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2023年11月30日
イラン 中東

「世界中に泣いている人がいる」7歳の女の子が届けたかったメッセージ

いつも笑顔のママは、1人の女の人が死んだのを知って、とっても泣いていました。

笑顔を取り戻したくて、私は絵を描くことにしました。

でも、ママ以外にも泣いている人は、世界中にいるんだなって思って、絵本を作ることにしました。

その女の人が、なんで命を落とさなければならなかったのか、1人でも多くの人に知ってほしいと思ったからです。

ママが、泣いちゃった

「ママがニュースを見て、すごく泣いちゃっていて。その時、私もすごい落ち込んじゃって」

こう話すのは7歳の女の子、大野りりあなさんです。

母親のアティエさんとりりあなさん

母親は中東のイラン出身、父親が日本人で、横浜市に暮らす小学1年生です。

母親のアティエさんが泣いていた理由は、2022年9月にふるさとイランで起きた、ある出来事でした。

きっかけは1人の女性の死

2022年9月16日。イランで1人の女性が急死しました。

亡くなったのは、当時22歳だったマフサ・アミニさん。

マフサ・アミニさん

イランでは、「ヘジャブ」と呼ばれるスカーフの着用が、女性に対して公共の場で義務付けられています。

アミニさんは、そのヘジャブのかぶり方が不適切だとして警察に逮捕され、その3日後に急死したのです。

政権側は病死だと発表。

これに対して、警察による暴行があったのではないかと疑う市民の抗議デモが、イラン各地だけでなく世界中にも広がりました。

当時のデモの様子

イランではデモ隊と治安当局の衝突も起き、デモの参加者550人以上が死亡したとの指摘もあります。(人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」)

“自由”があったらママの笑顔が戻るかな

母国の出来事をニュースで知り、泣いていた母親のアティエさん。

ママの笑顔を取り戻したい。

そう思ったりりあなさんは、アティエさんに涙の理由を尋ねてみると、次のような答えが返ってきたといいます。

「ほかの国は“自由”があるのに、なぜ私たちはヘジャブの巻き方でこういうことをされなければいけないの?人の命が失われてしまってもいいの?とっても悔しいからよ」

“自由”があったら、ママの笑顔が戻るのかな。

“自由”の絵を描いてあげたら、喜んでくれるかな。

そんな思いから絵を描き始めたりりあなさん。

ただ、実際に描いてみると、こんなことを考えるようになりました。

そもそも“自由”ってなんだろう?

ママ以外にも、同じような理由で泣いている人たちが世界中にいるんじゃないのかな?

だったら、自分自身が“自由”について考えて、それを絵本にできれば、ママ以外の人たちにも笑顔が戻るかもしれない。

りりあなさんは「たくさんのひとに喜んでもらいたいから、“自由”についての絵本を作りたい」と母親に伝えました。

「ここにあったよ自由と幸せ」

アミニさんが亡くなってから1年近くたった、2023年8月。

1年がたつのを前に絵本を出したいと制作に取り組んだ、りりあなさんの絵本が出版されました。

タイトルは「ここにあったよ自由と幸せ」。

出版は自費。文章はすべてりりあなさんが書きました。絵は、りりあなさんが描いた原画を元に、イランにいる女性に描いてもらいました。

母親のアティエさんは、母国の雰囲気や文化を大事にしたいと考え、何人かのイラン人に絵を描いてもらえないかお願いをしました。

ただ、絵本の制作に協力するとイランの警察に逮捕される可能性があると恐れ、次々に断られたといいます。

それでも、匿名を条件に協力してくれる女性をなんとか見つけ、出版することができました。

すべてのページに描かれた“自由”

絵本は、アミニさんが亡くなった出来事をもとに、りりあなさんが“自由”を探して旅に出て、アミニさんに出会う物語。

旅する中で、物事を自分で選択したり、好きなことを楽しんだりできることの大切さを伝えようとしています。

りりあなさんが描きたかった“自由”。

絵本を描くために母親や父親から話を聞く中で知った、イランで“自由”を象徴するチョウで表現することにしました。

原画などを通じてイランの女性にイメージを伝えると、できあがった絵本には、すべてのページにチョウが描かれていました。

特に絵本の終盤では、逮捕されたあとに急死したアミニさんが、色とりどりのチョウと一緒に空に浮かぶ様子が描かれ、アミニさんは次のような言葉をりりあなさんに伝えます。

「みんな、自由にすきなことをしたり、楽しむことができて、とっても幸せね」

たくさんの人に伝えたい

「どんな人でも、いつかは必ず飛べるというのを表しているのかなって思っていて。いろんな色のチョウは、いろいろなものがあっていいし、なんか“自由”っぽいのかなぁって思いました」(りりあなさん)

りりあなさんは、イランの女性が描いた絵を見た時に感じたことについて、こう話しました。

そして、絵本が出版されたあとの10月。

りりあなさんは1人でも多くの人に自分が絵本に込めた思いを伝えたいと、通っているダンス教室の発表会で、絵本を紹介しました。

そして、チョウの髪飾りを付けてステージに立ったりりあなさんは、絵本の一部を朗読しました。

それは、この絵本を通して一番伝えたかったことです。

私たちの自由な世界は輝いている

※りりあなさんが朗読した絵本の一部

学校で女の子と男の子がみんないっしょに学ぶ。
好きな服を着て踊る。

大好きなスポーツや音楽を楽しむ。
インターネットでみんながつながる。

人と動物が仲良くくらす。

「これって当たり前のことではないのよ。みんな自分たちの自由にかんしゃして、大切にしてほしいわ」

今まで空気みたいだったわたしたちの自由は、当たり前のものではなかった。

この広い広い世界では、わたしたちが当たり前だと思う自由を手に入れられない人がたくさんいる。

わたしたちの自由な世界はかがやいている。
もっと幸せを感じなくちゃ。

(10月11日 おはよう日本などで放送)

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