自粛期間をプラスに考え、競歩を少しでも多くの人に知ってもらいたい

岡田久美子

陸上

日本選手権6連覇。世界選手権では日本選手最高順位。
そして、2大会連続のオリンピック代表。日本女子競歩において28歳の岡田は言わずと知れた第一人者だ。 特に2019年の世界選手権では、気温30度、湿度70%をそれぞれ超える過酷なレースで6位に入賞。「東京オリンピックではメダルを目指す」と堂々と言える位置まで上ってきた。 2020年2月の日本選手権は圧倒的な強さで6連覇を達成してリオデジャネイロ大会に続くオリンピックの代表に内定。しかし、そのわずか1か月後に決まったのが東京大会の「1年延期」だった。 開催を危ぶむ声も出て「すごく不安があった」という岡田。延期決定には「ほっとした」と正直な胸の内を明かしてくれた。

目指す東京オリンピックの表彰台には6位の世界選手権から3つ順位を上げる必要がある。 その意味で1年延期は「プラス」と考える。

「正直なところ、ことしオリンピックがあったら、ちょっと間に合わなかった部分もあったと思う。1年延期になったので、じっくり慌てることなく体作りや技術面でのレベルアップができると思っている」

その言葉どおりに岡田は競技場が使えない期間もストイックにトレーニングに取り組んできた。 「延期でプラス」と考えるのは、みずからの競技面だけではない。 「競歩のアピール」についてもだ。競歩は世界選手権で男子が2つの金メダルを獲得。東京オリンピックでも金メダルの有力種目とされるが、知名度はまだまだ低い。競歩の魅力、そして、女子の魅力も伝われば。そんな思いからトレーニングの様子などSNSでの発信を強めた。慣れない料理に挑戦している様子もアップしている。

情報発信の場は自らのSNSだけではない。世界的なIT企業「グーグル」とも連携。「岡田久美子」と検索するだけで本人が競技の魅力を語る動画が出てくる仕組みだ。この中は競歩をまだよく知らない人たちの疑問に岡田がわかりやすく、そして優しく答えている。

質問:
レースウォーカーについてよくある誤解は何ですか?

岡田:
競歩って皆さんが考えるとお尻を横にフリフリ振っているようなイメージがあると思います。(競歩は)股関節、骨盤、肩甲骨を使ってしっかりと連動させながら歩くことによって速く進むことができます。それが滑らかにできるとフリフリしているように見えてしまうかもしれませんが、決してフリフリしているわけではありません。
 

競歩は周回コースで競技が行われる。沿道と選手の距離は非常に近く、声援の後押しは大きい。 この自粛期間の取り組みで1人でも多くの人が競歩のファンになってもらえれば、表彰台に上るチャンスも増えると岡田は考えている。

「今、自粛期間が続いているので、この期間をプラスに考えて、競歩という種目を少しでも多くの人に知ってほしい。そしてまた大会が続き始めたときに応援してくださる方が少しでも増えてもらえたらうれしいという気持ちで始めた」

ここ最近、練習で道を歩いている時、小さな子どもに声をかけられることがあり知名度が上がってきていると手応えを感じている。

「再開されたら皆さんにもっと元気になってもらえるような歩き、力強い歩き、感動してもらえる歩きができるように今できることを一生懸命やりたい」

声援からパワーをもらい、そのパワーを何倍にもして返す。 「集大成」と位置づける2021年のオリンピックで、そんな岡田の歩きが見られることを期待したい。

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