体操の楽しさを忘れなければ、モチベーションなんかいらない

橋本大輝

体操

東京オリンピックの体操、個人総合と鉄棒で金メダルを獲得した橋本大輝。2022年は4月の全日本選手権と5月のNHK杯でともに連覇を果たした。結果を出し続けている橋本だが、東京オリンピックの2か月後に行われた世界選手権を前に深く悩んでいた。

「オリンピックが終わって、ここまで燃え尽きちゃうんだと思った。次に何を目指すにしても体は動けるのに気力が足りない」

橋本は意欲を出そうとさまざまなことを試した。
欲しいものを買えば、頑張ろうと思えるのだろうか…。いろいろと買ってみたが、気持ちに変化は起こらない。それならと思って手にしたのは、「モチベーションが上がる本」。その名のとおりの本を読んだが、いまひとつ上がらなかった。
どのようにモチベーションを上げていけばいいのか、迷いに迷ってしまったのだ。そんな時に出場したのが12月の全日本団体選手権。団体で日本一を決める大会だった。

チームメートの“仲間の思いを背負って戦う”。
とにかく試合が楽しくてしかたがなかった。

「やっぱりそれが体操だよなというか、スポーツの良さなんだろうな」

ずっと抱えてきた悩みが解消された瞬間だった。

「あっこれだ!って思って。モチベーションに縛られていたら体操は楽しくない。自分のやりたい演技、体操の楽しさを忘れなければ、モチベーションなんかいらない」

次のオリンピックは2024年のパリ。毎日、パリでの演技構成を頭の中で描きながら練習に取り組んでいるという。

「体操の楽しさを忘れなければ、パリの次の大会にも向かっていける」

満面の笑みを浮かべた橋本。そこには、悩み苦しんでいた東京大会後の姿はなかった。

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