2023年8月17日
スイス ヨーロッパ

藤井七冠も夢中に?ヨーロッパ“美しきおもちゃ”の魅力とは?

「このおもちゃは創造性だけでなく、空間的な想像力も育てます」

将棋の藤井聡太七冠が子どもの頃に夢中になったという、あるおもちゃの魅力について、スイスのおもちゃメーカーの社長はこう表現しました。

子どもはもちろん、大人の心も惹きつけ、世界中でブームになっているというヨーロッパのおもちゃ。その魅力に迫りました。

(「せかほし」取材班 井川陽子/佐々木浩人)

藤井七冠も夢中になったおもちゃとは?

溝や穴が彫られた1辺5センチの木製ブロックを自由に組み合わせ、ビー玉が通っていく道を作って遊ぶ立体パズル。

藤井七冠も子どもの頃に夢中になったというおもちゃとはどんなものなのか。

まずはこちらの動画をご覧ください。

外からは見えない部分にも組み合わせ次第で自由にビー玉が通る道をつくることができ、想像力や三次元で考える力が養われるといいます。

この立体パズルが誕生したのは40年ほど前。

立体パズルの考案者 マティアス・エッターさん(左)

スイスの首都ベルンにあるおもちゃメーカーの創業者、マティアス・エッターさんが、ソーシャルワーカーとして関わっていた、障害のある子どもたちの姿がきっかけでした。

現在の社長 セバスティアン・エッターさん

セバスティアン・エッターさん
「父は施設にあるパズルなどは、彼らにとって複雑すぎることに気づきました。
障害のある子供たちにもおもちゃを楽しんでほしい。達成感を感じてほしい。
そんな純粋な思いからこのおもちゃは生まれたのです」

当初は粘土で作った立方体に溝や穴を彫り、それらを組み合わせることでビー玉がうまくころがって出てきたら成功、というシンプルな遊びでした。

粘土でつくられた初期の立体パズル

外から見えない部分の“トンネル”もビー玉を隠すためではなく、落下による勢いを与えて子どもたちに楽しんでもらうためのものだったといいます。

子どもたちと実際に遊ぶ中で進化し、試行錯誤を繰り返した末に、現在の形になっていった立体パズル。

ブロックを増やせば、組み合わせは無限大で、より難易度の高い、複雑な組み合わせに挑戦していくこともできます。

子どもから大人まで家族みんなで遊ぶことができるほか、ビー玉が走行する時間の長さやブロックの組み立て方の独創性を競う大会が世界各地で開かれるなど、パズル好きの大人の間でもブームになっているのです。

世界で人気!美しき積み木“トイオブジェ”

次に訪れたのは、人口1万ほどのスイス北部にある町ツォフィンゲン。

スイス ツォフィンゲン

ベルンやチューリッヒから車で1時間ほどと主要都市からのアクセスもよく、最近では移住してくる若い人たちも多いと言います。

このツォフィンゲンにあるおもちゃメーカーが生み出しているのが、アート作品のようなオブジェたち。

子どもが積み木として遊べる一方で、インテリアにもなることから“トイオブジェ”と呼ばれ、世界で人気を呼んでいます。

メーカーを訪れると、案内されたのは創業以来65年にわたって作ってきたすべてのおもちゃが飾られている展示室でした。

美しいおもちゃを作り続けられる秘密は、世界中のデザイナーとのコラボにあると言います。

こちらは日本のデザイナーとコラボした作品。

動物をモチーフにした積み木です。

日本のデザイナーとのコラボ作品

そしてこちらはベルギーのデザイナーとのコラボ。

「言葉のパズル」です。

ベルギーのデザイナーとのコラボ作品「言葉のパズル」

おもちゃを美しくデザインするという考えが世界中のデザイナーを刺激し、新たなアイデアが持ち込まれるようになったのです。

3代目の社長 パトリック・エンゲラ-さん

パトリック・エンゲラ-さん
「私たちの会社の創業者はかつて家具デザイナーでした。彼にとって重要だったのは美しくデザインされたものであることでした。
家具屋を訪れた客に『美しい家具はあるのに、美しいおもちゃはない』と言われたことが創業のきっかけで、自分でおもちゃを作り始めたそうです。
それを客に見せると『気に入った。もっと欲しい』という声があがり、家具デザイナーからおもちゃデザイナーに転身したのです」

そして、紹介してくれたのは、ことしできあがったばかりの最新作。テーブルのようなパーツの積み木でシンプルなものに見えますが・・・

すべての人に空間をデザインする喜びを味わってほしいと作られたこのおもちゃ。

組み方次第で変幻自在。

子どもが積み木として遊ばなくなっても、インテリアとして飾っておけるため、大切な思い出を捨てることなくとっておくことができるサステナブルな一面もあります。

トイオブジェが彩る 家族の豊かな時間

“トイオブジェ”をどのように暮らしに取り入れているのか。

社長のパトリック・エンゲラーさんのお宅を訪問すると、子供部屋だけでなく、廊下や書斎、ダイニングなど、いたるところにトイオブジェが飾られていました。

家の中にあるトイオブジェは美しく飾られていますが、どれも子どもたちが自由に触って遊ぶためのもの。

子どもたちが組み立てた積み木をトイオブジェとして飾ることもあるそうです。

息子のノエー君と遊ぶエンゲラーさん

パトリック・エンゲラ-さん
「私が書斎で仕事をしているときに、子供がトイオブジェを取り出して遊ぶこともあります。
仕事をする大人のそばで子どもが遊ぶ。そこには幸せで穏やかな時間が流れています。
そして、私も子どももものすごく集中しているんです」

「世界はほしいモノにあふれてる」

スイスのおもちゃの魅力について紹介した今回の記事。

実は、世界各地に眠る素敵なモノを探し求める癒やしの紀行番組「世界はほしいモノにあふれてる」のロケで、スイスを訪れた番組担当ディレクターの私(佐々木)が担当しました。

最後に、「美しきオモチャをめぐる旅」(8月18日放送)の収録を終えたMCのコメントも紹介できればと思います。

スイスのデザインに対する感性に、圧倒されました。おもちゃって大人になると、あまり必要性を感じなくなるけれど、「このおもちゃだったら部屋に置きたい」とか、「このおもちゃで子どもと一緒に遊べば、成長につながるのではないか」とか。自分が子どもだったときと違ったおもちゃの見方を教わった気がいたします。

おもちゃが今まで何のために私たちに必要だったか、そして何故これからも必要なのか、という理由がすべて詰まっている回だと思います。おもちゃっていうものが、未来永劫子どもたちを笑顔にするものであってほしいなと、また強く思いました。

魅力あふれるヨーロッパの最新おもちゃ、詳しくは8月18日のせかほしSPで!

今回ご紹介したものをはじめ、おもちゃ大国ドイツの職人の技や、子どもの新たな可能性を引き出す最新おもちゃまで、様々なおもちゃが登場します。ぜひご覧ください。

夏のスイス&ドイツSP 美しきオモチャをめぐる旅」
NHK総合 8月18日 夜10時(NHKプラスでも1週間配信)

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