解決 疑問に答える“事件のミカタ1からわかる少年法改正(1) そもそも少年法って、なに

2023年5月24日司法 社会

去年4月、改正少年法が施行されました。

なんとなくはわかるけど、そもそも少年法ってなに?どんな法律なの?

司法担当の解説委員を務めた山形晶デスクに学生リポーターが1から聞きました。

少年法 その目的は

少年法って聞いたことはありますか?

山形
デスク
学生
 小野口 

うーんあんまり聞いたことないです。

学生生活を送ってきて少年法を身近に感じるというか、体験することは、あまりないと思うんですよね。

ないですね。

それはなぜかというと、少年法は世の中のすべての少年を対象にした法律ではなくて、犯罪行為をした少年が関係する法律だからなんです。

教えてくれるのは山形晶デスク
司法取材のスペシャリスト。社会部記者時代には裁判員制度が始まり、制度をめぐる課題を取材した。
司法・事件事故などを専門とする解説委員を務めた。

どういうことですか?

大人は、犯罪行為をしたら法律に従って、刑事裁判を受けるなどします。

少年法は犯罪行為をしたあとの手続きを、大人とは別の手続きを作って進めていく、そのための法律です。

なるほど。

「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ」の学生リポーター2人がオンラインで話を聞きました

少年とさっきから言っていますが、男の子だけではありません。

学生
 本間  

20歳未満全員ですね。

はい。そして、もう1つ対象となっているのが、犯罪行為はしてないけど、放っておいたら犯罪行為に走ってしまうおそれがあるというか…

法律用語では「ぐ犯」といいます。

ずっと家を出て帰って来なかったり、居場所がないまま街をさまよったり…。罪を犯してないけれど、心配だから、この少年法の手続きにのせて保護しましょうと。

ただ、犯罪をしたわけじゃないので刑罰は科されません。

「保護処分」という別の扱いになって、教育指導的なことをしていきます。

ぐ犯は誰が見分けるんですか?

まず警察などが補導します。

その後、家庭裁判所で「やっぱり保護した方が良いですね」と認定されると保護処分にうつっていきます。

だから警察なり裁判所なり、公的なところが「どうも心配だな」と思ったときに手続きにのせていきます。

 

大人は犯罪を犯したときに裁かれていくと思うんですけど…

未成年は犯罪をしたあとの手続きが違うのと、そもそも犯罪を犯していない人も更生を促す、結構手厚い処置がされているという認識で大丈夫ですか?

はい、大丈夫です。

あとちょっと気になったのが、この少年法の適用件数、実際どれくらいの人数がいるのかがピンと来なくて…結構多いんですか?

年間何千件はありますね。

結構多い。

戦後しばらくは犯罪が増えたけど社会が安定してきて、実は犯罪の件数は減ってきているんです。

それはやっぱり少年も同じで、傾向としてはずっと減る傾向にあるんです。

ただ、少年の犯罪って、ちょっと不可解な理解できないような…

大人からみると「何でこんなことするの」というのもあったりするので、それで目立つというのはあるかもしれませんね。

少年法 起源は

学生
  本間  

少年法がなぜ作られたのか気になるので、その目的とかについて教えていただきたいです。

日本だけでなくて、実は世界の色んな国でこういう考え方はあります。少年法は日本特有の制度ではないんですよね。

山形
デスク

世界共通なんですね。

少年法ができるまでの世界的な流れを複数の文献で調べてみました。ヨーロッパで産業革命が始まって、工業化が進み、農村から都市に多くの人が移住してきました。その結果、都市部が密集し貧困層ができて、荒れる子どもたちも出てきたということなんです。これが社会問題になったんですね。

社会問題ですか。

昔は犯罪というのはその人の性質、その人に原因がある、だから制裁を受ける、報いを受けるんだということで刑罰を与えるという考え方でした。

そうなんですね。

けど、そのくらいの時代になって、内部の原因だけじゃなくて外的な原因、周りの環境の影響というのもあるんじゃないかという考え方が出てきたんです。

だとすれば、子どもはまだ柔軟性がある、精神的に柔らかいので、変わっていける可能性がある。だったら環境を変えてあげたらすぐ立ち直れるんじゃないかという考え方なんです。

学生
小野口

あー、なるほど!

その方が本人のためにもなるし周りのためにもなるよね、ということで。

少年に関しては特別な手続きをつくっていこうというのはこの時代に生まれた考え方なんですね。

結構昔からあったんですね。

そうです。19世紀から20世紀にかわるところくらいかな、1899年にアメリカで少年裁判所というのが出来たんです。

これが少年に対する特別な司法手続きというのを具体化した形と言われています。

ここでキーワードを1つお示しします。

可塑性(かそせい)

どういうことですか?

ことばの意味だけを説明すると、物体に力を加えて、形が変わる、その形がそのままになっている。

力を加えるのをやめても、そのままの形で元に戻らない。

要するに変形したままになる、変わるという。

そういう性質の物体のことを可塑性があるという。

少年は、柔らかく、変わりやすく、精神的に柔軟で、周りが働きかけたらすぐ変わることができるという考え方なんです。

だから悪い非行とか犯罪に走ったとしても、周りがちゃんと働きかけをしてあげれば、上手く変わって立ち直って、元には戻らない可能性が高いんですね。

“少年は可塑性がある、だから保護するんだ、皆で支えてあげるんだ”と。こういう考え方です。これが少年法の根底にある考え方なんです。

ある程度年齢の若い子、その子たちは可塑性があるとみなします。

だからその子たちには「刑罰」「制裁」という大人と同じ考え方ではなくて「保護する」、そういう考え方でやっていきましょうということなんですね。

大人になると可塑性ってだんだんなくなっていくものなんですか?

だんだんなくなっていくと思いますよ。私なんかも今更あんまり変われないですから。

なぜ20歳未満?

学生
小野口

少年と大人の違いがまだぼんやりしていて…。
何歳までとか具体的な決まりを教えていただけますか。

日本では「少年=20歳未満」ということでずっとやってきたんですね。

山形
デスク

なぜ20歳かというと、当時は民法も含めてそうだったということもあるんですが。

どこで線を引くかと考えたときに20歳というのは、たぶん一番わかりやすかったんじゃないでしょうか。

それで、20歳を基準としてそこで線を引いて手続きを変えると。

選挙権年齢と民法の成人年齢はちょっと似ているところがあって、社会に対して自分で意思表示ができる年齢。

少年法は社会に参加するとかそういう話ではなくて、むしろ社会から外れかかっている子どもたちをどう立ち直らせるかという法律なので、法律の目的が全く違うんですね。

なるほど。

必ずしも連動させる必要はないですが、同じ日本の法律の中で、子どもと大人の線引きをしている法律という意味では共通する部分もあるので議論になったということなんですね。

学生
本間

自分の中で習慣になる前に、変われるうちに、あるべき道にただすという感じですか?

少年のときに何か失敗をしてしまって、そのときに手を差し伸べてくれる人がいたら変われるかなという気はしますよね。

手を差し伸べてもらって、その人に感謝する気持ちみたいなのが出てくると、多分行動も変わってくるんじゃないでしょうか。だからそういう働きかけをすることはやっぱり意味があると思います。

※2022年4月に施行となった改正少年法では、法律の適用年齢は20歳未満のままで様々なルールが変更となりました。

改正のポイントは【1からわかる少年法(3)何が変わったの】で詳しくお伝えします

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  • 学生リポーター 小野口愛梨

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