私が日本にいたと感じてもらえる遺産を残したい

アンドレス・イニエスタ

サッカー

サッカー界で輝かしい成績を残してきた元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ。世界を驚かせたJ1、ヴィッセル神戸への移籍から5年目のシーズンを迎えた。

2022年シーズン初出場となった開幕2戦目の浦和レッズ戦では、後半途中から出場し、終了間際に正確なラストパスで同点ゴールをアシスト。
その存在感は37歳になった今も増し続けている。

「クラブは苦境を乗り越えながら年々成長していると感じている。ヴィッセルが大きなチームになる手助けをしたい」

およそ1年前、イニエスタは選手生命の危機と向き合っていた。
前の年の12月、右足に違和感を感じる中、アジアチャンピオンズリーグの準々決勝に途中出場。
アジア王者のタイトルに一歩ずつ近づいていくなかで、キャプテンとして背中でチームを引っ張りたいという思いがあった。
しかし、ペナルティーキックを蹴った直後、悲劇が襲った。

「もし試合に出場せず、ベンチに残っていたら、私が自分を決して許さなかった。たった1パーセントでもチームの力になれると思ったら、キャプテンとしての姿勢を見せられたらという思い、責任感があった。ただ、蹴った瞬間、かつて感じたことがない激しい痛みが走り完璧に足が潰れたことがわかった」

診断結果は、右足筋肉の腱の部分の断裂。
当時36歳、周囲からは引退を勧める声もあったと言う。
それでもイニエスタは、再びピッチに立つという強い覚悟を持ち、懸命なリハビリを続けた。ヴィッセルに移籍したときにクラブやサポーターとかわした大きな約束があったからだ。

「ヴィッセルをアジアナンバーワンのクラブにするという約束は間違いなく関係している。この約束があったからこそ、サッカーを続けるんだという熱意が、リハビリの中でわき上がってきた。その気持ちがなければきっと手術もしなかっただろうし『もう辞める』と言ったかもしれない」

ヴィッセルは、ことし、再び、アジアチャンピオンズリーグに挑戦する機会を得た。イニエスタが母国、スペインから1万キロ離れた日本で、自分の身を削りながらプレーを続ける理由はこの言葉の中にある。

「ヴィッセル神戸、日本サッカーの歴史は続いていく。だからこそ、自分の経験を残しておきたい。プレーの仕方、サッカーへの解釈、人生観、それをチームメイトやサポーターなどに伝えることが目標だ。私がこの国を去るとき、私が確かに日本にいたと感じてもらえる遺産を残したい」

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