のバスが一緒だったということで「彼とはもっと深い会話をしようとしたこともあるが、いつもあいさつ程度で終わってしまった」と話していました。

バイデン氏“バンス氏はトランプ氏のクローン”

アメリカのトランプ前大統領が副大統領候補として上院議員のJ・D・バンス氏を選んだことを受け、バイデン氏の陣営は15日、声明を出しました。

この中で、バイデン陣営は2021年1月6日に当時のペンス副大統領がトランプ氏から、前年の大統領選挙の結果を覆し、みずからを勝者として宣言するよう要請されたものの、拒否したとされることを踏まえ「副大統領候補にバンス氏が選ばれたのは、ペンス氏が1月6日に行わなかったことをするからだ」と指摘しました。

そのうえで「バンス氏は2020年の選挙結果を否定し、政治暴力の弁解をしている」として、トランプ氏の支持者らが連邦議会に乱入した事件を擁護していると強く批判しました。

また、バイデン大統領は記者団からバンス氏が選ばれたことについて質問され「彼はトランプ氏のクローンだ。何の違いもない」と応じました。

トランプ氏 過半数獲得 共和党の大統領候補に正式指名

アメリカの野党・共和党の全国党大会は15日、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで4日間の日程で始まりました。

トランプ前大統領は党大会が開幕する2日前の13日、東部ペンシルベニア州での演説中に銃撃を受け、右の耳にけがをしましたが、党大会に出席するため、すでに開催地に到着しています。

大会初日は、各州選出の代議員による指名投票が行われ、トランプ氏が過半数を獲得し、日本時間の16日朝、党の大統領候補に正式に指名されました。

トランプ氏は、党大会最終日の18日に指名受諾演説を行う予定で、党大会を通じて、暴力に屈しない姿勢を強調するとともに、秋の大統領選挙に向けて弾みをつけたい考えです。

副大統領候補に上院議員のJ・D・バンス氏

共和党の大統領候補の指名決定に先立ち、11月のアメリカ大統領選挙で返り咲きを目指すトランプ前大統領は15日、自身のSNSに、副大統領候補として上院議員のJ・D・バンス氏を選んだと発表し、その後党大会でトランプ氏とともに正式に指名されました。

バンス氏は中西部オハイオ州出身の39歳。2年前、2022年の中間選挙で、トランプ氏の全面支援を受けてオハイオ州選出の上院議員に初当選しました。

オハイオ州で育った自身の経験をもとに、製造業が衰退した地域に暮らす、白人労働者層の日常を描いた回顧録、“ヒルビリー・エレジーアメリカの繁栄から取り残された白人たち”を8年前に出版。ベストセラー作家となった異色の経歴を持ちます。

バンス氏は、かつてはトランプ氏を批判し、「反トランプ」と見られていたこともありますが、その後、SNSへの批判的な投稿をすべて削除し、トランプ氏支持に転じました。

「中間層の生活を守るにはトランプ氏が掲げる『アメリカ第一主義』が必要だ」と強く訴えていて、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援を継続することに反対しています。

トランプ氏の機密文書めぐる裁判 連邦地方裁判所が起訴を棄却

アメリカのトランプ前大統領が軍の情報など、最高機密を含む文書を不正にフロリダ州の自宅で保管していたとしてスパイ防止法違反の罪などに問われていた裁判で、アメリカのメディアは15日、フロリダ州の連邦地方裁判所が検察側の起訴を棄却したと伝えました。

メディアは、検察側は不服を申し立てるとみられるとしていますが、トランプ氏側にとって大きな勝利だとも伝えています。

経済同友会 新浪代表幹事 “政治的な分断さらに深まるのでは”

アメリカのトランプ前大統領が選挙集会の演説中に銃撃された事件について、経済同友会の新浪代表幹事は16日の記者会見で民主主義国家で起きてはならないことだと非難したうえで、アメリカで政治的な分断がさらに深まるのではないかという見方を示しました。

この中で新浪代表幹事は、トランプ前大統領が13日に選挙集会で演説中に銃撃されけがをした事件について「大きくは民主主義への挑戦で、こういうことは絶対あってはならないことが起こってしまったというのは分断の象徴だ。模範となるデモクラシーの国が大きく変質してきたと思う」と述べました。

そのうえで「分断はもともとあるが、貧富の差がむしろ民主党の中に出てくるなど、今までと逆転している。今回のことで共和党は団結を強くしたと思うし、根底のところでは民主党と共和党の分断がますます大きくなっていくと感じている」と述べ、アメリカ国内の政治的な分断がさらに深まるのではないかという見方を示しました。

米 現地メディア トランプ氏の様子は

アメリカの現地メディアは共和党の全国党大会の会場に姿を見せたトランプ前大統領の様子などがいつもとは違っていたと伝えています。

CNNテレビは「トランプ氏の顔には通常怒りや皮肉が表れているが、月曜日の夜の表情はいつもと違う感情を帯びていた。目には涙が浮かんでいるように見えた」と伝えたうえで「運が良く、頭を動かしたことで自分の人生は救われたと感じている表情だった」と分析しています。

また、有力紙ワシントン・ポストは「トランプ氏はいつもと違い控えめで、目に見えて情緒的だった」としたうえで「トランプ氏は座って会場を見回し、その瞬間をかみしめているようだった」と報じています。

さらに、党大会の初日に演説はせず支持者たちに手を振って謝意を示すにとどまった言動にかえって支持者らは驚いていたと伝えているほか、「トランプ氏はホワイトハウスへの復帰にこれまでにないほど近づいているように見える」と分析しています。

アメリカの新聞、USA TODAYは、共和党大会のほとんどの演説者が、トランプ氏の銃撃事件についてバイデン大統領を非難することはなかったと振り返り「これは前大統領の命を奪いかねなかった暴力のあとで国民的な団結を呼びかけ、過熱する党大会の雰囲気を和らげるというトランプ氏のチームの決定を反映したものだった」と報じています。
07/16 16:44
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