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◆気象・災害

松山 土砂崩れ住宅などに流れ込む 男女3人と連絡取れず捜索

12日早く松山市で松山城がある山の斜面が崩れて土砂崩れが発生し、複数の住宅やマンションに土砂が流れ込みました。土砂に巻き込まれた住宅に住んでいたとみられる男女3人と連絡が取れなくなっていて、消防と警察が捜索を続けていますが、水分を含んだ大量の土砂で捜索は難航しているということです。

山の斜面が崩れ落ちる 複数の住宅やマンションに土砂

松山市などによりますと12日午前4時前、松山市緑町で頂上に松山城がある山の斜面が幅50メートル、高さ100メートルにわたって崩れ落ち、ふもとにある複数の住宅やマンションに土砂が流れ込みました。

このうち、木造2階建ての住宅に住んでいたとみられる90代の男性と80代の女性、それに40代の男性の3人と連絡が取れなくなっているということで、消防や警察がおよそ170人態勢で捜索を続けています。

捜索活動は、現場の住宅に水分を含んだ大量の土砂が流れ込んでいるため難航しているということです。

消防や警察では夜も捜索を続けることにしていますが、現場は雨が再び強まると予想されていて、安全を確保しながら進めるとしています。

清水地区の1万3226世帯 2万2062人に「緊急安全確保」

土砂崩れを受けて松山市は、午前5時から、周辺の清水地区の1万3226世帯、2万2062人に「緊急安全確保」を出していて、少しでも安全な場所で命が助かる可能性の高い行動をとるよう呼びかけています。

松山市では、おとといの降り始めから12日午前8時までの雨量が平年の7月の1か月分に迫る213ミリとなっていました。

一方、土砂崩れが起きた斜面の一部では、今月から道路を補強する壁の復旧工事が行われ、雨水が地面にしみこまないようブルーシートをかける対応が取られていました。

松山市は土砂崩れと工事の関連について調査することにしています。

松山 清水小学校に32世帯57人避難(10:20時点)

松山市の清水小学校には午前10時20分時点で、32世帯57人が避難しています。

避難所となった体育館には、扇風機が設置されたり、水やパンなどの物資が用意されたりしています。

避難してきた現場近くで飲食店を営む60代の男性は「店のガラス戸が割れて泥水が流れ込み、店内は10センチほど泥がたまっていました。50年近く住んでいますが、こんなことは初めてで怖かったです」と話していました。

3か所の避難所に42世帯79人が避難

今回の土砂崩れを受けて、公民館など3か所の避難所に合わせて42世帯・79人が避難しています。

このうち、番町公民館では避難所で一夜を過ごす人も多いことから、市の職員が、簡易ベッドや毛布、それに弁当などを用意したりしていました。

現場に隣接するマンションから番町公民館に避難した60代の男性は「今夜は避難所で過ごして、さらに長引くなら知り合いの家でしばらく過ごすことになるかもしれません。早く家に帰りたいです」と話していました。

また、同じマンションから東雲公民館に避難した60代の男性は「26年間、あの地区で暮らしていますが初めてのことで、驚きと恐怖を感じています。いつになったら普通の生活に戻れるのかとても不安です」と話していました。

林官房長官「みずからの命守る行動を」

林官房長官は午後の記者会見で「7月10日以降、梅雨前線で大雨になっているところがあり、官邸危機管理センターに情報連絡室を設置して関係省庁による災害警戒会議を開催するなど、必要な態勢を確保している。引き続き被害状況の把握を進め、緊張感を持って災害応急対策にあたっていく」と述べました。

その上で「これまでの大雨で地盤が緩んでいるところがあり、通常よりも少ない雨で土砂災害の危険度が高まるおそれがある。避難情報や最新の気象情報に留意し、土砂災害や低い土地の浸水などに警戒するとともに、少しでも危険を感じればちゅうちょせず早めにみずからの命を守る行動をとってほしい」と呼びかけました。

松山大学 全キャンパスで休講

松山大学は、文京キャンパスと樋又キャンパスがある松山市の清水地区に緊急安全確保が出されたことなどを受けて、すべてのキャンパスで12日の授業を休講としました。

また大学によりますと、土砂崩れが発生した松山市緑町の周辺には146人の学生が住んでいて午後1時すぎの時点で、4人の学生が避難所に避難しているということですが、全員無事だということです。

このほか、大学では文京キャンパスの体育館を避難所として開放し、学生や地域の人を受け入れているということです。

専門家「高低差で土砂が落ちるエネルギー大きく」

松山市で発生した土砂崩れについて斜面災害に詳しい東京農工大学の石川芳治名誉教授はNHKのヘリコプターで撮影した映像をもとに分析しました。

石川名誉教授によりますと崩れた斜面は上に行くほど急になり、崩壊が始まったとみられる山頂付近の角度は37度と急な傾斜をしているということです。

映像から、今回の崖崩れは山頂付近で始まったとみられ「頂上から住宅地までの高低差がおよそ100メートルほどあるので、土砂が落ちる際のエネルギーも大きくなり破壊力が増したのではないか」と指摘しています。

また、山の頂上から住宅地までは谷の地形をしているため水が集まりやすかった可能性があるとしたうえで「崖崩れにしては水っぽく、土砂が遠くまで流れ下っている。崩れた土砂が谷を流れ下った際に集まった多くの水や木を巻き込んで住宅に押し寄せたと考えられる」としています。

また「松山市ではきょうにかけても雨が降っていたが、ピークはきのうの明け方だった。多くの雨が降ったタイミングで斜面の崩壊が起きるのが一般的で、過去に例がないことはないが、大雨から1日遅れて起きる土砂災害は珍しい」と述べました。

その上で「崩れた斜面の上側には風化した土砂が残っているように見える。今後、崩壊が拡大する可能性がある」として警戒するよう呼びかけていました。

専門家「岩盤表層の土が水とともに崩れ落ちたか」

松山市で起きた土砂崩れについて、愛媛大学防災情報研究センターの木下尚樹副センター長は「岩盤の表層にある土が、水とともに崩れ落ちたようにみえる。ふもとに向けて谷のような地形に沿って土砂崩れが起きている」と指摘しています。

そのうえで「松山市では2日間の雨量が200ミリを超えていて、その水が谷筋に集中したことが引き金になって崩れたと考えられる。現場では、擁壁やフェンスなどの対策が取られていたが、それでは防ぎきれない土砂崩れが起きてしまった。改めて危険な場所を洗い出し、対策を見直していくべきだ」と話しています。

山の頂上に複数の亀裂で工事

土砂崩れが起きた山の頂上にある松山城の天守の東側では今月から工事が行われていました。

松山市によりますと、去年7月の大雨で、緊急車両が通る道路を補強するために斜面に設置したコンクリート製の壁が傾きました。

さらに先月末からの大雨の影響で、壁の傾きが大きくなったほか、アスファルトの道路上に、およそ10メートルにわたる複数の亀裂が確認されたということです。

このため市では、業者に復旧工事を依頼し、今月2日から工事が始まっていましたが、10日からの雨の影響で中断していました。

その際、壁やアスファルトの撤去によってむき出しになった山肌から雨水がしみこんで斜面が崩れるのを防ぐため、工事現場にはブルーシートがかけられていたということです。

松山市では「工事が土砂崩れと関係しているかどうかは、現時点では不明で、今後、調査していく必要がある」と話しています。

松山市「当時は危険との情報なかった」

松山市が「緊急安全確保」を出したのが土砂崩れが起きたあとだったことについて、市は「土砂崩れが起きた当時は危険であるという情報はなく、当時の状況では避難情報を出していなかった」と説明しています。

12日午前4時前に松山市緑町で土砂崩れが起き、これを受けて市は午前5時に清水地区に「緊急安全確保」を出しました。

土砂崩れが起きた当時、松山市内には大雨注意報が発表されていましたが、大雨警報や土砂災害警戒情報は出ていませんでした。

一方で、市は11日午後5時から土砂災害のおそれがあるとして、市内の公民館や小学校など35か所に自主避難所を開設していました。

「緊急安全確保」が出されたのが土砂崩れが起きたあとだったことについて、松山市防災危機管理部は「避難の情報はさまざまな情報を収集して判断している。今回の大雨でも気象警報や土砂災害の危険がないかを確認していた。土砂崩れが起きた当時は危険であるという情報はなく、避難情報を出していなかった」と説明しています。

松山地方気象台「大雨警報の基準超える予想ではなかった」

気象庁によりますと、松山市では10日夜遅くから断続的に雨が降っていて、11日午前4時までの1時間には41ミリの激しい雨が降りました。

その後も断続的に発達した雨雲がかかり、今月10日の降り始めから12日午前4時までに降った雨の量は197.5ミリと、平年の7月1か月分の9割近くにのぼりました。

土砂災害が起きたとみられる12日午前4時前の時間帯には、松山市内に大雨注意報が発表されていましたが、大雨警報や土砂災害警戒情報は出ていませんでした。

この判断について松山地方気象台は「当時は、土砂災害の危険度の指標となる『土壌雨量指数』が大雨警報の基準を超える予想ではなかった」と説明しています。

土砂災害が起きたとみられる12日午前4時前の時間帯には、松山市内に大雨注意報が発表されていましたが、大雨警報や土砂災害警戒情報は出ておらず、午前4時半すぎに注意報が警報に切り替えられました。

この判断について松山地方気象台は「午前4時前の当時は、土砂災害の危険度の指標となる『土壌雨量指数』が大雨警報の基準を超える予想ではなかった」として大雨警報や土砂災害警戒情報を出す基準ではなかったと説明しています。

そして大雨注意報を警報にかえたタイミングについて気象台は「その後、雨が強まり警報の基準を超える予想になったため、切り替えた。土砂崩れの発生を受けて切り替えた訳ではない」と説明しています。

その上で警報が出ていない中で土砂災害が起きたことについては「判断について適切だったかどうか県などの関係機関と検討していきたい」と話しています。

NHKのヘリコプターの映像 マンションや住宅に土砂流入

午前8時ごろにNHKのヘリコプターが松山市の上空から撮影した映像です。

松山城がある山の頂上近くから山肌がえぐられるように崩れている様子が確認できます。

土砂は木をなぎ倒しながら斜面を流れ下ったとみられ、ふもとでは横幅数十メートルにわたって山肌が露出し、大量の茶色い土砂がマンションや住宅の中に流れ込んでいます。

住宅は少なくとも2棟で大きな屋根が押しつぶされ、1階部分は土砂や流されてきたとみられる樹木で覆われています。斜面からいまも水が流れ出ている様子もみえます。

その脇に立つマンションも4階くらいの高さまで土砂のあとがありベランダの柵が破損している状態で、6階ほどの高さに樹木が引っ掛かっている様子も確認できます。

周辺の住宅街の道路にも茶色い泥が流れ出て広い範囲に広がっていて、消防隊員とみられる人たちが活動している様子もみられます。

電線に倒れた木 道路には茶色い泥

午前6時すぎに松山市内で撮影された映像ではマンションや住宅が建ち並ぶ住宅街の裏手に見える斜面で茶色い山肌が見えています。

斜面の下にある電線には倒れた木が引っ掛かっている様子もみえます。

住宅街の道路には斜面から流れ出てきたとみられる茶色い泥が大量にたまっている様子が確認できます。

周辺には多くの消防車両やパトカーが集まっています。

現場近くに住む人「地響きのような音で目が覚めた」

土砂崩れがあった松山市の現場近くに住む人が午前5時すぎに撮影した映像です。

マンションや住宅が建ち並ぶ住宅街の道路に、倒れた木などが混じった茶色い泥が流れ込んでいます。車のタイヤの半分程度の高さまで泥がつかっています。

また、消防車両やパトカーが集まり、消防隊員などが現場の状況を確認している様子がわかります。

撮影した男性はいま自宅のマンションを離れ、市内の実家に避難しているということです。

男性は「午前4時ごろに『ゴゴゴ』と地響きのような音がして、目が覚め、ベランダに出たら裏手の山で土砂崩れが起きていました。午前5時ごろにも大きな音がして、外を見ると道路にまで土砂が流れ出していて、かなり恐怖を感じました」と話していました。
07/12 18:52
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