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大学生の10月就職内定率 2015年以来70%下回る 新型コロナ影響

2020年11月17日

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来年春に卒業する予定の大学生の就職内定率は、10月の時点で69.8%となり、新型コロナウイルスの影響で去年の同じ時期より7ポイント低くなったことがわかりました。10月時点の内定率が70%を下回るのは2015年以来のことです。

厚生労働省と文部科学省は、来年春に卒業する予定の大学生の就職活動の状況について全国62の大学、合わせて4770人を抽出して調査しました。

それによりますと、就職内定率は10月1日現在で69.8%となり、新型コロナウイルスの影響で、去年の同じ時期より7ポイント低くなりました。

1996年の調査開始以降、10月のデータで比較すると前年からの減少幅は、リーマンショックの影響を受けた2009年の7.4ポイントにつぎ過去2番目に大きくなっています。

10月時点の就職内定率は2010年に57.6%と過去最低となりました。

その後、景気の回復や人手不足を背景に
▽2012年は63.1%
▽2014年は68.4%と改善傾向が続き
▽2018年は77%と過去最高となりました。

しかしことしは69.8%という結果に。70%を下回るのは2015年の66.5%以来のことです。

男女別で見ても、いずれも去年より低い結果に。

男子大学生68.8%(↓7.3ポイント)
女子大学生70.9%(↓6.7ポイント)

地域別では以下のようになりました。

「関東」 74.4% 「近畿」 71.5% 「中部」 67.9%
「九州」 64.4% 「北海道・東北 」64.2% 「中国・四国」 59.7%

また、短大生の内定率は27.1%と去年の同じ時期より13.5ポイント低下しました。

厚生労働省は「新型コロナウイルスの感染拡大による採用の中止や減少で内定を得ることができなかったり、就職活動が長期化したりする学生が出ていて、就職内定率の低下につながっている。大学などと連携し就職活動を続ける学生の支援を強化したい」としています。


【進路
見直しを考える学生も】

コロナ禍で就職活動にも影響が広がる中、今後の進路を見直さざるを得なくなっている学生もいます。

首都圏の大学に通う4年生の女子学生は、当初は以前から希望していた、建築や不動産業界、アクセサリーなど宝飾品を扱う業界を中心に就職活動をしていましたが、内定を得られず、秋以降は業界を広げて活動していると言います。

女子学生は「自分の好きなものに関わりたいと思って関心のある業界で探していましたが、新型コロナウイルスの影響か、選考基準が厳しくなっていると感じることもあり、夏休みが終わった9月ごろから焦りが出始めたので、自分の好きなことは二の次で何か自分ができそうなことを探そうと思っています」と話しています。

また、就職活動を続けていく中でほかの進路も考えるようになったと話し「関東での就職を希望していて、年内にどうにか就職先を決めたいと思っていますが、それでも決まらなかったら地元の東北に戻ってもう1年、フリーターか何かをしながら正社員での就職を目指そうかなとか、専門学校に通おうかなとか、いろいろな進路を考えるようになりました。採用人数の減少に関しては自分たちの努力ではどうしようもないですし、自分のやりたいことをできないのは悲しいです」と話していました。

【観光学部では20ポイント以上下回るところも

都内の玉川大学では、学生からの報告をもとに内定率をまとめていますが、観光業界や航空業界を目指す学生が多い観光学部では、10月時点で51.0%と去年同時期の78.8%を27ポイント余り下回りました。

大学のキャリアセンターでは、学生が大学に来る機会が減り、内定の報告自体が遅れている可能性もあるとしつつ、コロナ禍で厳しい状況にある業界を中心に、影響が大きくなっているとみています。

センターに寄せられる学生からの相談では、「航空関係のグランドスタッフ志望だが採用が中止になった」とか、「ホテル業界で結果が出ず、どう活動したらいいのか」といった不安の声が相次いでいるといいます。

キャリアセンターの大槻利行センター長は「ホテルや航空会社、旅行業界を志望する学生は、大学入学の段階から将来の夢をイメージし在学中も準備をしてきている。突然採用が止まり、気持ちの持って行き場がなく、どういう風に方向転換していいか分からないまま時間が過ぎてしまったのではないか」と話していました。

多くの授業がオンラインで行われる中、キャリアセンターを訪れる学生はほとんどいないということで、大学では、メールでエントリーシートを送ってもらって添削をしたり、求人のある企業と学生をマッチングさせようと、個別に採用情報を送ったりして支援を続けているということです。

大槻センター長は「サポートがあればうまくいく学生や、特別な支援が必要な学生を拾い切れていないのではないかという懸念がある。今まで対面だからできていた支援をどう補完できるのか、電話では相談しづらいという声もあるので、SNSなど学生にあった態勢を整えようと考えている。求人自体は業界を選ばなければあるので、励まし伴走しながら最後まで送り出していきたい」と話していました。

【識者「氷河期の過ち 繰り返さないよう」】

こうした状況について、大学生の就職活動に詳しい東京大学大学院教育学研究科の本田由紀教授は「7ポイントはかなり大きな減少で、ここ数年間の『売手市場』がぱっと消えてしまった印象だ。観光産業や航空産業、接客など対人サービスを伴う多くの業界で難しい状況が続いていると言われ、積極的な採用をしにくい情勢にあることを反映している。また緊急事態宣言で4月から6月の内定が増える時期に企業の採用活動が滞ったので、その時期に活動を本格化させた学生には大変厳しい状況になっている」と見ています。

そして「たまたま、ことし就職活動にあたってしまった学生たちがそれによって、一生苦しむことはないよう、これから数年かけて仕事を見つけてもらえるような環境を作っていくことが非常に重要だ。日本は1990年代の就職氷河期につらい若者を生み出してしまったが、採用の減少が大きな要因だったのに、若者の責任であるかのような対策が多かった。当時の過ちを繰り返さないよう企業にも学生にも力強い施策を講じていくことが必要だ」と指摘しています。

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