来年の春に卒業する高校生の就職内定率はことし10月時点で60%余りと前の年をわずかに上回りました。一方で、企業からの求人は大幅に減少していて、希望通りの就職先が見つからず進路の変更を余儀なくされた生徒も少なくないとみられています。
厚生労働省は、来年3月に卒業予定の高校生の就職活動の状況について全国のハローワークを通じて取りまとめました。
それによりますと、就職先が決まっている生徒の割合、就職内定率はことし10月末の時点で64.2%と前の年を0.2ポイント上回りました。
都道府県別に見ると、福井が最も高く83.3%、次いで山口が79.6%、富山が79.1%などとなっています。
低かったのは、沖縄が26.7%、北海道が45.9%、神奈川が47.1%などとなっています。
一方で、企業からの求人は10年ぶりに減少に転じ、およそ37万人と前の年より20.7%少なくなりました。
都道府県別で求人がどれくらい減ったかを見ると、最も大きかったのは山梨で28.4%の減少、次いで沖縄で27.6%、石川で26.9%などとなっています。
また、産業別で見ると、宿泊・飲食サービス業が45.9%の減少、次いで生活関連サービス・娯楽業が33.4%などとなっています。
地域や産業によって深刻な落ち込みとなっていて、希望通りの就職先が見つからず進路の変更を余儀なくされた生徒も少なくないとみられています。
厚生労働省は、「観光業などを中心に新型コロナウイルスの影響を強く受けて求人が大きく減っている。希望通りの就職ができるよう引き続き学校と連携して生徒への支援も進めていく」としています。
沖縄 観光業への就職目指す高校生は
観光が主要な産業となっている沖縄では特に深刻な影響が出ています。
観光客などの数は去年まで7年連続で過去最高を更新し、地域の経済を支えてきましたが、新型コロナウイルスの影響で今年度の上半期は前の年に比べて8割以上減っています。
打撃を受けている県内の観光業では例年行う高校生の採用を見送る動きが出ています。
観光業界への就職を目指す「リゾート観光科」がある沖縄県うるま市の県立具志川商業高校では、新型コロナウイルスの影響で企業からの求人が去年から3割ほど減りました。
高校にいったん求人票が届いても、その後、求人が減らされる例が少なくありません。
特にホテルや航空関連などの業種で求人が出ていなかったり取り下げられたりしています。
リゾート観光科3年の島袋若葉さんは、小さい頃から地元の旅行会社で添乗員になるのが夢でしたが、求人がなく、県外への就職を考えています。
7日、島袋さんはオンラインで県外の小売業の採用担当者から仕事内容や福利厚生などについて説明を受けていました。
島袋さんは「自分のせいではないのに急に夢がかなえられなくなって悲しかったですが、今は気持ちを切り替えて頑張ろうと思っています」と話していました。
具志川商業高校では、就職を希望している57人のうち現時点でおよそ20人の就職先が決まっていません。
例年、この時期に就職先が決まっていない生徒は数人ということで、学校はかつてない状況の中、対応に追われています。
7日は進路指導を担当する教諭などが採用活動を続けている企業へ電話をかけて、履歴書の締め切りや採用試験の日程を確認するなどしていました。
進路指導部で就職担当を務める上間里佐教諭は「自分の思い描いていた職種に就けない生徒が多く、厳しい場面に出くわしたときに離職してしまわないか心配しています。引き続きハローワークに出向くなどしてサポートをしてもらえるよう働きかけていきたい」と話していました。